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ナショジオ賞作家が切り取る「捨てられた民」ロヒンギャの素顔

ミャンマー西部に住むイスラム系少数民族「ロヒンギャ」。彼らはこれまでも国籍の剥奪など政府から不当な扱いを受けてきましたが、8月末にロヒンギャを名乗る武装集団の襲撃を受けた政府軍の掃討作戦により、罪のない同民族の人々が難民化、その扱いをめぐってミャンマー政府に対する国際的な批判が高まっています。そんなロヒンギャの村に昨年11月に訪れたという、メルマガ『素顔のアジア(たびそら・写真編)』の著者でナショジオ写真賞受賞作家の三井昌志さん。当局からいわれなき差別を受けながらもたくましく、そして健気に生きる彼らの素顔を10枚の写真とともに紹介しています。

ロヒンギャの村を訪ねる

ミャンマー西部ラカイン州に住むムスリム住民「ロヒンギャ」の村を訪れたのは、去年の11月のことだった。そのときまで、僕はロヒンギャのことをあまりよく知らなかった。たまにニュースで見聞きするぐらいで、複雑な歴史や政治的な背景にまで関心を持つことはなかった。

そんな僕がロヒンギャの村々を訪ねることになったのは、運良く「バイクでラカイン州に行ける」という情報を得られたからだし、そのバイクであちこち自由に走り回れたからだ。僕はいつもと同じようなスタンスで、いつもと同じような距離感で、ロヒンギャの人々に出会い、写真を撮ることができた。

そこで彼らの現実を知り、愕然とすることになる。市民権を持たない「捨てられた民」であるロヒンギャたちが置かれている理不尽な状況に、強い憤りを感じることになる。

ロヒンギャの人々は暴力と差別に屈しない強さを持っていた。黙々と畑を耕し、種をまき、ため池に網を投げていた。そうやって日々を生き抜く人々の姿を、僕は写真に撮り続けた。

ロヒンギャの男が、ピーナッツを植えるために畑に杭で穴を開けていた。市民権のないロヒンギャの人々は、村の外へ出ることができないから、農業しか生きていく道がない。畑を耕し、種を植える。昔ながらの暮らしを続けるしかないのだ。

村に住む少女。ボーイッシュな髪型と強い意志を感じさせる瞳が印象的だった。

ロヒンギャの少年が網を投げて魚を捕まえていた。乾季である11月は池の水位が低く、体長2、3センチの小魚しかいない。それでも夕食の足しになればと、毎日こうして網を投げているという。

ロヒンギャの村を訪れると、たちまち子供たちの笑顔に囲まれた。珍しい外国人に屈託のない笑顔を見せてくれる様子は、好奇心が強いバングラデシュの子供たちとそっくりだった。

マドラシャー(イスラム学校)で学ぶ少女。マドラシャーではアラビア語で書かれたコーランをそのまま詠み上げ、一言一句間違えないように暗唱する教育が行われている。

畑を手伝い、牛を追い、魚を捕まえ、そうやって彼らの一日が終わる。彼らには村の外に出る権利がない。村の中で生き続けるしかない。

大きな瞳でこちらを見つめる少年。ボロボロのシャツを着て遊んでいた。

川底の石を積み上げる人々。建築資材として使う石を集めているようだ。現金収入を得られる仕事がほとんどないロヒンギャの村では、こうした肉体労働で何とか食いつないでいる人が多い。

村の小学校を訪ねた。木と竹で作られた古い高床式の校舎で、子供たちが学んでいた。ロヒンギャの子供たちは村の外に出られないから、高等教育を受けるチャンスはない

夕暮れが迫る中、畑仕事に精を出す人々。ロヒンギャの村の農業は、今でも牛の力と人手に頼ったもの。15歳前後の少年も一人前の働き手として家族を支えている。

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【著者】 三井昌志 【発行周期】 ほぼ 週刊

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