デュアルライフ、ハイパーノマドのススメ オーストラリア「ブリスベン」
高城未来研究所「Future Report」第178号(2014年11月14日号)
みなさんはオーストラリアにどういうイメージをお持ちだろうか?グレートバリアリーフやブルー・マウンテンズ、エアーズロックなど、雄大な自然のあふれる国、カンガルーやコアラ、エリマキトカゲなど固有の生態系を持つ国、オージー・ビーフや羊毛、小麦など農畜産業の盛んな国……。比較的身近な英語圏の国として、語学留学やワーキングホリデーに行った経験のある人、あるいはそういう知人を持つ人も多いのではないだろうか。もちろん旅行で訪れたことのある人も多いだろう。
オーストラリアの正式名称は、オーストラリア連邦(Commonwealth of Australia)。南半球のオセアニアに位置する、連邦立憲君主制国家である。日本と同様に周囲を海で囲まれているため、島国といえなくもないが、定義としては大陸になる。大陸と呼ばれるその面積はというと、ロシア、カナダ、中国、アメリカ、ブラジルに次いで世界6番目に大きく、日本のおよそ20倍に相当し、アラスカ州を除くアメリカの国土とほぼ同じ広さだ。オーストラリア全体の人口は、約2294万人(2013年3月、豪州統計局)。ちなみに東京都の人口は、1300万人超である。
オーストラリアは6つの州と特別地域に分類され、今回取り上げるブリスベン(Brisbane)は、クイーンズランド州(Queensland)の州都である。ブリスベンは、シドニー、メルボルンに次ぐオーストラリア第3の都市。余談だが、間違えがちなのが、オーストラリアの首都。人口わずか35万人ほどのキャンベラがそうなのだが、これはシドニーとメルボルンの首都争いに決着をつけるべく、両都市の間に作られた計画都市である。それはさておき、ブリスベンのあるクイーンズランド州は、大陸の東北部に位置しており、オーストラリアでは2番目に大きく、大陸の4分の1の面積を占めている。ブリスベンはそのクイーンズランド州の南東部にあり、人口165万人ほどの規模。街の中心をブリスベン川が流れていて、その両岸には、19世紀に建てられた歴史的建造物とモダンな高層ビルが混在し、街は活気にあふれている。有名なゴールドコーストは、ブリスベンの南東約70kmのところにある。
では早速、オーストラリアまたはブリスベンに行く前に押さえておきたいポイントをまとめていこう。
(1)日本からのアクセス
過去、日本からブリスベンへの直行便は多数運行していたが、2010年以降、現在に至るまで、残念ながらなくなっている。よって必然的に、いずれかの都市を経由して行くことになる。さまざまなルートが考えられるが、比較的便利なのは、ソウルや台北、香港、シンガポールなどを経由するルート。大韓航空のソウル~ブリスベンの所要時間は、9時間45分ほど。羽田から出発したとしてソウルまでの所要時間が約2時間30分。さらに乗り継ぎ時間も考えると、なかなかの長旅にはなってしまうが。日本からシドニーまで直行便を利用して、そこからブリスベンへ行く方法も考えられる。成田からシドニーまでの所要時間は、約9時間40分。シドニーからブリスベンへは飛行機だと1時間半ほどだが、バスや電車だと17時間前後かかってしまうようだ。観光客の多いゴールドコーストへは、LCCのジェットスターが直行便を運行していて、成田からゴールドコーストへ9時間ほどで行くことができる。ただしこれだと、ゴールドコースト空港からブリスベンまでのアクセスがよくないため、ブリスベンが最終目的の人には不向きなようだ。同じクイーンズランド州にはケアンズもあり、こちらもジェットスターが日本から直行便を運航しているが、ケアンズ~ブリスベン間の移動がやはり飛行機を利用しても2時間かかってしまう。
ブリスベン空港は、ブリスベン市内の北東約13kmのところにある、クイーンズランド州最大の国際空港。市内へは渋滞に引っかからずスムーズに行けば、車で約20分ほどの距離。空港は国際線、国内線のふたつのターミナルがあり、両ターミナル間をエアトレインが運行している。空港から市内への移動方法は、タクシー、電車、バスなど。タクシーだと所要時間20~30分で$35~40(約3,542~4,045円)、電車の場合は国際線、国内線それぞれのターミナルに駅があり、エアトレインが30分間隔で運行している。市内までは約20分で片道$13.5(約1,365円)。バスは市内まで片道$12(約1,213円)。
オーストラリアは3つのタイムゾーンがあり、ブリスベンやシドニー、メルボルンなどがある東海岸は、日本のプラス1時間。中央部は日本のプラス30分。西部は日本のマイナス1時間となっている。日本と時差がほとんどないことが、移動する際の利点といえるだろう。またサマータイムの実施は州によって異なり、東部ではブリスベンのあるクイーンズランド州のみ実施していない。よってその間は、シドニーやメルボルンなどとも時差が生じることになる。
(2)気候
ブリスベンは年間を通して温暖または高温で、亜熱帯気候に属する。南半球なので日本とは季節が逆で、12月から2月にかけて最も気温が上がり、最高気温の平均が30度前後になる。降水量が多いのもこの時期で、湿度が高くなる。冬は晴れの日が多くなり、平均気温は17度ほど。雨が少なく過ごしやすい季節といえる。季節を問わず忘れてはいけないのが、紫外線対策だ。オーストラリアは一説によると日本の5倍以上の紫外線量といわれており、日焼けによる皮膚がんの発生率は世界一となっている。よって紫外線対策は、日本のように美容のためというより、皮膚がん予防のための意味合いが強い。子どもへの指導は特に徹底しており、屋外へ出るときは、長袖シャツや帽子、サングラスの着用、日焼け止めを塗ることが奨励されている。日本では日焼け対策をしない男性が少なくないが、オーストラリアに行ったら必須であることを覚えておこう。
(3)言語
公用語は英語だが、独特のなまりとアクセントがあり、オージー英語(AusEnglish)というふうにいわれている。オージー英語は、植民地であったイギリス英語がベースとなっており、単語や綴りもアメリカ英語と異なるものが多い。イントネーションに関しては、イギリス英語やアメリカ英語の場合、質問の際に“上がる”のが基本だが、オージー英語は質問以外の文章でも上がることがあるのが特徴で、慣れないと質問ではない会話も、そう聞こえてしまうかもしれない。また移民の割合が高いため、家庭などではそれぞれの国の言葉を使う人も多い。先住民の言語もあるが、現在は消滅の危機に瀕している。
(4)人種
現在のオーストラリアには、過去2世紀ほどの間に、200もの国からやってきた移民とその子孫が暮らしている。推定居住人口のほぼ4人にひとりが外国生まれといわれており、長年移民を受け入れてきた歴史がある。そのため人種、言語、宗教は実に多様で、アメリカ、カナダとともに世界で最も再定住する移住者が多い上位3カ国となっている。
(5)通貨
通貨はオーストラリアドル。オーストラリア国内では単に「$」と表記されるが、米ドルなどと区別するために「A$」「AUD」と表記される場合もある。補助通貨はセントで、1ドル=100セント=約101.12円(2014年11月13日現在)。紙幣は$100、$50、$20、$10、$5の5種類。プラスチックシートに印刷された世界的にも珍しいポリマー紙幣で、破れたり劣化しにくいのが大きな特徴。水着のポケットにお金を入れたまま泳いでも大丈夫というスグレモノだ。金額ごとに色もはっきり違うので、非常にわかりやすい。コインは$2、$1、50セント、20セント、10セント、5セントの6種類。$2と$1は金色のコインで、ほかは銀色。スーパーなどでは、日本と同様「$1.98」というような細かい値段がつけられていることが多いが、オーストラリアには1セントコインが存在しないため、端数はあってないようなもの。5セント単位で端数処理されて、支払うことになる。
(6)治安
ブリスベンのあるクイーンズランド州は、一般的に治安がよいといわれている。ただしスリ、置き引き、車上荒らしなどの軽犯罪は、日本と比べると“よくあること”のようだが、自分の国ではないことを意識して、日頃から防犯意識を持っていれば、基本的には問題ないだろう。
(7)食文化
移民の多い国だけに、さまざまな国の料理を食べられるのは、うれしい点。ブリスベンには日本人も多く住んでいるので、日本食レストランやラーメン屋、居酒屋なども充実している。オーストラリア人にも日本食は人気のようだ。反対に、オーストラリアのローカルフードといわれても、あまりピンと来ないのではないだろうか。事実、移民による比較的新しい国だけに、伝統的なオーストラリア料理というのはないに等しく、しいてあげるなら、ミートパイやフィッシュアンドチップスのようなイギリス発祥の料理になる。最近は大都市を中心にモダン・オーストラリア料理と呼ばれるジャンルもあるようだが、こちらはさまざまな食文化をミックスしたフュージョン料理といえる。またオーストラリアでは、カンガルーの肉もスーパーで普通に売られている。豚肉などと比べると低脂肪なので、好んで買う人も意外と多いようだ。
次回は入国する際に必要な手続きや、ロングステイをするために必要なビザとその取得方法などについてレポートしよう。
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著者/高城剛
1964年葛飾柴又生まれ。日大芸術学部在学中に「東京国際ビデオビエンナーレ」グランプリ受賞後、メディアを超えて横断的に活動。 著書に『ヤバいぜっ!デジタル日本』(集英社)、『「ひきこもり国家」日本』(宝島社)、『オーガニック革命』(集英社)、『私の名前は高城剛。住所不定、職業不明。』(マガジンハウス)などがある。 自身も数多くのメディアに登場し、NTT、パナソニック、プレイステーション、ヴァージン・アトランティックなどの広告に出演。 総務省情報通信審議会専門委員など公職歴任。 2008年より、拠点を欧州へ移し活動。 現在、コミュニケーション戦略と次世代テクノロジーを専門に、創造産業全般にわたって活躍。ファッションTVシニア・クリエイティブ・ディレクターも務めている。 最新刊は『時代を生きる力』(マガジンハウス)を発売。
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