MAG2 NEWS MENU

【裁判傍聴】池袋危険ドラッグ暴走事故、検察官のムチャクチャな論法

2014年6月、池袋で起きた危険ドラッグ暴走事故。よだれを垂らす容疑者の映像があまりに強烈だったこの事故の裁判のレポートが、メルマガ『今井亮一の裁判傍聴バカ一代』に記されていますが…今井さん曰く、検察官の論法がムチャクチャだったのだそう。いったいどんな論告が?

池袋危険ドラッグ暴走、無罪と思える理由!

さぁさぁ、これをご報告しとかねば!

11月20日(金)13時30分~15時、東京地裁813号法廷(52席、安東章裁判長)で「危険運転致死傷」の審理。

昨年6月24日の20時頃、池袋の繁華街で、脱法ハーブを吸引した男の運転するRV車が暴走、7人を死傷させた事件だ。

男はやや異形で、直後に逮捕されるとき口から泡かよだれを…誰が撮ったんだかそのシーンの映像があったもんだから、テレビニュース、ワイドショーはもう…! あの映像がなければここまで大騒ぎにはならなかったと俺は推理する。

この事件がきっかけとなり、脱法ハーブに「危険ドラッグ」の呼称が与えられたのだ。その後、脱法ハーブの裁判で「池袋の6月の事件」としてよく言及されたもんだ。

今日はテレビカメラの撮影が入った。

※記者クラブの代表社のカメラが1台、傍聴席の後ろに据えられ、被告人抜き(ときに弁護人も抜き)の状態で、きっちり2分間撮影する。俺の禿げ頭が全国報道される。←誰も気づかないってば(笑)。

まず検察官が、押収した危険ドラッグに関することで追加立証。続いて弁護人も追加立証。「人的被害者7名」について示談が成立したんだそうだ。ほ~、それは大きいね。

13時34分、検察官が論告

この検察官は、ロン毛を後頭部でおだんごに縛り、フレームが市松模様のメガネをかけ、関西弁。ベテラン風なんだけど、ごにょごにょと声が小さくて困るんですょ。裁判員裁判の立会はできないタイプ。でもやってたりして、そのときだけは芝居がかった腹式発声で。

争点は要するに、当時は脱法ハーブと呼ばれてた、言い換えれば合法ハーブが、今回のような危険をもたらすものと、被告人認識してたかどうかだ。

被告人は、多幸感しか味わったことがなく、今回のようなことになるとは夢にも思わなかった旨を主張してる。

こんな部分があった。

検察官 「尿から(危険ドラッグの成分が)検出されるということは、相当の量を使用していなければ…。一度も(危険ドラッグによる)酩酊状態に陥ったことが絶対にないとは言えない」

俺は傍聴ノートに「しょんな根拠かよっ」と書いた。危険ドラッグが水に溶けにくく、尿から検出されたからには、意識がなくなる(実際には意識はあるが記憶がなくなる)経験をしていたはずだ、というのは、学者証人(金子教授)が何か実験に基づくわけでもなく断言していたにすぎない。

こんな言及もあった。

検察官 「(運転中に)意識を失い、大型の乗用車を制御不能にし…」

だからぁ、意識を失うんじゃなくて記憶できなくなるだけなんだと、金子教授が言ってたじゃん。

約17分間の論告を聞いて、俺は傍聴ノートに「検察官、論法ムチャクチャ」と書いた。

いや、俺は国民の──てか傍聴マニアの──常識的にそのように思っただけ。裁判には裁判の常識ってもんがあるんだろう。

検察官 「最後に求刑ですが…被告人を懲役10年に処するを相当と思料します」

危険運転10年はでかい!

13時51分、弁護人(ひょろり背が高く、優しそうな、60代かな)が最終弁論

弁護人 「当時の呼び名、脱法ハーブ…運転開始後に少量を使用…」

ハーブ店で、お勧めは何かと問い、一番人気と言われた商品を初めて買い、一番人気のお勧め商品がトンでもない代物とは露も思わず──普通思わないよねぇ──運転中に味見してみたんだという。

弁護人 「頭がぼーっとしてマズイなマズイなと思い、兆候を感知するや、急いでブレーキを踏み、横断歩道の手前で停止した…直後、意識を失っており…」

金子教授によれば、意識はありながら体が硬直してしまった、ということなんだそうだが…。

弁護人 「当時は脱法ハーブ…都内に多数ある店で普通に販売されていた…お勧め商品…まさか…ほんの味見…そうは言っても…意識を取り戻し…(自分が何をしでかしたか)初めて知って、驚愕するとともに死にたい気持ちに…」

被告人が社会に戻ったら、父親が引き取り、家業である農業を継がせるんだそうだ。

弁護人 「(前科は)平成10年(1998年)2月、判決…執行猶予の前科、それは18年近く前の…。科料、罰金、10年以上前…」

ネットのまとめサイトには、2003年に「闇金」で逮捕され服役したかにあるが、それはデマ。罰金か科料、または不起訴か不立件で終わったんじゃないかな。

論告と最終弁論と両方を聞いて、俺は思った。

なんかヤバイと思って一旦停止、その後、全く予期せぬ薬理効果によって体が意に反する運動をし、車を暴走させた…。

それを否定して危険性の認識があったとするのは、ムリでしょ。無罪でしょ。客観的にはそう思えた。

だがっ! これだけ大きく全国報道され、「危険ドラッグ」という呼称を生みまでした大事件なのである。無罪にしたら──ネットがお祭り騒ぎになるのは捨象するとしても──社会秩序に悪影響を及ぼし、司法国家の威信が失墜する…。

俺は有罪に全財産を賭けるね。借金しても賭ける。ただ、量刑はだいぶ下げるかも。

※賭けのことは喩えで言ったんであって俺は違法賭博はしません~。

判決は1月15日(金)10時からと決め、14時13分閉廷。

裁判長 「ま、30分くらい予定すればいいかと思いますが」

よしっ、今号はここで終わる。もう1件ご報告したいのがあるけど、我慢するっ。いつも長くてごめんね。

image by: Shutterstock

 

今井亮一の裁判傍聴バカ一代』より一部抜粋

著者/今井亮一
交通違反専門のジャーナリストとして雑誌、書籍、新聞、ラジオ、テレビ等にコメント&執筆。ほぼ毎日裁判所へ通い、空いた時間に警察庁、警視庁、東京地検などで行政文書の開示請求。週に4回届く詳細な裁判傍聴記は、「もしも」の時に役立つこと請け合いです。しかも月額108円!
≪無料サンプルはこちら≫

シェアランキング

この記事が気に入ったら
いいね!しよう
MAG2 NEWSの最新情報をお届け