いじめ、悪徳商法、詐欺など、数々の「闇」を暴き、解決に導いてきた人気メルマガ『伝説の探偵』の著者で探偵の阿部泰尚(あべ・ひろたか)さん。今回は、建設ラッシュに沸く東京23区内のとある新興住宅街の保育園で起きた、信じられない保育士間の窃盗事件と、その被害者である保育士からのSOSに、阿部さんが挑みます。
社内で起きた被害者労働者をパワハラをして さらに解雇にする保育園の闇
序章
東京23区内のとある新興住宅街は、2018年現在でも、建設ラッシュに沸いている。
新しいアパートやマンションが次々にできており、数年前は比べものにならないくらいに、街が変わってきている。
陸の孤島と言われていた町に2005年、つくばエクスプレスの駅ができて以来、2018年現在ではその乗降者数は3倍に膨れ上がり、今、若い夫婦が移り住むという足立区でも注目される地域になってきている。
それに伴い、この地域では、保育園が不足すると予想されていて、近年、社会福祉法人などは助成金や補助金が取りやすい条件が揃ったこの地域に、保育園を作る計画を立て、次々に保育園を作っているのだ。
前代未聞のパワハラ事件は、この町にある新設されたR保育園で起きた。
パワハラ事件の概要
A子さんはこのR保育園でフルタイムのパートとして勤務していた。
かなり常識はずれのR保育園のY園長とも、特別に対立することもなく、様々な学齢のクラスに行き、保育士らのヘルプとして、問題なく勤務していた。
Y園長はもともとパワハラを頻繁に行う傾向があり、次々に保育士が一方的な嫌がらせを受けて、退職していた。その度に、子飼いにしている保育士を好条件で迎え入れて自分の思い通りになるYESマンを周りに揃えようとしていた。
パートのA子さんはその争いに巻き込まれる立場ではなかったが、多少理不尽な指示があっても、笑顔で引き受け、軋轢がないように努力していた。
ところが、R保育園内で起きたある事件の被害を受けて、Y園長からクビを宣告されてからというもの、幼稚で執拗な嫌がらせのほか、勤務外に密室で1時間以上も、謂れのない説教をされるなど、追い出し行為を受けた。
頼みの綱であった保育園運営の社会福祉法人理事会は、A子さんに被害を隠匿することを弁護士を使い強く要請した上に、事件はなかったことにすることはできないので、それを不都合と感じており、経営難という虚偽の理由で事実上の解雇を宣告し、現在に至る。
つまり、事件の被害を受け、その隠蔽を強要されて、その間パワハラを受け、最後は、戦う意欲もないだろうと、事実上の解雇宣告をしたというトリプルパンチの人権蹂躙を受けているのだ。
ある事件とは
このR保育園に勤務する保育士Nが、A子さんのロッカーにあった財布から、お金を盗んでいたという窃盗事件である。
はじめの事件は平成29年7月、事件が発覚する同年11月26日まで合計5回窃盗行為に及び、財布の中身の札を、一部抜いていた。
このR保育園では、職員用の更衣室があり、ロッカーは施錠できるようになっていたが、多くの職員は施錠していなかった。A子さんも施錠する日としない日があった。
お金が抜き取られていることを確信したA子さんは、上司らの協力のもと、自分のロッカーにカメラを置き、財布のお札を抜いて、手紙を中に入れた。内容は、「カメラで撮ってます、警察に通報します」というものだった。
同年11月26日発覚というのは、保育士Nが財布の手紙を見て、犯行現場をカメラに撮られてしまったと思いこみ、自ら行為を自白し、園への報告と警察への通報を止めるために、交渉を仕掛けてきた日になる。
A子さん自身が確認している被害額は、およそ2万5千円であり、犯行の確実な数は3回であったが、保育士Nの自白によれば、犯行回数は5回、盗られた金額自体にA子さんが自信がないと見るや、1万8千円しか盗んでいないと言い張った。
ちなみに私は企業内窃盗や家族間での窃盗など、指紋鑑定などをしても無意味になるような事案で、調査依頼を受ける事が多いが、この窃盗犯は、常習であると思われる。
まず初犯で、はずみで窃盗に及ぶようなものは金銭的な困窮にある場合が多く、盗んだことへの罪悪感がある。そのため、挙動不審になりやすい。また、財布の中身を取るというのは、思い直すチャンスがその行動の中にいくつもあるのだ。
初犯、はずみ行為の犯罪者は、1行動にその全てが含まれる事が多い。特に、はずみで盗ってしまったという場合は、裸現金があったとか、そのまま持ち去れる状態で無防備にお金があったという誘引に負けて盗るケースが多い。
ところが、このケースでは、A子さんのロッカーが施錠されていないことを確認し、A子さんに指示を出せる立場の保育士Nは自クラスへのヘルプを頼み、教室から自分だけが出てロッカーに向かい、A子さんのロッカーを開けて、カバンから財布を探し出し、財布の札入れの部分を見て、その入りようで、その日抜いてもバレなさそうな札を盗んで、元に戻すのだ。
計画的と言える準備行動があり、犯行を隠蔽する工夫もある。その後に挙動不審となった様子もない。
窃盗をすることにためらいがなく、A子さんだけを狙った犯行であり、発覚しないようにするために札の一部を盗むという行為は、常習犯の手口だ。
直接自白し、自己申告の被害金を返そうというのは、これで事件が明るみに出ないということに成功した過去がある犯罪者が行う行為であり、犯行自体が手慣れており、発覚時にも対応できるという大胆さがある。
保育士Nは初犯だというが、私には到底信じられない。
そして、 一般に社内で窃盗行為をしたら、普通解雇となる。
これは世間の常識だろう。子供を預ける保護者からしても、泥棒に何かを教えてもらおうとは思わないはずだ。
このR保育園を運営する社会福祉法人の就業規則によれば、(普通解雇)第18条(9)に「罰金刑を超える罪に当たる行為をなしたとき、又は、同行為につき、刑の宣告を受けたとき」という条文があり、窃盗罪は刑法犯に当たる行為だから、普通解雇の要件を満たす。
さらに、保育士Nが窃盗事件を起こした理由は、金に困っていたのではなく、A子さんに対する嫉妬であり、困らせてやろうと思ったというあまりに幼稚な理由なのだ。
困らせるなら、自分(保育士N)が上司なんだから、他に方法もあろう。なぜ犯罪行為までして困らせてやろうと思うのか、その犯罪心理は理解できるものではないだろう。
普通の企業ならば、保育士Nは解雇、A子さんには見舞金を些少支払い、その業務に問題がなければ、継続勤務をお願いするところだ。
学校法人の場合、子供にものを教える立場であることから、保育士Nは懲戒処分、警察に通告し、刑事処罰は任せる。 A子さんへの対応は一般企業と同じく、継続勤務だ。
ところが、この保育園の裁定はとんでもないものであった。
理不尽な対応とパワハラ
そもそもY園長は、犯人探しをすることに反対であった。保育以外のことに目が向くことを嫌ったのである。だから自己防衛しましょうということなのだが、結構な金額をちょこまかと盗まれていた被害者からすれば、応じられるはずもない。
なぜなら、盗まれたという事実はさることながら、自分だけが被害を受けているのだ。それに対して疑問に思う、怖くなるのは当然だろう。
善後策も講じることもなく、ロッカーを施錠しなさいと言っても、職員室には、ロッカーのキーがぶら下がっているのだ。合鍵がそこら中にあるなら、ロッカーに施錠したところで、留め金程度の効果しかなさない。
そして、A子さんが通報したいという申し出を強い言葉で威嚇し、また嗜めるように話し、これを妨害した。
通常、この場合、社内調査を行うことになる。事件のあらましを職員に告げ、個別に聞き取りをしたりして、犯人に自主的な行為を求めるのだ。その上で示談にするならば示談、納得いかなければ被害者は警察に通報する。
通報を妨害した上、園内での権力を使ってこれを隠匿するよう強要し、園内の調査をしないというのは、被害者の権利を踏みにじる行動にほかならない。
それでも、A子さんとこの問題を知ったその上司は、勤務外、他の職員や業務には一切支障がないようにすると言って、独自に調査をした。
A子さんの救いは、パワハラ傾向の強いY園長の考えに被害を受けている保育士は多数おり、一般常識のある職員がいたことだろう。
そしてついに財布に入れた手紙の罠に保育士Nは引っかかり、A子さんに犯行を自供したのだ。
保育士Nが自白し、このことがY園長に伝わると、Y園長は話し合いの場を設けた。それは、就業規則を無視したもので、A子さんに示談を強要するものであった。
Y園長の主張は常識をはるかに超えていた。
- Nは自分が元いた保育園から連れてきた可愛がっている保育士だから、自分の元で更正させたい。
- この業界ではよくあること、施錠しない、管理しない方がむしろ悪いとされる。
- むしろ、お金が盗まれたと騒ぐ方がどうかしてる。
- 人事権はR保育園を運営する社会福祉法人の理事長にあるから、今すぐの処分はできない。
- A子の被害に関する考え方がおかしい。常識外れだし、黙っておけばいい。
この人間離れした押し付けに、流石に従うことができなかったA子さんは、Nとは一緒には働けない、怖いし、納得がいかないと言い、理事長の判断を仰ぐことに同意した。
それでも、この段階から、 Y園長からは、そんなこと言う人とは、私が一緒に働けないと事実上の退職勧告を受けているのだ。
いずれ理事長から直接話があると言うことであったが、A子さんは一度も理事長とは会う機会がなかった。その間、Y園長は、A子さんに対する嫌がらせを強めていった。
ある日A子さんが出勤すると、Y園長が飛び出てきてすごい剣幕で、どうしてあんなことしたの!! とブチ切れられた。全く身に覚えが無いA子さんは連れられるままに部屋に入ると、何やらワープロ字で印字された紙をY園長が持っていた。
そこには、「保育士Nは泥棒です。・・・」という様に窃盗被害のことを書いたものと、Nを追放しようというような内容であった。
A子さんは、自分では無いと主張したが、たくさん印刷されていた、「これはあなたにとって不利になりますよ。」と犯行を押し付けられたのである。
ところが、A子さんは、キーボードを打った経験がほとんどない。Microsoft Wordと聞いても、なんのことかもわからないのである。そういう人物が作れるような代物ではないのだ。
また、A子さんは財布からお金が盗まれていると確信した日、その日のシフト表で出勤していない人物を確認している。出勤していない人は、絶対に犯行ができないわけだから、信用できると思ったのだ。それで、窃盗被害のことを話し、協力を仰いだのだ。当然に正義感の強い同僚は、協力してくれると話してくれた。
この同僚が、A子さんに協力した上司に、問題は解決しそうか心配して話をしたことをY園長は耳にして、ブチ切れる。
A子さんは時間外に及ぶ長時間、密室に閉じ込められて、「なぜ他の同僚がこの窃盗事件のことを知っているのか?」「こういうことを勝手にY園長の承諾なく、誰かに相談すること自体が間違い」「非常識極まりないあなたなんかと一緒に仕事はできないわよ!!」と喚き散らしたのだ。
このことが原因で、A子さんは強い精神的苦痛を受け、未だにそのことを思い出すと、胸が苦しくなるそうだ。密室への恐怖は心に大きな傷を残したままなのだ。
A子さんはR保育園にハローワークを通じてパート勤務となった経緯があり、このことを労働基準局に相談したいとY園長にいうと、そんなことはさせないと怒り狂ったそうだ。 その様子は、心配していた上司もわかるほどであった。この上司にとって、Y園長はさらに上司ということになり、園の運営、一切合切を理事会から任されていることは知っていたが、さすがにこれにYESとは言えないと感じたそうである。
Y園長は、このままでは、いつA子さんの口から窃盗被害が園全体に広がるか心配になった。だから、先手を打つことにしたのだ。
園に子供を通わせている事情通の母親たちによると、泥棒である保育士Nは、保育園の発表によれば「体調不良のため長期療養」とのことで、事件発覚から数日後に、事件のことは伏せられたまま、姿を消した。
ところが、その前日、保育士ら職員へは、「Nはタイに研修に行った」「当人は、以前からタイへ研修に行きたいと言っていたので、そうなった」と説明があったとのことであった。
そして、R保育園保護者への発表は誰にも黙って園長が張り紙で行ったため、窃盗事件を知らない保護者たちは、心配して他の職員に「Nは、大丈夫なのか?」と聞いたのであるが、当の職員は、「研修に行った」と聞かされていたから、そこで、何かあったはずだと、大きな混乱が生じたのだ。
この段階で、保護者も勤務する保育士らも、Nが何かやらかしたのではないかと疑うようになっていった。
ただ、そうした空気やNについての質問があるたびに、それは全てA子さんのせいとなって、Y園長はA子さんに嫌味を言ったり、露骨に不機嫌な様子で睨んだり幼稚な嫌がらせを続けた。
真横に立っていても、遠くにいる別の保育士を呼び止め、その保育士伝いに指示をされるなど、やることなすこと全てが幼稚で陰湿、そして執拗なのだ。
また、R保育園を管轄する足立区の担当課へはY園長が報告をしているというが、担当課は何も問題はなかったと聞いている。理事会からの話も、全てY園長を通じないとA子さんは話すこともできない。
犯罪行為をした保育士のNはR保育園には来なくなり、Y園長からはクビになったと聞いたが、その後、大変な事実が明らかになった。
Y園長がいくら嫌がらせをしたり、圧力をかけても、A子さんはなんとか耐えた。業を煮やしたこのR保育園を運営する社会福祉法人は、早急な示談を求めるために、顧問弁護士を派遣する。
しかし、この弁護士は、保母さんばかりがいる女の園に鼻の下を伸ばし、ろくに話を聞いてこれないばかりか、長期療養?タイへ研修?事件を受けてクビ?になったはずの保育士Nが、同社会福祉法人が港区で運営するA保育室へ異動して普通にフルタイムで勤務していることを話してしまう。
大失態だ。
実際、Nは、被害を受けたA子さんのショックの様子とテコでも動かない様子から、警察にでもかけ込まれたら、園児が集まらなくなってしまうとの社会福祉法人と園長の懸念から、R保育園に継続的に勤務するのは難しいと判断が下された。
ただ、保育園を運営する社会福祉法人にとって、保育士と0歳児は金の卵だから手放すのは大損なのだ。たとえ、泥棒の常習者でも保育士であれば、金を生むのだ。
(この疑惑については、この窃盗事件発端で調査をしているうちに、補助金や助成金関係につながる不正事実が発覚しているので、次回もしくは次々回の第2弾で報告したい。)
幸いこの本社を茨城県に置く社会福祉法人は手広く保育園を運営しているから、Y園長とも親しい園長がいる港区にあるA保育室に移籍させることにしたのだ。
実際は移籍ではないが、園を移ることで、A子さんには辞めさせたと思わせたのだ。
また、A子さんはこの弁護士と話す際、これまでの不当な扱いから夫の同席を園側に求めたが、園長がこれを叱責し拒絶したため、致し方なく一人で弁護士と対応している。
この弁護士は、そもそも社会福祉法人に雇われているのであり、法人、園側の弁護士となる。場合によっては、園とは利害関係が全く合わない状態になるA子さんとは利益相反行為になるだろうから、公正な仲裁は不可能だろう。
A子さんが何か言葉に表現できないような阻害感を感じたのは、正しい勘が働いたと言える。
A子さんが未だに取材調査に正当に応じてくれないのは、園側にもしも他に漏らせば、名誉毀損で訴えてやると脅されているのだ。
まあ、それでも、保護者の事情通やY園長に同様のパワハラを受け辞めたり、もう辞める予定の職員も複数いる上、近隣住民はこのR保育園をよく思っていないから、多方面から情報が入る。
蛇足になるかもしれないが、、、
近隣住民の不満
近隣住民の不満は、このR保育園建設当初からあった。
保育園はその作りに細かな規定があり、規定通りに作り計画を立てることで、かなりの補助金や助成金がもらえることになっている。
事件が起きているR保育園は、運営元の社会福祉法人が茨城県にあり、地元では有名な資産家がこの経営者になっているが、剛腕で知られるばあちゃん理事長が全てを仕切っている。
都合の悪いことは隠す。あとは金をばら撒き、それに応じない者は容赦なく潰してきたそういう噂が絶えない人物である。
実は建設当初、ここに何ができるか近隣には知らされていなかった。
当時をよく知る近所の住人曰く、工事の建設予定の看板には、当初何も記されておらずまたアパートでもできるのだと思っていたそうだ。
ところが、完成間近、「保育園」であることが看板にマジックで書き込まれていたのだ。
結局挨拶も何もないまま、保育園は始まった。
当時は、千葉で保育施設ができることへの反対運動が起きたりしていた時期だったから下手に計画を出して、近隣で反対でも起きれば、建設と設立が先延ばしになる可能性があるから、出来上がってしまうまで黙っていたというのが事実のようだ。
だから、近隣の評判はすこぶる悪い。
割りを喰らうのは、園児やその保護者、勤務する保育士らだが、経営サイドにはそんなことお構い無しなのだ。
近隣住民は反対運動こそ起こさないし、子供たちは可愛い。だから、いろいろな面で我慢をしてきているのだが、朝の路上の渋滞やゴミ問題など、どうにかならないものかという不満は鬱積している。
T塚警察署とA瀬警察署の判断
A子さんは我慢の限界に達し、最寄りの警察署へ相談へ行っている。しかし、ここで驚くべき判断があった。後日是正するようだが、当初判断として、ここに報告する。
「Nは被害額を返してきたんですよね、足りないということは立証できない以上、一応の被害回復はされていることになるので、窃盗で被害届を受理することはできませんよ」
は?どういうこと?
2つの警察署とも同様の対応であった。
もしも、この論理がまかり通るならば、警察ともあろうものが、犯罪者をそこら辺中に野放しにしていることになるまいか!
で、あれば。
貴方は同僚の財布からバレないようにちょくちょく金を抜けばいい。どうせ、自分の財布に確実にいくら入っていると証明できる人はほぼいないはずだ。
だから、バレるまで、どんどんチャンスがあれば、盗みまくればいいのだ。もしもバレたら、適当に反省したふりをして話をして、盗んだ金額だと都合よく金額を言って、それを返せばいいのだ。受け取らなければ、カバンにでもねじり込めばいい。
Nも受け取りを拒否するA子さんに無理やり封筒を差し出した。A子さんは怖くなって、それを受け取らざるを得なかった。そう、怖かったのだ。もしも、受け取らなかったら、もっと酷い目にあうかもしれない。そう思わせられたのだ。
”どうせバレるなら、私は刑務所行きになる。そんなの、嫌!そうなるくらいなら、もう、一緒に・・・!!”
目の前で自暴自棄になられたら、どう思うか。体力的にはNの方が圧倒的に強い。
だから、貴方も、もしこれでバレたら、自暴自棄のふりをして、道連れにしてやると脅せばいいのだ。気の弱そうな良い人、人と争えない同僚を狙えばいい。
こうすれば、被害届すら警察は受けないのだから、罪に問われることなど絶対にないことになる。新語になるかもしれないが、これぞ「合法窃盗」である。
私はこの警察判断は明らかに誤りだと思ったので、大先輩であり仲良くさせてもらっている元刑事で警視正までいった方に率直に質問してみた。
「ダメだよ。だって、犯罪は成立してるじゃないの。警察は捜査なんだから、返したからハイ終わりにはならないよ。どこの刑事よ、若いんだろ?メンドくさいのか?」
つまり、犯罪は盗んだ時点で成立している。しかも5回もやったなら、もう後戻りはできない。だから、警察はその加害者を逮捕して、話を聞き、検察庁に書類送検するのが仕事になるのだ。
これは、他の現役刑事さんに聞いても同じであった。
元検事で友人の弁護士は、この現象を「起訴猶予になるか略式起訴で微罪、つまり無罪放免か微罪になろうことで、いちいち動きたくないという心理があるんだろ」と分析していた。
色々私がこの判断について聞き回ったことで、是正するという話が私の耳まで届いているが、実際どうかはわからない。
ただ、A子さんは日本の警察行政へ強い不信感を抱いことは間違いないし、 これでついに、精神的に最悪の事態を考えるまで、追い詰められてしまったことは否めないのだ。
そして事実上の解雇予告
A子さんは、2月下旬にY園長から電話で 「あなた3月末でクビだから、理事長の決定だから、私は知らないけど。そういうことなので」という内容の解雇告知を口頭で受けた。
理由は、 保育士中心に雇い入れをするという方針で、フルタイムのパートは法人の経営上、経営難だから雇えないからというものであった。
その場にいた複数の保育士らは、これについて、こう反論する。
「経営難ということはありません。毎月相当金額の補助金が国や自治体からも入っていますし、保育料も別で取っています。保育士には国などの補助もあります」
「3月中には人手不足を理由に、パートの募集をしています。私たちからすれば、仕事に慣れているA子さんに残ってもらうのがベストなんです。また、何もわからない人に指導するのも大変ですから」
「Nが戻ってくるという話はすでにY園長から出ています。多分A保育園の園長とY園長は古くからの友人ですから、始めからこのシナリオができていたんだと思います。それに・・・」
つまり、 NをR保育園に戻すに当たって、A子さんが邪魔になったので、正当な理由はないが、経営難ということにして、解雇してしまおうという魂胆なのだ。
これぞ、完全なるパワハラ。
パートとはいえ、就業規則によれば、普通解雇の要件には何一つ一致しないし、契約を更新しない理由が虚偽(嘘)であれば、不当解雇と言わざるを得ない(就業規則は正社員もパートアルバイトも同じ扱いになっている)
都合が悪い人は解雇する。それが園内で起きた事件の被害者であっても、その事件が起きたこと自体が園にとって、運営元の社会福祉法人にとっても不都合だから、なかったことにするため、被害者を園から抹殺したのだ。
パワハラの定義(東京都)
職場において、地位や人間関係で弱い立場の労働者に対して、精神的又は身体的な苦痛を与えることにより、結果として労働者の働く権利を侵害し、職場環境を悪化させる行為
ただし今回、このR保育園を調べているうちに、保育園にまつわる補助金助成金の流れが見えてきた。
例えば、保育士の給与については1人あたりおよそ3万円の補助金が月々支払われる。家賃補助は8万円前後支給されている。保育についても、0歳児であれば1人あたりの保育料は21万円とされ、年齢によって毎月補助金が保育園に入る仕組みになっている。
例えば、0歳児〜5歳児まで各年齢の子が10人いる認可保育園ではおよそ700万円が月々補助金として支給されるのだ。
さらに、保育園建設についても補助金が出る。
まさに自己資金を投入しなくとも、条件の良い場所で保育士を集めて園を立ち上げれば、国や自治体の補助金で十分な経営ができる。
ここに保護者らから保育料を取るのだから、黙っていても金が儲かる仕組みが出来上がっているのだ。
こうした血税が投入される仕組みから、今回、R保育園の成り立ちや聞き込みのための勤務体制なども調べているうちに、不正に関する疑惑があることがわかった。すでにいくつかの証拠が出てきているが、現在裏付け調査中なので、次回もしくは次々回に「伝説の探偵」で報告したいと思う。
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