30代の持ち家率が50%を越え、それに伴い住宅ローン残高も過去最高となっている、という調査結果が発表されました。なぜ彼らは多額の借金をしてまで、これまでの世代よりも早く持ち家を手に入れようとするのでしょうか。そして決して少なくない負債は、今後彼らにどうのしかかってくるのでしょうか。無料メルマガ『まんしょんオタクのマンションこぼれ話』の著者でマンション管理士の廣田信子さんが考察しています。
低金利がもたらした30代の持ち家比率52.3%は驚き!
こんにちは!廣田信子です。
若い世帯の借金が膨らんでいます。2018年の20~30代の負債総額が政府による調査が始まった2002年以降で最高となったという、日経新聞の記事(7月8日)が気になりました。持ち家志向が強く、住宅ローン残高が増加しているのが主な理由です。ローン金利の低さから賃貸住宅を借りるより得だと判断して早い段階で住宅を購入することで、大きな借金を抱えることになるのです。
特に、30歳代までの住宅購入が活発だといいます。2000年に46.6%だった30歳代の持ち家比率は、2015年に52.3%まで高まっているというのです。この数字には、正直びっくりしました。今は、もっと増えているかもしれません。
でも、そう言えば、自分の子供たちも、30歳過ぎたばかりで、自宅を購入しています。その理由は、借りるより、買った方が月々の負担が少ないし、ローン減税もある。しかも、住戸面積も広いし、設備は最新。で、資産も残って、いざとなったら売っても貸してもいいから…というものでした。そう言われると、買わない選択はないような…。友人の子供たちも、結婚している、独身を問わず、みんな30代でマンションを購入しています。
これだけ持ち家比率が高まると、これに合わせて、若い世帯が抱える住宅ローンも当然増えます。総務省の家計調査(2人以上の世帯)によると、世帯主が30~39歳の家計の全負債は、2018年には、1,329万円となり、調査が始まった2002年以降で最高となり、1.8倍になっているのです。29歳以下でも、675万円と2.7倍になっています。この傾向は若年層に限られる傾向で、50歳代の世帯の負債額はほぼ横ばいなのです。
日銀の超金利政策による住宅ローン金利の低下で、購入しやすくなったことが原因の一つですが、もう一つの要因として、企業が社宅や賃貸補助を減らしていることが大きく影響しているといいます。福利厚生により低負担で賃貸住宅に暮らしながら、購入資金を貯蓄することができなくなり、購入に踏み切るタイミングが早くなったのです。
この2つの要因は、双方向で作用し合ったと思います。安い負担で住宅が購入できるようになったから、企業も社宅や家賃補助をやめた。で、家賃補助がなくなってしまったから、高い家賃を払うより、買ってしまおうというという人が増えるという循環です。新築マンションが売れていた現象は、どんどん購入年齢が下がることで成り立っていたのです。
しかし、若いうちから住宅ローンで抱えることで、日常生活では節約を迫られる若者が多いのです。住宅ローンで支出の余力が落ちることで、若年層の可処分所得に対する消費支出の割合(消費性向)が減っていると内閣府は分析しています。
住宅金融支援機構の調査によると、2018年10月~2019年3月に変動金利で借りた人の割合は、60.3%と過去最高で、10年前に比べると15%もアップしているといいます。変動金利は、低金利の恩恵を受けやすいのですが、金利が上昇すると、一気に返済額が増える危険があります。
2018年の家計調査によると世帯主が30歳代の家計負債は1,329万円。これに対して、貯蓄は631万円。負債が貯蓄の2.1倍になっています。10年前は1.3倍だったことを思うと、急拡大している訳で、住宅ローンが要因であることは明らかです。
低金利による住宅購入の若年化が、ここまで進んでいることを改めて認識しました。低金利が、結果として、早くから若者を住宅ローンでがんじがらめにし、それが社会の活力をそいでいる面もあるのです。少子化にも影響を与えていると思えます。
そして、前々から言っているように、金利が上昇に転じたときに、ぎりぎりのところで共働きで頑張っている若い世帯が、乗り越えられるか心配です。低金利がもたらした若い世帯の負債増加は、いろいろなところに波及している結構大きな問題だと思います。今後、議論が始まると思われます。
それにしても、30歳代の持ち家比率52.3%、変動金利で借りている人の割合60.3%には驚きました。若い世代の将来が心配でもあります。
image by: Shutterstock.com