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中国のiPhone「台湾の旗」で即クラッシュ。アップルへの圧力はあったのか

先日掲載の記事内でもお伝えしたとおり、各国航空会社に「台湾」を「中国台湾」と表記するよう圧力をかけるなど、「一つの中国」のゴリ押しに余念がない習近平政権。今回、台湾出身の評論家・黄文雄さんが自身のメルマガ『黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」』の中で、中国国内の一部のiPhoneで「台湾」と入力したり台湾国旗を表示するとクラッシュしてしまうというなんとも不可解な現象を紹介、黄さんはこの事態を「中国がアップルに依頼していたとしても不思議でなはい」としています。

※ 本記事は有料メルマガ『黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」』2018年7月18日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め初月無料のお試し購読をどうぞ。

プロフィール:黄文雄(こう・ぶんゆう)
1938年、台湾生まれ。1964年来日。早稲田大学商学部卒業、明治大学大学院修士課程修了。『中国の没落』(台湾・前衛出版社)が大反響を呼び、評論家活動へ。著書に17万部のベストセラーとなった『日本人はなぜ中国人、韓国人とこれほどまで違うのか』(徳間書店)など多数。

【台湾】中国に対して「Think different」できないアップル

台湾の旗でiPhoneがクラッシュ──中国政府に譲歩したアップルが生んだバグ

iPhoneで、中華民国の旗や台湾に関する入力をすると強制シャットダウンするというバグが発生したというニュースです。具体的にどのようなことなのか、以下、報道を一部引用してご紹介しましょう。

元米国安全保障局(NSA)の職員で、アップル専門のハッカーかつ「Digita Security」の創業者であるワードルは、それまでに被害妄想に取り憑かれた友人知人からこうした話を何度も聞いており、本人もだんだんそれを疑うようになっていた。

 

しかしその友人に直接会ってみると、彼は奇妙な現象を目にした。何かしらの理由で台湾の旗がiPhoneに現れると、それを表示したアプリが直後に落ちるのだ。

 

つまり、彼女に台湾の旗の絵文字を送りつけることで、誰でも簡単に携帯を意図的にクラッシュさせることできる。「わたしが彼女にこの『死の絵文字』入りのメッセージを送れば、彼女の携帯はすぐにクラッシュするのです」と、ワードルは言う。

 

それから数カ月、ワードルは絵文字の謎の解明に断続的に取り組んだ。その結果、彼が発見した(そしてアップルの修正の助けになった)のは、あのクラッシュが彼の友人のiPhoneを狙って行われたハッキングではなく、世界中すべてのiPhoneに含まれる検閲機能で起きた意図せぬバグだったということだ。それはまるで中国政府をなだめる試みのようである。

 

「つまるところ、アップルは中国の携帯に台湾の旗を表示させないためのコードをiOSに書き加えたのです」と、ワードルは言う。「そのコードにバグがあったわけです」

アップル社は、この記事に登場する人物以外からもいくつかの指摘を受けたようで、その後、「iOS 11.4.1で“Taiwan”とタイプしたときに特定の言語や地域設定を施したiPhoneがクラッシュする問題を修正した」そうです。

一部のiPhoneで「Taiwan」と打つとクラッシュするバグ。すでにiOS 11.4.1で修正済み

利用者が、この問題についてアップル社に問い合わせた際に帰ってきた回答は、「そうした事項は我々には決定権がないため、上層部に上げようにする」といったものだったそうです。大手企業の典型的な逃げ口上です。

かつてアップルのCMでは「Think different」というコピーで、世界に変革をもたらした人々を取り上げていました。そのなかには、マーチン・ルーサー・キングや、ガンジーなど、抑圧と戦った人々が取り上げられていましたが、その頃とはずいぶん様変わりしてしまったようです。

中国の、世界各国の民間企業に対する「一つの中国を強制する態度は、このメルマガでも再三紹介してきました。アメリカのマリオットホテルグループ、シャネルやブルガリなどに、ホームページなどで香港や台湾の表記に中国をつけることを強制

また、世界30以上の外国航空会社に対し、台湾や香港マカオを中国の一部ではないとする情報をウェブサイトなどから削除するよう要求。最近では、JALとANAがホームページなどで台湾を「中国台湾と表記するように強制した例があります。JALとANAの件について、台湾側が抗議したことについて中国が「身の程知らずのことをしないほうがいいと台湾当局に忠告する」、と恫喝したオマケまでついています。

台湾抗議「身の程知らず」 「中国台湾」表記 中国外務省

今回、iPhoneの報道で明らかになったのは、中国は民間各社のホームページでの表記を変えさせるだけでなく、iPhoneのシステムにまで注文をつけていた可能性があるということです。台湾または中華民国の国旗に関するものを受けたとたん、受けた側のアプリがダウンするという設定にするよう、中国がアップル社に依頼していたとしても、不思議ではありません。

そのことは、中国の執拗なまでの国際社会からの台湾排除の動きを見れば、わかります。

もちろんアップル社は、中国の指示によりそのようにしたと認めるわけがありません。ただ単にバグを修正したとの見解を述べています。しかし、どう見ても台湾を意図的に狙い撃ちしか思えません。中国からの指示がなかったとすれば、それは「忖度したということなのでしょう。

記事にもあるように、アップルは中国国内のユーザーのデータを今年3月中国に移動させました。中国が外国企業に対して、データを中国国内に置くように要求し、法律をつくったからです。これにより、中国人ユーザーのネット上での活動が中国側にすべて把握される可能性が高まりました。このときも、アップルに対する批判が巻き起こりました。

アップル、再び中国に屈する iCloudのデータを中国企業に渡した「罪」と「打算」

また、2017年には、中国政府が遮断している海外のサイトにつながることができるVPNソフトを、中国政府の要求に応じてアップルストアから削除するということもありました。

そして今回の「事件」ですから、中国からの何らか関与があったことを疑うなというほうが無理というものでしょう。

一応、アップルも中国からのすべての要求を飲んでいるわけではなく、これまでも、これからも不当な要求はすべて拒否するとアピールしています。ただ、中国の正当な法的要求には応じるようです。

中国は法治主義ではなく、人治主義の国です。民主主義的な議論などありませんから、自分たちの都合にいい法律をすぐにつくってしまいます。なにをもって「正当」「不当」といえるのかも不透明です。

それにしても、アップル社にとって、理不尽な中国の要求を呑むかわりに、どんな見返りがあるのでしょうか。もちろん、中国の要求に妥協するのはアップルだけではありません。台湾を国扱いしたということで、中国から批判を受けた外資企業が謝罪するケースがここ最近、目立っています。

台湾を「国扱い」、外資企業が次々謝罪 中国で批判受け

それほど中国市場は、民間企業にとってまだまだ魅力的だということなのでしょう。

ただ、中国のこうした偏執的とも言える強要行為がエスカレートすればするほど、営利目的の企業は別として、国際社会としては冷めた目で一つの中国問題を見るようになっています。アメリカをはじめとし、欧州各国も中国に対して冷ややかな目を向けつつあります。

以前もお知らせしましたが、昨年末、欧州議会では台湾の国際機関参加を支持しましたし、アメリカでは、「台湾旅行法」の可決以外にも、「国防授権法」(必要があれば台湾に最新兵器を売ることができる)や、台湾におけるアメリカ事務所の実質的な大使館化など、台湾を国として扱うケースが増えてきているのです。企業の対応と国は別だという、ある意味で、欧米流のダブルスタンダードともいえます。

欧州議会で台湾の国際機関参加を支持、外交部が謝意

こうした世界の流れを受けて、日本も徐々に台湾とのつながりを広げつつあります。日台間では、民間企業どうしの交流、姉妹都市締結、鉄道会社どうしの交流、最新のニュースでは「日本と台湾の機関が毒物災害対策で協力対応力向上へ=覚書締結」というのもあります。

工研院攜手日本海上災害防止中心 簽署毒化災應變備忘録 國際接軌防災應變

アップル社の今回の行為は、中国に屈しているだけではありません。iPhoneという個人情報と密接に関係している商品なだけに、消費者の見えないところで、システム操作が行われるのではないかという不安を与えました。情報を第三者に渡すこともできてしまいます。

とくに情報の行き先が、独裁国家の中国だとしたら悪夢です。先の中国国内のユーザのデータを中国のサーバに移したことも含めて、世界を代表する企業としての品格や人権意識が問われます

習近平の時代になってから、中国の夢と人類の夢はますます表面化してきています。文革後の80年代は、日本に対して「正しい歴史認識」を押し付け、日本から「反省と謝罪」を引き出して、優位な立場を得ようとしました。

その後は、尖閣諸島や沖縄などの領土問題を起こし、南シナ海の要塞化に至ります。もちろん、中国に進出してくる民間企業に対しては、徹底的な情報開示を求めています。こうした一連の独善的な押し付けは、すべては中華民族の夢のためであり、これからはそれを世界規模で展開しようというわけです。

しかし、当然ながら世界は中国の夢を押し付けられるがままでいるわけではありません。中国の夢と人類の夢とが衝突し、あちこちで不協和音が起こっています。

同時に、中国国内でも衝突は起きており、習近平派と上海閥の奪権闘争、習近平集団と党長老との対立などはすでに起こっています。党内対立などが国内で起こっているために経済成長率は低下し、世界最大の通商国家としての弱点が露出したことで、海外の大企業の退出が続き、その損失は4000兆円とも言われています。

中国の夢と人類の夢が衝突したことで、EU諸国にも変化が出てきています。「一帯一路政策への参加に消極的になりはじめているのです。特に、中国の夢とアメリカの夢との衝突が、米中貿易戦争という形で具現化すると、世界はより冷ややかな目で見るようになります。

中国の夢と人類の夢との衝突は、これからも文化摩擦や文明の衝突以上に世界に大きな影響を与えることでしょう。

(メルマガより一部抜粋)

image by: Shutterstock.com

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