毎週月・火・木・金の4日間、実に月に16回も裁判傍聴記を配信しているメルマガ『今井亮一の裁判傍聴バカ一代』。最新号では、24歳のイケメン国家公務員が犯した悲しい犯罪の公判の模様をレポートしています。なんともやりきれない事件です。
過保護で育った国交省職員の大量下着ドロ?
7月7日(木)14時30分~15時30分、東京地裁811号法廷(20席、戸苅左近裁判官)で「住居侵入、窃盗」の審理。
これが法廷へ出てきたとマニア氏から聞き、係属部に確認して今日の期日を知ったのだ。
他の法廷でどうしてもな事件があり、15時ちょい前に法廷へ行くと、検察官から被告人質問をやってる最中だった。
検察官 「被害者はあなたの元交際相手、その家に入って下着を持って行く…下着をどう使ったんですか」
被告人 「私は、自慰行為をしました」
嗚呼、またそれを言わせるあれか。
検察官 「被害者が知ったとき、どう思うと?」
被告人 「気持ち悪いなと…本当に人として間違ったこと、してしまって…信頼を裏切ってしまった…」
被告人は非身柄、黒スーツ、ノータイ。細くて背の高い、かなり整った顔立ちの若者だ。24歳、国家公務員だという。
以下は今年3月19日付け日刊ゲンダイ、の一部。
元交際相手(24)のパンティーなど20点を盗んだ窃盗の疑いで18日、警視庁に逮捕された国交省鉄道局職員・■■■■容疑者(24)。■■容疑者は動機について「彼女のことが忘れられなかった」と語っているという。だが、これは真っ赤な嘘である可能性が高い。
「■■容疑者の自宅からは元カノの持ち物ではない下着やタンクトップ、ストッキングなど27点が見つかっています。■■容疑者は干してあったもの、洗濯機に入っていたものなどさまざまな場所から下着を盗んでいた。根っからのパンティー泥棒です。■■容疑者と元カノは国家公務員の同期で、昨年5月には別れていた。■■容疑者は別れる間際、勝手に合鍵をつくっていた。盗みがバレた際は<元カレが怪しい>と真っ先に疑われたそうです」(捜査事情通)
とんでもない男だが、生き方は堅実そのもの。■■容疑者は神奈川県■■市出身。県内の進学高校を卒業後、国学院大学に進学した。国家公務員の事務職の試験にはストレートで合格し、2年前入省している。仕事は真面目にこなしていたという。
この事件なのである。
15時03分、検察官が論告。
検察官 「被害者…元交際相手…あらかじめ鍵を不正に入手して合い鍵をつくり…国会公務員…体調不良で平日に休暇を取得し…平日を狙って、被害者が留守の間に…大量の下着を窃取…下着の点数の多さもさることながら…」
侵入は複数回で、1回は被害者と鉢合わせする可能性もあったんだという。
上掲報道には「元カノの持ち物ではない下着やタンクトップ、ストッキングなど27点」とあるが、そういう話は出なかった。
求刑は懲役2年。
15時07分、弁護人が最終弁論。
弁護人 「容易に気づかれる…大量の下着を持ち去り、計画性はない」
んなとこで被告人を「褒める」のは如何なものかと、俺はいつも思う。
弁護人 「平成25年(2013年)4月に独り暮らしをするまで22年間、(母親)といっしょに生活…動機は、独り暮らしで誰にも監視されず生活できる…母親といっしょに生活していたとき、どこへ出かけるのか、誰と会うのか…」
被告人の容貌も併せ、過保護の僕ちゃんが独り暮らしをして、抑制がすべて外れたのか…いや、もちろん分かんない、あくまでそんな気がしたってことで。
傍聴席、弁護人席側の端っこにいる美人は、母親かも。
弁護人 「逮捕、勾留…メディアで報道され…執行猶予付きでも懲役刑だと職を失い…被告人の更正に資するとは言い難い…罰金刑が相当であると思料します」
執行猶予付きでも禁錮刑以上を食らうと分限処分の対象になるわけだが、しかし罰金刑はムリでしょ。
7月16日(木)14時25分に810号(52席)で判決と決め、15時12分閉廷。
>>次ページ 過保護が招いた? もう1つのやりきれない事件とは?
母親による過保護、過干渉といえば、ちょと違うかもしれないけど、こんな事件もあった。
7月10日(金)13時30分~14時15分、東京簡裁534号法廷(20席、佐宗弘貴裁判官)で「窃盗」の新件。
被告人は非身柄、黒パンツスーツなんだけど、どこか女子レスラーのよう。
13時47分頃に入ると、検察官が乙号証の要旨告知をやってた。
前に付き合ってた彼氏から3万円、5万円とせびられ、SNSで知り合った女性から「資産運用のソフト」なるものを買わされ、そんな背景のもと…。
電車内でスリ。「もう1人いけるかも」と、女性乗客の半分開いたバッグに財布が見えたので、右手を伸ばして抜き取り…。
情状証人は母親。こんなことを言ってた。
母親 「23日の夜、娘が帰って来ず、24日の夜も帰って来ない…○○署へ捜索願いを出しに行きました…成人なので(個人情報は)教えられない…月曜になっても帰って来ない…××弁護士にお願いして…」
そうしてようやく、娘が逮捕されてたことが分かったんだという。
母親 「(娘は)毎夜遅くまで仕事して…食事してリビングで寝てしまう…早くお風呂に入りなさい、厳しいこともしてしまった、仕事の悩み、聞いてあげることができませんでした…娘はジュースとか買うお金で十分だと…私がお金を管理…厳しくしすぎました…」
口うるさく、がんじがらめに操られた、そのフラストレーションが、自己破壊衝動として本件に顕れたのか、という気がした。
13時58分、俺は途中で出た。どんな感じの事件かだけちらっと見てみようってことだったので。
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『今井亮一の裁判傍聴バカ一代』 より一部抜粋
著者/今井亮一
交通違反専門のジャーナリストとして雑誌、書籍、新聞、ラジオ、テレビ等にコメント&執筆。ほぼ毎日裁判所へ通い、空いた時間に警察庁、警視庁、東京地検などで行政文書の開示請求。週に4回届く詳細な裁判傍聴記は、「もしも」の時に役立つこと請け合いです。しかも月額108円!
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