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京都に飽きた外国人たちが次に向かっている、古き良き「宿場町」

ご存知のように、近年、訪日外国人観光客が年々増えています。1964(昭和39)年、訪日外客数はおよそ54万人であったのに対し、2013(平成25年)には1,000万人を越え、2016(平成28)年には約2,404万人となりました。また、2017年はさらに増加しており、1月~10月の統計値で既に約2,379万人となっています。そんな外国人観光客に定番の観光スポットといえば、東京、京都、大阪ですが、最近では日本の昔の風景に出会える「宿場町」も人気が出ているようです。今回はそんな人気の「宿場町」をご紹介します。次回の旅行の際には、ぜひ「宿場町」も旅行リストに入れてみてくださいね。

 

そもそも「宿場町」とは?

「宿場(しゅくば)」は、江戸時代に整備された街道の拠点となったところをいいます。「宿(しゅく)」、宿駅とも呼ばれ、旅人を宿屋に泊めたり、休ませたりする役割がありました。ほかにも、隣の宿場から運ばれてきた公用の荷物や通信物を次の宿場まで運ぶという重要な役割も担っていたそうです。「宿場町」は、人と人、物と物が交流する地点として重要な役割を果たしていたんですね。

徳川家康が最初に「宿駅伝馬制度」を定めたのは「東海道」で、1601(慶長6)年のことでした。なんと今から400年以上も昔です。そんな昔から姿を変えずに残っている「宿場町」が人気になるのもうなずけます。

 

宿場町ができた街道は全国をつなぐ重要な交通網

江戸時代、商業が発展すると同時に、「五街道」をはじめとした街道の整備が進みました。将軍のおひざ元である「江戸」、天下の台所である「大阪」、そして「京都」をつなぐ重要な役割を果たしていました。

街道が整備されたことで、全国各地から江戸や大阪などの都市に物が運ばれ、産業がますます発展しました。五街道とは、「東海道(とうかいどう)」「中山道(なかせんどう)」「甲州街道(こうしゅうかいどう)」「日光街道(にっこうかいどう)」「奥州街道(おうしゅうかいどう)」のことです。

その当時、全国の街道沿いに「宿場町」が栄えていき、全国に400以上もの「宿場町」があったといわれています。

昔の時代から今も変わらぬ姿を残している日本各地の宿場町。では、そのなかでも、どんな宿場町が人気なのでしょうか?

 

江戸時代の町並みが残る「宿場町」が長野県で人気!

中でも注目を集めているのは、長野県にある3つの宿場町です。東京からも近い長野はアクセスも便利ですが、

いずれも、五街道のひとつ「中山道」沿いにあります。江戸と京を結ぶ中山道は、山深い木曽路を通ることから木曽街道とも呼ばれており、西国と東国を結ぶ日本全国の街道の中でも非常に重要な街道でした。大きな川を渡る必要がある東海道とは異なり、水の不便がなかった中山道は、女性もたくさん通ったと言われているそうです。

 

そのなかでもひときわ重要な役割を果たしていたのが、「妻籠宿(つまごじゅく)」「奈良井宿(ならいじゅく)」、そして「海野塾(うんのじゅく)」です。どの宿場町も、江戸時代にタイムスリップしたような昔の町並みを堪能することができます。

東京からも近い長野はアクセスも便利。東京から近いのに、近代都市とは正反対の古い街並みを堪能できるのが魅力の一つと言えます。

 

日本初の重要伝統建造物群保存地区「妻籠宿」

写真提供:長野県観光機構

中山道六十九次のうち江戸から数えて42番目となる「妻籠宿」は、中山道と伊那街道が交差する場所にありました。そのため、交通の要衝として、古くから賑わいをみせていた場所でもあります。

時代が変わり明治に入ると、宿場町のまわりには鉄道や道路が新たに造られ、宿場としての機能を失った妻籠宿は衰退の一途をたどりました。しかしながら、昭和に入ると江戸時代の宿場の姿を色濃く残している町並みが見直され、全国に先駆け、保存運動が起こりました。

地域の人たちは家や土地を「売らない・貸さない・壊さない」 という3原則をつくり、江戸時代の面影を残した町並みを守ってきたのです。このような江戸時代の古い町並みを歩くことで、日本の歴史を感じて楽しむことができます。

木曽路氷雪の灯祭り 【写真提供:長野県観光機構】

 

 

外国人に人気なのが「峠越え」

外国人に人気だと言われているのが、「峠越え」です妻籠宿からお隣の馬籠宿には、馬篭峠という標高800mほどの峠があります。昔の街道を歩いて、宿場と宿場をハイキングで楽しむことができます。妻籠から馬籠峠はゆるやかな長い坂なので、昔の時代に思いを馳せながらゆっくりと旧街道を楽しみながら歩くことが出来ます。

観光案内所で、妻籠と馬籠間のハイキング券を受け取ることができます。

また、ハイキングが終わったら、終着の馬篭又は妻籠の観光案内所で渡すと、桧(ヒノキ)で作られた立派な完歩証明書がもらえます(200円)! 外国人観光客のみなさんにはうれしいおみやげですね。

image by: 馬籠観光協会のオフィシャルサイト

 

この馬籠峠を越える人は年間約3.5万人、うち外国人が約9000人(25.7%)を占めるそうです。 外国人が多く見られるようになったのは2008年頃から。それから徐々に人気が上昇し、外国人観光客が増えています。

また、中山道を訪れる外国人観光客のおよそ9割は欧米から。日本全国でみられる中国や韓国などのアジアからの外国人観光客は少ないようです。

 

 

妻籠観光協会HP

トリップアドバイザー

 

日本で最長!中山道のど真ん中にある「奈良井宿」

 

奈良井宿は日本で最長の宿場町です。延長はなんと中山道沿いに約1㎞もあります。

南には、難所と言われた鳥居峠が控えていたため、多くの旅行がふもとの奈良井宿に泊まっていたそうです。そのため「奈良井千軒」と言われ、その当時は大変なにぎわいをみせていました。およそ400年経った現在も、江戸後期~末期の民家を約180軒も残しており、当時の様子が色濃く残っています。

NHK連続テレビ小説「おひさま」のロケ地として使用されたことでも有名です。重要伝統的建造物群保存地区として、地元住民の方々の協力により、当時の町並みが大切に保存されています。

 

奈良井宿に最も近いJR奈良井駅の観光案内所では、2015~2016年の約1年間で訪れた外国人観光客で最も多かったのは、なんとアメリカ人。次いで、オーストラリア人が多く訪れていたそうです。一方で、中国人や韓国人は、まだあまり訪れていないようです。

 

外国人観光客のみなさんに人気なのは、「歩く」コース。町並みを歩いたり、峠越えにチャレンジしたり、ただ町並みを見るだけというよりも、昔の人が歩いた道を歩く体験をしてみたい、という想いが強いようです。

 

また、最近では、人型ロボット「Pepper(ペッパー)」を使って、外国人観光客を対象にアンケートを実施するなど、インバウンドにも力を入れている宿場町でもあります。

 

奈良井宿観光協会HP

 

 

生活感が色濃く残る静かな宿場町「海野宿」

海野宿は、かつて中山道と北陸道を結ぶ重要な宿場町でした。

江戸時代の旅籠屋作りや茅葺き屋根の建物、明治以降の堅牢な蚕造りの建物が調和した町並みを残しています。「日本の宿100選」や「重要伝統的建造物群保存地区」にも選定されているほど、公として貴重な場所なのです。

ここでは昔より掟として「売らない・貸さない・壊さない」の三か条があったため、商いをしている箇所が少ないそうです。そのため、生活感が色濃く残っている、静かな宿場町です。

京都のようににぎやかで華やかな日本観光をするのもいいけれど、町並みをゆっくりと楽しみながら歩くことが出来るところが、外国人観光客にも人気の秘密かもしれません。

 

「長野の海野宿のシーン。江戸時代の建築が残る、もっとも美しい日本のストリートの一つです」(英語圏からの観光客)

海野宿観光情報サイト

 

 

東海道の要衝「関宿」(三重県亀山市)

image by: Wikimedia 

関宿は、東海道47番目の宿場町です。昔から交通の要衝であり、古代三関の一つ「鈴鹿関」(他は美濃「不破関」、越前「愛発関」)が置かれ、江戸時代には参勤交代や伊勢参りの人々などで賑わいました。

現在は旧東海道の宿場町のほとんどが昔ながらの町並みをとどめていませんが、ここ関宿には江戸時代から明治時代にかけて建てられた古い町家200軒あまりが残っており、その当時の往時の姿を色濃く残しています。

 

「古い貴重な建物を保存しているので感激します」

「宿場町の雰囲気を残すところは各地にありますが、おみやげ屋さんや喫茶店などがなく昔ながらの街並みをそのままに生活をされている感がありました」

などのコメントにあるとおり、ここを訪れた外国人観光客は古い街並みや生活がそのまま残されていることに感動しているようです。

 

東北の古い街並み「大内宿」(福島県下郷町)

大内宿は会津西街道(下野街道)に位置した宿場町です。

江戸時代には会津若松と日光今市を結ぶ重要な交通の要であり、江戸に向かう大名行列なども頻繁に通過したといいます。場所は福島県南会津群下郷町。街道の左右には、江戸時代から残る茅ぶき屋根の民家が30軒以上並んでおり、国の重要伝統的建造物保存地区に選定されています。

 

オールアバウトの調査によると、「東北をよく知らない外国人が、魅力的だと感じる東北の観光地」のランキング5位には大内宿がランクインし、注目が高まっています。

 

大内宿では茅ぶき屋根の家それぞれが宿泊施設や飲食施設、土産物店などになっており、街道沿いに歩きながら、会津木綿や焼き物などの民芸品や地酒を見て回ることができます。ゆっくりと町並みをたのしみたいという外国人観光客の人に人気があります。

「小さな道。美山かやぶき、山と霧 Ouchijuku 会津若松市福島に囲まれています」(タイ人観光客)

「大内宿を散歩します♪」(フランス人)

 

大内宿観光光協会HP

 

 

以上、外国人観光客にも人気が集まっている宿場町を5つ紹介しました。

宿場町を訪れる外国人観光客は、「昔ながらの町並みをゆっくりと楽しむ」、そして旧街道を歩き峠越えをするなど「昔の日本を体感する」ことを楽しんでいるようです。「モノ」で楽しむだけではなく、日本の歴史や文化に触れる、そしてゆっくりと昔の日本に想いを馳せるような「コト消費」の需要が高まっている中で、今後はももっと「宿場町」の需要が高まるに違いありません。

 

 

参考サイト:

日本政府観光局HP / JapanHoppers / JapanHoppers 海野宿紹介ページ / 「東海道への誘い」/ 「宿場町」の全国数について参考にしたサイト/ 全国の街道のマップ / 五街道のマップ / トリップアドバイザー

 

 

 

ジモトのココロ

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