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下着ドロ常習犯が法廷で口にした、ド直球すぎる「戦利品」の使い道

裁判傍聴のエキスパートとして知られる今井亮一さん。先日たまたま傍聴したという“下着ドロ未遂”の裁判を、自らのメルマガで早速レポートしています。検察官によるド直球すぎる質問に対する、下着ドロの二心のないひと言とは?

ブラ付きキャミ泥棒は2度ベランダを超える

8日(木)には、と言われてた『ラジオライフ』の連載原稿を、頑張って9日(金)12時45分頃、ばっちり書き上げた!

急ぎ送信し、裁判所へ。13時30分からの痴漢の否認はもう間に合わない。14時から高裁で判決とかあるかな。

ところがその原稿、間違って自分宛てに送信してた! とはしかし全く気づかず……。

狙ったわけではなく、たまたま入った東京簡裁728号法廷(20席、片倉毅裁判官)で14時30分~16時、「住居侵入、窃盗未遂」の新件。

傍聴人は俺のほかに、ワイシャツに黒ズボンの中年男性が2人。

被告人は身柄(警察留置場)、やや長めの茶パツ27歳。ごく普通の青年だ。

検察官が起訴状を読み上げた。

検察官女性用衣類窃取する目的で……」

8月の午前7時頃、あるアパートの1階居室(男性H方)のベランダの柵を乗り越え、干してあった同居女性S所有のブラトップ(カップ付きキャミソールとも言ってた)1枚を窃取しようとしたが、発見されそうになって逃げ……。

同7時15分(17分?)頃、さっきベランダ内のエアコン室外機の上に落としてしまったそのブラトップ盗りに戻ったが、外に出ていたSとHに発見され、その目的を遂げなかった……。

検察官は清野宣彦副検事。この人は、証拠の要旨告知すごく丁寧にやる。事件の中身がよく分かってありがたい。

甲7号証はSの調書。

甲7号「午前3時頃、アルバイトで着ていく制服がないので洗濯……ツイートして4時頃干した……ずっと携帯動画を見ていて眠くなった……7時頃、寝る……キュルキュルという網戸を動かす音が聞こえた……誰かいるのかな……もしかして洗濯物……以前にも何度か盗まれていた……カーテンの隙間から見ると、誰もいない……H君が思いきってカーテンを開けたが誰もいない……閉めると、人が動く影が……開けると人が逃げて……」

それでSはHに「見てきて」と言ったものの、1人で部屋に残るのも怖いと思い、2人で外へ。Sは携帯電話で動画撮影しながら出たんだという。

甲7号「男がベランダの仕切りに立っていた……動画撮影……飛び越えて逃げようと……私が男の服をつかむと、すみませんと……」

すぐにHが男(被告人)を捕まえ、交番へ。こんな会話があったんだそうだ。

H 「この人がベランダで洗濯物をいじってたんです」

巡査 「(被告人に対し)何してた」

被告人 「なんとなくいました、すみません」

巡査部長 「君は何をしたんだ、正直に言いなさい」

被告人 「すみません、この人の家に入って下着を盗ろうとしました」

ま、これは調書だから、リアルにそのとおりに会話があったとは限らないので。

甲9号証は、被告人の母親の調書。

甲9号「息子はおとなしく、不良グループに入ったこともなく、成績は良くも悪くもなく……優しい子ども……」

しかし……。

甲9号 「思い当たることもあります……今年1月から3月頃、息子のベッドの枕の下に、女性の黒いパンツが……盗んだんじゃないの? そんなことしないよ、恥ずかしいだろ……ブルセラか何かで買ってんだと思った……今回、息子が帰ってこないので部屋を見ると、たくさんの下着がありました……」

うわぁ……。

検察官はこんなことを尋ねた。

検察官「ブラトップ、手に入れて、成功してたらどうしていたの」

どうしてたって、そりゃあ……。被告人は、言い淀むことなく答えた。

被告人「家に持って帰って、それを使って自慰行為をしていたと思います」

何か吹っ切れたかのような、清々しいようなものを俺は感じた。

検察官「お母さん、あなたの部屋から黒い下着……見つかってどう思ったの」

被告人「ヤバイと思いました」

検察官「どうヤバイ、盗んだものだから?」

被告人「盗んだものです」

検察官「同じ被害者から」

被告人「そうです」

本件のベランダから、たびたび下着を盗んでたんだそうだ。

裁判官は、しきりにこんなことを尋ねた。

裁判官「(一度失敗して)もう完全にあきらめたけど、新たにまたやろうと思ったの?」

被告人「一度はヤメようと思いました。でもやっぱりあきらめきれず……」

検察官は控訴事実2つに分けたけれども、目的物は同じだし時間が近接してる。一罪(いちざい)と認める余地があるのかどうか、裁判官は判決を書くために確認したわけだ。

検察官は論告で「2件事案であります」とはっきり言い、懲役1年6月を求刑した。

弁護人の最終弁論は、さっき弁護人からの被告人質問で出たことをぜ~んぶ丹念になぞる構成だった。

判決はちょうど1週間後と決め、15時25分閉廷。

image by: Shutterstock

 

『今井亮一の裁判傍聴バカ一代』
著者/今井亮一
交通違反専門のジャーナリストとして雑誌、書籍、新聞、ラジオ、テレビ等にコメント&執筆。ほぼ毎日裁判所へ通い、空いた時間に警察庁、警視庁、東京地検などで行政文書の開示請求。週に4回届く詳細な裁判傍聴記は、「もしも」の時に役立つこと請け合いです。しかも月額108円!
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