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とにかく「憲法を改正した総理」の称号が欲しいだけの安倍首相

歴史的豪雨災害に押されたことを理由に「モリ・カケ問題」を収束したかのように見せかけ、安倍総理に都合の悪い議論は論点ずらしで逃げきった感のある通常国会は閉会しました。元全国紙の社会部記者で、メルマガ『国家権力&メディア一刀両断』の著者である新 恭(あらた・きょう)さんは、安倍総理は「とにかく憲法を改正させる」ことしか頭になく、その後にやってくるであろう「アベノミクス破綻」の責任からも逃げようとするのではないかと予測しています。

アベノミクスこそ打ち砕くべき岩盤だ

長かった通常国会が終わり、安倍首相はさぞかしほっとしているだろう。

嘘をつき通し、数に驕る自民党の国会運営で、なんとか乗り切った。国会や国民にどんなに不誠実であろうと内閣は維持できると自信をつけたかもしれない。クロであってもシロと言い続ける。すると、いつかは追及する側も、疲れ果て、飽きてくれる。

あとは、強力なライバルのいない総裁選を勝ち抜き、自衛隊明記の憲法改正にこぎつけさえすれば、アベノミクスの後始末という最大の難事など知らんぷりして、勇退の花道に進める。よもやそんな算段では。

これほどコケにされながら、我ら国民、なんたる寛大さか。安倍官邸という密室で全てが決められ、国民の代表が集まる国会は形骸化した。真実は何も知らされない。

与党議員は、安倍政権の手柄を首相や閣僚に語ってもらう機会提供者に甘んじ、野党議員の追及は、論点ずらしとごまかしの答弁で時間潰しされた。

災害史に残る豪雨が始まった夜も、安倍首相や小野寺防衛大臣らは、竹下亘自民党総務会長ら自民党議員有志との飲み会で親睦に励んだ。その席で、雨の災難に遭っている人、遭うかもしれない人への想像を政治家たちは働かせただろうか。

国民の大多数は諦めに似た気持ちかもしれない。いろいろ問題はあるけど安倍さん以外に誰がいるんだ、と。地盤、カバン、看板が幅を利かせ世襲議員が議席を占めてしまっている弊害が人材不足を招いているのは否定できない。だがそれほど人材が枯渇しているのであれば、日本はお先真っ暗だ。

安倍首相がやってきたことは、秘密保護法共謀罪安保法制といった戦前回帰の政策ではないか。その上に緊急事態条項を憲法に盛り込めば、国民の主権人権といった面倒なものに気を使わなくともよい国家権力はさらに凶暴になりうる。そのぶん、平和や個人の自由は脅かされる。

安倍官邸はこの国会においても、やりたい放題だった。権力の濫用、情報の隠蔽、改竄などの問題について、役所内の形ばかりの処分ですませ、首相とその周辺を真空地帯にしたまま、責任の所在を突き止めようとしない。

その姿勢は、政府に対する深刻な不信感を国民の間に残した。ふつうなら、このような政権のもとで、憲法改正など、できるはずがない。

しかし、自民一強、補完勢力多数の国会情勢や、内閣支持率の底堅さは不気味だ。自民党は、いざ国民投票となると、なりふり構わず、電通と組み、マスメディアに巨額資金を投じて、宣伝工作を仕掛けてくるだろう。

その効果は、国民への刷り込みはもちろんのこと、報道部門の自主規制にも及ぶ。電通や博報堂を通じたメディアコントロール安倍自民党の得意とするところだ。

安倍首相がなんとか命脈を保っているのは、日銀を支配することによってつくられた株高円安のおかげだ。目先の利益にこだわる経済界が自民党への資金提供や賃金アップで協力しているのも大きい。

異次元金融緩和は、出口を想定しない博打だ。アメリカがついている安心感からか、核のゴミの処理方法を考えないで作ったのが原発。それは福島で爆発した。同じことが異次元金融緩和にもいえる。健全なマネー政策に戻すための出口を探し始めた途端、アベノミクスのバブルは破裂するだろう。麻薬を打ち続け、きつい痛みをともなう出直しのきっかけを先延ばししているのが安倍政権の姿だ。

未来のことが分かったら苦労しねえよ、と麻生節が聞こえてきそうだが、昨今の日銀の動きをながめていると、この国はいつまで食っていけるのか、戦慄さえ覚える。

サンデー毎日7月29日号で、日銀と国の財政の危機について二人の識者が倉重篤郎氏の問いに答えている。

今の日銀をどう見る?

「日銀というのは…民間銀行がおかしくなったのを支える役割だったが、今は違う。日銀自身がリスクの火だるま、過剰なほどのリスクテーカーと化している」(河村小百合・日本総研上席主任研究員)

財政の状況を例えると?

タイタニック号のようだ。実は、まっしぐらに大氷山に向かって航行している」「日本の財政、経済に対する信任が崩れれば今日にでもおかしくなる」(小林慶一郎・慶大教授)

異次元金融緩和により、日銀が円紙幣を刷って大量に国債を買い続けている。そのため、いったん世界的な金利上昇局面が訪れるや、中央銀行の債務超過という前代未聞の事態にいたる可能性が高い。一橋大名誉教授、野口悠紀雄氏ら専門家が指摘し、警鐘を鳴らしている。

大氷山にぶつからないようにするには、いつか方向転換しなければならないが、そのためには死ぬほどの痛みを国民は覚悟せねばならない。

事実上、アベノミクスは破綻している。その原因の一つは、安倍首相が経団連など財界の保守的、保身的なお歴々と付き合ってきたからだ。古いビジネスモデルで成功した日本の巨大カンパニーで権力をふるう人たちである。新成長戦略を思いつくことは期待薄であろう。

安倍首相は岩盤規制の打破と言うわりに、肝心なところの規制改革には取り組めていない。経団連の巨大利権がからむ部分には手がつけられていないのだ。垂直統合型の古いビジネス感覚そのものが、岩盤である。

日本が得意とするモノづくりにこだわり、大きな未来を描けていない。安倍首相は自身の頭の中の凝り固まった岩盤を破壊したほうがよさそうだ。

財界にかつてのような創業社長がめっきり減り、首相をおだてるのが上手なサラリーマン会長が、大立者を気取って取り巻いている。

マスメディアの経営陣はさらに小粒で、保身に憂き身をやつしている。安倍首相が裸の王様になるのも道理だ。

メディアに気概があるなら、「ほとぼりが冷める」という定理を、たとえばモリ・カケで覆さなければならない。

もうネタ切れだ、などと言うなかれ。豪雨災害も灼熱地獄も目の前の重要なニュースだが、モリ・カケの報道がピタリと止まったのはどうしたことか。政治権力のあり方、場合によっては総理の犯罪にもつながりかねない重要な問題だ。

いま一度、洗い直して、連載ものにしたり、特集を組んだりする必要があるだろう。その過程で、真新しいネタが見つかり、スクープできるかもしれない、

テレビなどはさまざまな切り口で取り上げることが可能だ。安倍首相はもちろん、今井尚哉、柳瀬唯夫、萩生田光一、加計孝太郎ら役者はそろっている。

まだ未解明の問題なのだ。彼らにアプローチし、インタビューできないなら、その反応をこと細かに報じるドキュメンタリーをつくればいい。

筆者の想像するところ、安倍首相は、「憲法を改正した総理」の称号がとにかく欲しいのだ。

その念願さえかなえれば、ちゃっかり逃げ場を探しにかかるだろう。自分が日銀支配と放漫財政でつくったバブルの後始末は他人に任せる。安倍さんは景気をよくしたが、そのあとはガタガタ。そう応援団が吹聴できるシナリオを描いているにちがいない

失政の尻拭いをさせられる将来の首相は、いい面の皮。あとに残される国民は災難だ。

image by: shutterstock

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