日常ではありえないけど、あったら楽しいかも。もしかするとパラレルワールド(並行世界)なら、存在するのかもしれない…。三次元に生きている者にトキメキを与えてくれる「架空の道具」
海外でも人気!パラレルワールドのお土産
不思議なパラレルワールドのお土産案内をしてくれるのは、代表の井上さん。
2006年から2013年までPC専門誌『日経パソコン』
今回、『パラレルワールド御土産帳』から、MAG2 NEWS編集部でピックアップしたのは、海外のユーザーから「こんな商品があったら全部買っちゃう!」、「なんて素晴らしいアイデアなんだ!」、「全部コレクションとして買い占めたい!」など、人気が高かった作品9点です。
制作者である井上さんに作成していた当時を振り返っていただき、どのようにして思いついたのか、
トップバッターは「ディスク作成機」です!
データをCD化する「ディスク作成機 」
「
井上さんによると、約8年にわたり、『日経パソコン』の表紙を飾ったオブジェには一貫して、このディスク作成機のように「動きを感じさせるもの」や「実際に手に取って使えそうなもの」が意図されているそうです。
皮肉が込められたクールな「足踏み団扇 」
一連のアートワークにはデジタルで成り立つ世のメインストリームに対する風刺や皮肉がこめられているものが多々ありますが、こちらもそのひとつ。「夏と機械」をテーマに作った、足で踏んで使う団扇。
実際に使うとなると、せっせと行う足踏みでふくらはぎがパンパンに張って疲れるし、きっと汗ダラダラ状態になるわで、「涼を求める」なんて優雅なことは言ってられません。はっきり言って大変!
デジタルに慣れすぎて「超便利!」と何も考えずに飛びつく人は御用心あれ。そんな風刺が込められているよう。
一つ一つの作品を作ったときの想いを語る井上さん
究極の選択が迫られる「ゼロイチ・タイプライター」
「このタイプライターで二進法を書いてみたい!」といった声があった、「ゼロイチ・タイプライター。」
昔のアンティークなデザインを彷彿させるタイプライターが刻むのは「0」と「1」だけ。
「デジタルの時代になり、0と1というシンプルな数字を突き詰めると、DNAまで表現できるかもしれない。同時に際限なくコピーもできる。でも、それって怖いことかもしれない…」。
この作品が出来上がった時に井上さんはそう感じたと話します。
無(0)か有(1)か、もしこのタイプライターがこの世に存在すれば、使う者は究極の選択を迫られそう!
ぜひとも商品化して欲しい「スマホグラス」
スマートフォンと開閉式のオペラグラス。
使うシチュエーションや搭載している機能は全く別モノだけど、両者は手の平に乗せられることや、大きさもほぼ同じという共通点があることをお気づきでしょうか?
「スマートフォンを開くと、オペラグラスが出てくる。スマホのタッチパネルでグラスの倍率を変えることができたら面白いかもって思いながら作りましたね」と井上さん。
なるほど、スマホとオペラグラスって使い勝手の面でも親和性が高い。どなたか、商品化してくれませんかね?
作った当時を回想しながら、パラパラと書籍をめくる
海外でも「欲しい」という声多数!「手回しダイヤル計算機」
人さし指を使って回した、主に昭和の頃に活躍した黒電話(どの家でも「電話カバー」なるものがかけられていた)、もしくは駄菓子屋さんの軒先に鎮座していた赤電話を思い起こす人も多いのではないでしょうか。
この色合いに、この形。プッシュ式のボタンやタッチパネルにはない「触ってみたい」気持ちをかきたてるエモーショナルな計算機です。
外国人からも「ワオ〜! この回転式の電卓が欲しい!」といった声も!
ハイテク化する現代に戸惑って…「異Pod ANALOG」
iPodが登場した時、レコードプレイヤーが生きた化石になるんじゃないかと、動揺した人もいらっしゃったかもしれません。
この作品はちょうどiPodがブームになる頃に制作されたレコードが聴ける携帯音楽プレイヤー。
音楽が配信され始めた時期でもあり、井上さんは「レコードが聴けない時代になっちゃうのかな…? そんな憂いを感じつつ作りました」と当時を振り返ります。
全体的に高級感を意識したカラーリング、iPodと同時に世の中を席巻した「白い」イヤホンではなく、昔風の重量感を感じさせるものを採用。
海外からは「レコードが聴けるiPodなんて、本当に素晴らしいアイデアだ!」といった声も。
データは水のように詰め込んでしまえ! 「樽型ストレージ」
「データストレージ」をテーマに作られた作品。
改めてストレージとは何だろうと考え「PCの通信ケーブルは水道と同じかもしれない。では、水をためておく場所はどこだろう?」という着想から生まれたのが、このワイン樽を模したストレージです。
データがためられる樽のコックをひねると、いつでもデータがとりだせるという仕掛けです。
「こういうガジェットは見てて楽しいから、大好き〜!」といった海外からの声もありますが、見てるだけで楽しめちゃいますね。
ついでにワインも注げるストレージなんてものがあると楽しいかも〜。
便利さの先には…。「書籍データ圧縮機」
四六判のハードブックや新書がこの圧縮機にかかると、あらまあ、なんとカワイイ豆本に!
「そのメリットは持ち運びがラクになるということですが、便利さや手軽さを追求しすぎると本が小さくなって読めなくなる、という皮肉をこめて作りました(笑)」。
また、内部で何が起こっているのかうかがいしれないブラックボックス風ではなく、シンプルな意匠で「実作業が見える」様子を伝えたかったそうです。
クールすぎるゲタ「千里下駄」
この作品が日経パソコンの表紙を飾った時の特集記事は「PCの高速化」。
表紙のオブジェをプレゼンする際には「速度」をテーマにし、この下駄のほか、メトロノームやストップウォッチをモチーフにしたものも提案したそうです。結果、選ばれたのがこの「下駄」案。
制作に入る前の「千里下駄」の図案
表面には桐の木目を手描きし、鼻緒は実際に下駄に付いていたものを使用。
和なテイストにあふれているからだろうか、海外からは「この下駄、最高!」という声も。
パラレルワールドだったら「あるかもしれない」道具はいかがでしたか?あったらいいな〜と思う道具たちばかりでしたね。
「教科書」からグーグルの「エイプリルフール」までを手がける
次の制作の舞台は「教科書」。表紙のオブジェを手掛けます
さて、学校図書が刊行している小学校1〜6年までの算数の教科書も、パンタグラフが表紙のオブジェを手がけています。『日経パソコン』の表紙用のアートワークがこの仕事につながったとのこと。
小学1年生から6年生までの表紙を手がける
それぞれの学年で学習する内容にあわせて考案されたというオブジェが効果的に撮影され、教科書自体もPOP感漂う仕上がりに。
小学生だけではありません。中学生の「数学」の教科書も手がけています。
中学校の数学の教科書の作品にはジオラマを採用し、グッとオトナっぽい印象に
教科書の裏にもこだわりが
昔の味気ない教科書を使っていたオトナはちょっとうらやましく思ってしまいますよね!
立体造形の他、アニメーションや動画も手がけるパンタグラフ。Google Japanの日本語入力チーム恒例のエイプリルフール用の動画「ピロピロバージョン」(2015)、「物理フリックバージョン」(2016)、「プチプチバージョン」(2017)などの演出・撮影も手掛けています。
不思議な世界に連れていってくれる「ゾートロープ」
また、2016年のクリスマスシーズンにはスターバックス・おもはらの森で展示された「ジンジャーブレッドハウス」をモチーフにしたゾートロープもパンタグラフのアートワーク。
幅広いクリエイティブ活動をおこなう「パンタグラフ」ですが、実際にイスラエルやドイツなどの海外から展覧会のオファーもきているそうです。今後とも日本のみならず、世界中をワクワクさせる作品を作り出していくアーティスト集団「パンタグラフ」に、今後も目が離せませんよ!
取材・文/御田けいこ