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キンコン西野『プペル』無料公開は本当にクリエイターを殺すのか

ネットの炎上をものともせず、自身の考えを貫いて発言してきた、お笑い芸人で絵本作家としても活躍するキングコングの西野亮廣さん。今度は自身の大ヒット作である絵本『えんとつ町のプペル』を「高くて買えない子どもたちのために」と無料公開したことが、ネット上で議論を巻き起こしています。「クリエイターの市場価値が下がる」という批判の声が多い中、メルマガ『ビジネス発想源 Special』の著者・弘中 勝さんは、「それは、ひと昔前の昭和的発想だ」と反論。市場の崩壊を嘆く人は時代に取り残されているだけだと指摘します。

市場価値が動くのは

お笑い芸人のキングコング西野亮廣が自身の絵本えんとつ町のプペルをネット上で無料公開したことが、大きく議論を起こしています。

●(参考)大ヒット中の絵本『えんとつ町のプペル』を全ページ無料公開します(Spotlight)

詳しく知らない方のために、事の経過を簡単にまとめます。

キングコングというお笑いコンビはかつてゴールデンでレギュラー番組を持つ期待の若手だったものの、テレビの露出は減り、かなりアンチも多くいました

そんな中で、西野亮廣さんは得意の絵を生かして絵本を数冊出すも、芸人が絵本を出すなんて、とさらにネット上では物議を醸していました。

それでも西野さんは、アンチを逆に煽りながらクラウドファウンディングで4000万円を集め様々な技術を持つクリエイターを集めてえんとつ町のプペルという絵本を作りました

いろんなクリエイターが関わっているのに西野亮廣名義で出すのはおかしい、と当初はものすごく炎上したのですが、西野さんは「アニメは監督の主導で多くのスタッフが関わるのに絵本でもそうするべき」と語り、その制作意識に絶賛の声が上がりました。

1万部でヒットと言われる絵本の世界で『えんとつ町のプペル』は、23万部を超える大ヒットとなっています。

そして今月、まだ販売されたばかりのその絵本が、西野さんの手によって、ネット上で無料公開されたのです。

まだ発売から3ヶ月も経ってない作品なのに、2000円の絵本を買えない子どもたちのために、ということで無料公開に至ったそうですが、この無料公開が大きな論議を呼んでいます。

多くのクリエイターが関わったのに無断で公開しているのではないか、みたいな反論なのかと思ったら、違いました。

クリエイターが無料で作品を公開することで、イラストレーターやデザイナーなどが取引先から不当価格のダンピングが起こり、適正な市場価格ではなくなるではないか、という反論が多いんですね。

一人の人が薄利の値段でやったおかげで他の同業者が迷惑を被る、というわけです。

私は今回の騒動についてはとっても興味深く見ているのですが、「クリエイターの市場価格が下がる」という大勢の反論に対しては、「昭和の発想だな……」という感じがします。

この問題はクリエイターの世界では昭和時代から言われていることでした。

特に有名な話が、手塚治虫のアニメ制作で、手塚治虫が安い制作費でアニメを受注するので、それ以降のアニメーターが食えなくなった、という批判が、長いことずっと起こっており、アニメの世界では手塚治虫は戦犯扱いでした。

だからこそ、安く確立されたテレビアニメから、スタジオジブリのように映画で好きなように制作をするというスタイルでヒットしたり、『君の名は。』の新海誠監督のように個人制作で賞を獲ってファンを地道につけて大きなヒットへと巻き込んで行ったりと、新たにお金を作るスタイルが生まれてきました。

今の時代、簡単に海賊版は出回るし、ゲームも音楽も漫画も無料で楽しめるものがどんどん出てくる時代です。

そんな中でもお金を生み出すためにはどうすればいいか、というのはクリエイターは当然考えなければなりません。

そもそもお金の生み出し方が分からないというクリエイターは、その時代に求められているものを作り出せていないのですから、クリエイターと呼べないとも言えるでしょう。

時代は変わっていくのですから、市場の価格への考え方も変わるのが当然で、だったらクリエイターだって、お金の生み方を変えていかなければならないのは当然のことです。

それを、誰かが無料で公開したから自分も無料に悩まされるというのは、近くに大型ショッピングモールが出来てから商店街の個人商店が廃れてしまうではないか、と騒いでいた昭和のオッサン店主たちと何も変わりはないと言えます。

「市場が崩壊してしまう」と嘆く人は、時代に取り残されているだけです。市場は崩壊して当たり前なのです。

だから、崩壊しそうな市場で新しく地盤を作り上げるのが経営者やクリエイターの仕事です。

例えば、10年ぐらい前は、ブログやメルマガは無料なのが当たり前で、情報メディアを有料にするというのは考えられないことでした。

ネットは無料で情報を得てしまう、ということで、テレビ業界も出版業界も「ネットのせいで売上が激減した」などと、ネットのせいにしていました。

しかし、今や有料メルマガなど当たり前で、ブロマガやnoteなどの課金コンテンツの方法もたくさんあって、お金が作れる人はきちんとその作り方を確立しているわけです。

そして、ネットで作品を無料公開することでそこからメジャーシーンに駆け上がっていったミュージシャンや漫画家の人たちも、どんどん増えています。

つまり、もう市場価値は市場が決めるのではなく自分自身が決めなければならない時代なのです。

薄利が当たり前の世の中であれば、「利益が薄いよ~」と言っている人は、いつまでたっても儲からないだけです。

お金を作り出せる人は、

「利益が薄いことを、このようなPRに使おう」

「普通は薄利だから、自分はこう利幅を広げよう」

と、無料であることや薄利であることを自分のお金を作るために活用します。

いまだに、

「メルマガは無料がいいですか、有料がいいですか」

と聞いてくる人がいますが、その二者択一である必要はありません。

どちらにもそれぞれ、適した戦略があります。

無料がいいのか、有料がいいのかではなく、無料で何をするか有料で何をするかという、その組み合わせこそが、マーケティングなのです。

 

今日の発想源実践】(実践期限:1日間)

 

 

image by: Spotlight(大ヒット中の絵本『えんとつ町のプペル』を全ページ無料公開します)

 

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