ユニクロを展開するファーストリテイリングが立ち上げた、ユニクロより低価格なカジュアル衣料品店「GU」(ジーユー)の業績が好調です。メルマガ『理央 周 の 売れる仕組み創造ラボ 【Marketing Report】』の著者でMBAホルダーの理央周さんは、GUなどのファストファッション、100円ショップ、ファストフード店など、デフレの世相を反映した低価格を売りにする店舗が、同業他社と差をつけるために行っている、「安さ以外の秘訣」を考察しています。
GU、ZARAをはじめとするファストファッションが元気なのはなぜか?
ユニクロなどを展開するファーストリテイリングが10月13日に発表した2016年8月期決算によると、ジーユーの売上高は1878億円(前年同期比32.7%増)、営業利益222億円(34.8%増)と大幅な増収増益となったとのこと。
ニット、スカンツ、ワイドパンツなど、ウィメンズのトレンド商品の販売が好調だったことから、既存店売上高は2ケタ増収となった(流通ニュースより)。
●ジーユー/8月期は売上高32.7%増、営業利益34.8%増
期末のジーユーの店舗数は海外10店を含めて350店に達し、31店の純増となった。
衣料小売りチェーン「ZARA(ザラ)」を展開するスペインのインディテックスも、一時期ほどの勢いはないにせよ元気がある。
今日もテレビの情報番組を観ていたら、イタリアで開催されているミラノコレクションの特集をやっていた。
その中の一つのコーナーで、この時期ミラノのストリートを歩くモデルたちへの街頭インタビューで、普段着のブランドをチェックするというものがあった。
レポーターが、道行くモデルに「今何を着ているのか?」を聞くのだ。
多くは「これからオーディションに行く」という新人モデルだということだったが、経歴としてはD&Gやカルティエなど複数のデザイナーのコレクションやショーにも出たことがあるモデルたちだった。
そしてその大半が「ZARAを着てるのよ」と答えていた。
今日、ショッピングモールに行ったので、店舗を観てみたら、ZARAの、特にレディースの方の売り場には20代から40代の女性を中心にかなり混んでいたのだ。
ファッションだけではない ~100円ショップに飲食店までも
好調なのは、アパレル業界のファストファッションブランドだけではない。先月アナウンスされた100円ショップ大手「キャンドゥ」の決算によると、2015年12月から16年8月期の連結営業利益は、対前年同期比では68.5%増。
通期での見通しも、過去10年では最高となるということだった。
飲食業界でも、同様の傾向が見られている。
マクドナルド、丸亀製麺、松屋、すき家、サイゼリアなどなど、安さで売っている飲食店チェーンも、対前年比で、売上を伸ばしている。
これらの背景には、円高(特にトランプ当選前まで)による割安感や、消費者の節約志向の高まりなど、外的な要因が影響していることも否めない。
しかし、はたしてそれだけだろうか?
中小企業がGUから何を学ぶべきなのか?
GUを運営するファーストリテイリングにおいては、ユニクロの決算も好調である。
前述したように、消費者の「買い物マインド」が、節約志向・デフレ志向にあることもあるのだが、やはり、企業努力をしているブランドが勢いづいていることは否めない。
ユーザーのブログなどを読んでいても、GUの新製品ラインナップの人気は高く、この秋の新作などは少し大人びた感じが出て男性にも人気が出てきたとのこと。
GUでは「売り方」にも工夫をしているようで、店舗によって設置されている「セルフレジ」の便利さが、ツイッターなどのSNSでも評判になっている。
なんと、バーコードを読み取ることなく箱に買う商品を入れるだけで金額の計算をしてくれるとのこと。
「ハイテク過ぎる」
と話題になっているのだ。
GUのセルフレジがチカラあり過ぎる件 pic.twitter.com/8ctUXanMKe
— ふくままさひろ (@fukuma1023) 2016年8月21日
ソーシャルメディアは、信頼を得ることができるメディアである。
なぜなら、ユーザーや消費者など、自社とは利益関係の無い第三者が発信するので、中立性、公平性があり、しっかりと読まれるからである。
しかし、自社の意図や意思でソーシャルメディアに取り上げてもらうことはできない。もちろん、金銭を授与して書いてもらうこともNGだ。
やはり、画期的であったり、おもてなしの心があったりと、ユーザーたちの心を動かして初めてSNS上で話題になるのだ。
逆に言うと、単に値下げをしても、モノと情報があふれかえっている今、ユーザーたちには響かないのだ。
GUも、単に安いからだけではなく、商品ラインアップに季節性、ファッション性が入っていること、また、買う時に時間をかけず、楽に便利に、という「利便性」を最大化していることなどが、ユーザーに受けているのだ。
マーケティング、というか商売の本質は、ユーザーの「悩みや問題」を解決すること。
インフレ、デフレにかかわらず、商売の原点に立ち戻って、マーケティングをしている企業が好調なのだ。
image by: Wikimedia commons
『理央 周 の 売れる仕組み創造ラボ 【Marketing Report】』より一部抜粋
著者/理央 周(めぐる)
あのヒット商品はなぜ「ヒット」したのか?あのレストランの予約は、なぜいつも取れないのか?世の中で「売れているモノや人気者」はなぜヒットするのでしょうか?毎号実際の店舗や広告を取り上げ、その背景には、どんな「仕掛け」と「思考の枠組み」があるのかを、MBAのフレームワークとマーケティングの理論を使って解説していきます。1.「中小企業経営者・個人事業主」が売り上げを上げる 2.「広告マン・士業」クライアントを説得する 3.「営業マン」が売れない病から脱するためのメルマガです。
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