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驚愕の帰国便「欠航理由」。NY在住日本人社長がネッシーを探す旅

久しぶりのひとり旅で憧れのネス湖を目指した、メルマガ『NEW YORK 摩天楼便り-マンハッタンの最前線から-by 高橋克明』の著者で、米国の邦字紙『NEW YORK ビズ!』CEOの高橋克明さん。旅行記は、機上の人となった第1弾スコットランドの「意地悪」の洗礼を受けた第2弾憧れのネス湖に「触った」第3弾に続き、いよいよ最終章です。スコットランド最大の都市グラスゴーでの穏やかな散策から急転、空港でたいへんなトラブルに遭遇し、旅の教訓を得ます。

「ネッシーを探す旅 私的スコットランド紀行」その4

ネス湖湖畔の村、ドロムナド・ロケットから最も近い鉄道の駅インヴァネスに到着したのは正午過ぎでした。次の目的地、スコットランド最大の都市グラスゴーまで行く列車の出発時間には、まだ2時間強あります。結果、中継地点としか考えていなかったインヴァネスという街を散策することに。

吸い殻やゴミも至る所に落ちていて、ガイドブックに書かれている「ハイランドで最も美しい街」というイメージは、駅周辺にはまったくありませんでした。もう少し港の方まで歩けば、また違った印象だったのかもしれません。雲がどんより曇っていたことも気持ちに影響したのだとは思います。またいつものように通り雨。

大通りをふらふらと歩く。ここもアメリカ発のブランド店が多く並び、どこにでもある地方都市の顔をしていました。民族衣装を着てバクパイプでケルト系の民族音楽を演奏しているパフォーマーもいたので、やはり観光客も少なくない街なのだと思います。

アーケードを潜り、いかにも地元の人“御用達”といった感じの商店街に入ります。ランチ真っ最中の時間帯にも関わらず、人はまばら。ふと1軒の地元のレストラン…というより大衆食堂の前を通りかかった際、窓越しに店内の様子が目に入りました。70代半ばくらいでしょうか、あきらかに地元民である雰囲気の、普段着にサンダル履いた、それでも上品な感じの老夫婦が食事をしていました。何気なく目に入った二人が食べていた生のサーモンを見て、そのまま引き寄せられるように、気づくと店内へ入っていました。

特にサーモンが好きというわけでもありません。でも、その老夫婦がふたり仲良く、まったく同じメニューを食べているのを見て、ついつい同じものを食べたくなったのでした。「同じものを」と注文しました。ガイドブックで紹介されているわけでもなく、何気なく入った商店街の地元の人が食べていた、そのサーモンは、結果、1週間のスコットランド滞在で、いちばん美味しかった

グラスゴー行きの鉄道に乗車します。驚いたのは、そう大きくない鉄道に「自転車専用車両」があること。しかも、多くの自転車をかついだ乗客が乗り込んでいたこと。車内は超満員。さすがスコットランド最大の都市グラスゴー行き。乗客の多くは4時間先の目的地まで途中下車しないのでしょう。

4時間たちっぱなしはちょっとキツイなぁと思っていたところ、斜め後ろのおばさんが僕の肩を叩き、隣の座席から荷物を降ろして「ここに座りなさい」と言ってくれました。前回、前々回と個人的なストレスで少しスコッティシュのことを批判めいたように書いてしまいましたが、もちろん多くの親切な地元スコットランド人にも助けてもらいました。(こんな超満員の車両で、荷物を座席に置くこと自体どうかしてるとは思うけれど)

4時間、窓の外の田園風景を眺めます。高い山の少ないイギリスにおいて、たぶん、この光景が世界中に散らばっているブリティッシュたちの原風景。牛も、馬も、豚も、風車も、見飽きるくらい見せられました。特にネス湖に行く観光客はこの光景を見てきたはずです。そしてネッシーファンだけでなく、この辺りはあの「ハリーポッター」ファンも世界中から訪れるのだとか。ハイランドの大自然は実際に映画の撮影で舞台になっています。ファンの巡礼ツアーも一時期、流行ったそうです。

WiFiも繋がらず、音楽も聞き飽きて、光景も見飽きて、することないので、ガイドブックを熟読します。途中、通過する駅のたびに、ガイドブックでチェックする。

ピトロッポリー(Pitlochry)って、あの夏目漱石もロンドン留学中にここでバケーションをとったくらい、イギリス人にとってヴィクトリア時代からのリゾート地なんだなぁ」とか。

「ここが、映画『ブレイブハート』でメルギブソンが演じたスコットランドの英雄ウィリアム・ウォレスの戦いの舞台となったスターリング(Stirling)なんだ」とか。

おそらく二度とくることもない、スコットランド中西部の郊外に、ちょっとだけ詳しくなっていく。そうこうしているうち、到着しましたグラスゴー駅。夕方になっていました。

予約していたホテルは駅から出て、目の前。どこにも寄らず、とりあえず荷物を降ろして、シャワーを浴びたいのでチェックインをします。レセプションでは、僕の前の中国人家族と受付のおねえさんが理由は知らないけど、大バトル中。両者一歩も引かない激論を繰り広げていました。スコットランド人のおねえさんが勝つのか、一家を代表してカタコト英語が話せる、パーマをかけた中国人のおばちゃんが勝つのか、見守るつもりもなく、ロビーのソフャに沈むように座り、待っていました。

なかなか戦いは終わりを見せず、奥から別のスタッフのお兄さんが出てきて、僕のチェックインを対応してくれました。カードキーをもらってエレベーターに乗るまで、バトルは続いていました。

部屋に入り、シャワーを浴びて、うとうと仮眠から起き上がるとすでに8時を回っていました。夜ごはんと散策に外に出る。ロビーでまだスコットランド対中国のワールドカップが続いていたら、ちょっとおもしろいかもと期待してたけど、さすがにすでに終わっていました。

ホテルを出ると、そこはもう大通りのブキャナンストリートのど真ん中。やっぱり都市部は落ち着きます。世間一般では、「田舎」の方がイメージは、とても穏やかで、人もよく、物価も安く、暮らしやすい、といったものだと思います。僕自身は、真逆のイメージを持っています。

田舎で生まれ、田舎で育ったので、田舎特有の「土着感」というか、閉鎖的で、ゴシップ好きな人たちに囲まれる「窮屈感」というか、今だに馴染めないところがあります。商売も、独占になりやすく、企業努力は都会にこそ見れるので、価格競争のない郊外は、意外と割高だったりもします。この話は長くなるので、まだ別の機会に。ただ、ネス湖の湖畔の郊外より、スコットランド最大の都市部のグラスゴーは、到着してすぐに、呼吸がしやすくなった気がしました。

舗装された道路に、世界中どこにでも見るブランドショップに、スターバックス。ダブリンの新市街も、イスタンブールの新市街も、そしてミラノも、ベルリンも、同じでした。なんなら、僕の故郷である高松の「ライオン通り」にもそっくりです。世界の都市部はもうすでに、画一化されています。

ふらっと回転寿司屋さんに入ってみる。もちろん、日本人には馴染みのないカマンベールチーズや、クルミがネタとして乗せられたにぎりもあるけれど、それはニューヨークも同じ。世界中そうです。全世界さまざまな「SUSHI」が存在する中、本物、偽物と騒いでいる日本人の方がおかしいという気持ちになってきました。

ちなみに、全世界で絶対数的にいちばん食べられている寿司ネタは「アボカド」だそうです。パーセンテージだけでいうと、メインストリーム。アボカドこそが、本物、という理屈だってもう、屁理屈じゃない。僕は苦手で食べれないけれど。

久々の(いちおうは)「日本食」なので、突拍子もないお寿司も、それはそれで美味しく感じられました。スタッフは全員、中国人かと思ったけど、ひとり日本人らしき人もいて、それには少し驚きました。それ以上に驚いたのは価格でした。美味しいとは言えないなんちゃって寿司が、銀座の高級寿司と同価格

スコットランドのサッカークラブチーム、セルティックFCのオフィシャルショップが’目に入ったので、入店するも、さすがに真緑色のTシャツとかを勢いで買ったとして、ニューヨークに戻って着ることはないだろうなぁと購入まで至らず。旅先のテンションで、服やアクセサリーを購入して、あとで後悔することは、さすがにここまで海外旅行していると、バカな僕でも気がつきます。

結局、スコットランドとは関係ない、いつもニューヨークで利用してる、御用達のロンドンのブランドのショップで、無地のTシャツだけを購入。お土産でもなんでもない。帰りの飛行機内で着る為用に、です。

40過ぎると、さすがにカットソーは無地、もしくはワンポイントしか着れなくなり、30代に購入した、まだ着れるTシャツやポロシャツは、毎回、ひとり旅に出た際に着て、現地に捨てて帰るのが、恒例事業になりました。ビンボー性なのか、そのまま捨てればいいところ、知り合いに遭遇するわけでもない旅先で、最後の「引退試合」をさせてから、ホテルのゴミ箱に捨てて帰るようにしています。もうひとつの理由は帰りの荷物がすこしでも軽くなるから。「自撮り」の趣味もない僕は、旅先ではどんな格好でも特に気にしません。

夜の街をふらふら歩く。ホームレスも少なくなく、時折マリファナの匂いも鼻につくけれど、特別、治安が悪いという感じではありませんでした。ホテルの横のパブで一杯だけビールを飲んで、ホテルに戻りました。

最終日、グラスゴー。当然、WiFiの通じるホテル。ニューヨークから、仕事上のアタマの痛いメールが4つ連続で入ってきます。そりゃそうだ。どこに逃げたところで、仕事は待ってくれない。追いかけてきます。バケーションなんて完全にこっちの都合。4つとも、結構、面倒くさい案件だけれど、なんとか即席で対応します。ニューヨーク戻ったらじっくり向き合わなきゃいけない。

経験上、仕事のストレスは仕事でしか解消できない。それが僕の結論です。バケーションで暖かいリゾート地に行ったところで、世界のどこにひとり旅で出かけたところで、人と関わるビジネスをしているのだから、解決策にはならない。ひととき忘れてゆっくりすることも性格上できない。やっぱりバケーションは「逃げ」には有効ではない。

なので、グラスゴー最大の、みどころ、中世スコットランドの宗教改革のキーになったグラスゴー大聖堂に行っても、どこかで仕事のことが頭から離れない悲しいサガ、でした。

そこから中心地ジョージスクエアを通り、グラスゴー大学まで歩きました。今回のひとり旅の最大の目的は、もちろん「いるはずのないネッシーをいないと確認すること」。で、もうひとつ無理やり、旅の目的をあげるなら、グラスゴー中心地にある「University of Glasgow(グラスゴー大学)」を見学することでした。見学といっても、特にオープンキャンパスの予定があるわけでもなく、ただ単に、そのキャンパスを歩きたかったからでした。理由は、今の僕に、まったく無関係ではないから。いや、無関係は無関係なんだけどね。

実は。メルマガ読者にだけ報告すると、今年の春から、僕は早稲田大学に通っています。通っていない、eスクール。ニューヨークにいながらにして、オンライン上で受講する、人間情報科学学科の正規の学生になりました。SNS上でも、家族以外誰にも報告していないのは、途中で挫折したらカッコ悪いから(笑)特に、社会人のeスクールは卒業率が低いのが現状です。慶應大学の社会人コースは卒業率が6%未満なのだとか(聞いた話です、確かではない)、それに比べ、入学自体に多少の倍率が発生する早稲田は卒業率、60%。慶応に比べれば高いけれど、それでも半分弱は途中で断念します。

普通の二十歳そこそこの学生くんに比べて、社会で揉まれ、それでも学位をとろうと決意した成人した大人でも半分弱は続きません。僕は僕なんかを信じていないので、挫折する可能性も全然あると思い、その時恥ずかしいから、誰にも報告していませんでした。それが今回、春学期を終えて、あまりに授業が、ディスカッションが、レポート提出が楽しく、春の単位も取れたので、入学前に比べれば、少しくらいやり遂げられそうという想いになったので、ここだけメルマガでだけ、報告します。ツイッター、フェイスブック、ブログでは、まだ無理だな。挫折する可能性もまだゼロじゃないから(笑)

今年の春には、たまたま東京出張中だったので、従来の学生くんたちに混じって、入学式まで出席しました。ここで発表した分、ますます卒業しなきゃなと思ってます。で、グラスゴー大学。あのオックスフォード、ケンブリッジとならびイギリス3大権威のひとつであるこの大学は、早稲田大学のイギリス協定校として、正規の留学先になっています。それだけなんだけど。特に、がっつり姉妹校というわけでもなく、ただグラスゴーに来たからには、少しだけキャンパスを見たかった、というだけなんだけれど。

現役時代、京都の大学を入学して半年で辞めた僕は「キャンパスライフ」というものをした経験がなく、そこにすごく憧れを感じるみたい。広大な土地のグラスゴー大学は、立てかけられたマップを見ながらでないと、すぐに迷子になってしまいそう。今年の春に入学式で出向いた早稲田大学と比べ、賑やかさもなく、緑豊かで、穏やかで、もっというなら、さみしい感じ。「大学なんだから、勉強するところだろう!」と言わんばかりの質素な趣き。さすが、中世からルネサンスにかけて創立されたアンシャ・ユニバーシティー。「古代の大学」と呼ばれるにはふさわしい重厚感です。日本の大学キャンパスのようなミーハー感、ゼロ。

キャンパスのベンチに座っていた、おそらくはインド系の学生くんに声をかけます。「敷地内に、美術館があるって聞いたんだけど」。グラスゴー大学内には、ハンタリアン・ミュージアムという有名な美術館があります。

彼は、丁寧に道案内してくれながら、途中、「じゃあ、連れて行ってあげるよ」とガイドまでしてくれました。途中の世間話で自分が提携先の「WASEDA UNIVERSITY」の学生であることを告げると、「どこ、それ?日本にあるの?」と初耳のようでした。

その後はケルヴィングローブ美術館へ。キャラにないことを言うと、実はヨーロッパの絵画コレクションを展示したアートギャラリーが大好きで、欧州の有名どころ美術館にはほぼすべて足を運んでいます。ここも何年も前から行きたかったところ。

特に油絵の知識があるわけでもなく、難しいことはわかりません。日本語音声ガイドも利用しないし、売店で売られている画集も購入することもない。ただ、あの美術館特有の匂いが好きで、おそらく湿度を保ちつつ、防腐剤の匂いなのだと思うけれど、なぜか妙に落ち着いて、現代アートじゃない限り、何時間でも絵を見ていられます。ここでも音声ガイドなしで3時間ほど滞在しました。老後はギャラリー巡りしよう、と誓いました。

大学の周辺に、学生用の安い定食屋が並ぶのは全世界共通。スコットランドの大学生に混じって、晩ごはんを済ませました。大して美味しくないイギリスの定番「フィッシュ&チップス」を。

最終日の夜だけに、ひとり街の中心地でパブ巡り。ビール一杯だけで、何軒かハシゴします。明日の朝、ニューヨークに帰ります。

早朝チェックアウトする際、買ったばかりでタグが首元についたままのTシャツを着て、受付のおねえさんに「ハサミある?」と聞きます。なんで?と言われたので、着ているTシャツの首から出ているタグを見せると、ぐいと首をひっぱられ、そのままチョキンとハサミで切ってくれました。「ニューヨークまで気をつけて」と空港までのタクシーを呼んでくれました。

空港に到着してから、家族に、社員に、友人に、お土産を何も買ってないことを思い出しました。妻はスコットランドに行ったからには当然、タータンチェックのカシミアのなにかを期待しているはず。街中の至る所で売られていましたが、1ミリもお土産で買うという行為は頭をよぎらなかった。

しょうがないので、空港内にあるスーパーマーケットで、スコッチエッグを爆買い(笑)いちおう冷凍食品だし、ニューヨークまでは8時間だし、翌日まで持つだろう、と20個近く購入しました。本場のスコッチエッグは、実はそう美味しくないだろう、と社員に配るために。

今回は結構、疲れた旅行だったなぁと搭乗ロビーでつぶやきました。もともとストレス解消のための旅にも関わらず、移動が多く、待ち時間も多く、イライラも多く、いつまでたっても、旅上級者になれないなと苦笑いしていました。確実にストレスフルな旅でした(笑)それでも、楽しくはあった。

搭乗直前で、ニューヨークの家族とスカイプで話します。ちょうど近所のブライアントパークに散歩に来ているとろこでした。4歳の双子の娘が、相方の息子に向かって、「乗らないで、乗らないで」と泣きじゃくっています。どうやら、いつもの回転木馬に乗る順番を息子が守らなかったよう。何度も何度も「乗らないで」と泣く娘を見ていると、なにか、まるで、これから搭乗する飛行機に「パパ、乗らないで」と言われているような気分になり、苦笑い。ふとそう思ってしまうと、なにやら嫌な予感がなかなかとれなくなってきます。

早くニューヨークに帰りたいと思っていたところ、時刻になっても、なかなか搭乗させてくれません。飛行機の遅れは珍しくないけれど、説明がなにもないまま、空港スタッフも慌てて、ドタバタしています。結局、搭乗時間の2時間遅れで「フライトがキャンセルになった」とだけ、アナウンス。

ええええええ。今さら?どうするの?グラスゴーからニューヨークは1日1便。ということは必然、今日はもう帰れません。どうしたらいいの?

空港全体がなにかパニックの模様。フライトキャンセル自体珍しいことではないので、どうして、地上スタッフがみんな慌てているのか理解できず、そのへんのスタッフをつかまえて、事情を聞こうにも「あとで!」と取りつく島もありません。

喫煙所で、ニューヨーカーのカップルと一緒になり、「スコットランド人、説明してくれなくね?」と彼女の方が怒ってました。「今日帰れないってことは、ホテル代は航空会社が負担してくれるはずなだよな!」と彼氏の方も興奮気味。

さっき預けたはずの荷物をまた受取所まで取りに行き、明日のフライトの予約をするのに、またカウンターに並びます。でも、予想通り、長蛇の列。そりゃそうだ。乗客も、スタッフもみんなプチパニック。空港のWiFiをつなげて、ニューヨークの自宅に電話します。妻がネット上で明日のフライトをチェックインしてくれたので、もうこの長蛇に並ぶ必要はなくなりました。ただ、ホテルのチケットを配ってくれるのならば、貰わない手はない。にしても、何時間もかかりそうなこの長蛇の列に並ぶ気にもならない。

パニックであたふたしてる女性スタッフが近くを通りかかった際に、捕まえます。もうネット上でチェックインした。ホテルを手配してくれないなら、もうここを出たいんだけど、と。すると彼女は、こっちについてきて、と長蛇の列をぶちぬいて、先頭まで僕を誘導してくれました。「彼は明日のフライトをチェックイン済み。ホテルだけ案内してあげて」とカウンターに告げてくれます。この長蛇の列の中には、僕とまったく同じ状況の人もいたはずです。ネットで航空券はすでに手配したけど、ホテルのチケットだけもらおうと思ってる人が。結局、日本以外の国では行動をするかしないかですべてが変わってきます。声を上げたか、上げなかったか。それが重要だ。

引き継いでくれたカウンターの女性に、ホテルはここから近いの?タクシーで行くなら、明日ここまで来るのに、タクシーはまた迎えに来てくれるの?そんな色々は質問に、すべて「知らない」とこれ以上ないほど冷たい目で答え。

とにかくこの旅で出会ったスコットランド人、のきなみ、無愛想でした。で、もうひとつの特徴は、全員が笑っちゃうくらい、美男美女(笑)見た目、男も女もスーパーモデルみたいwwwこのタクシーの運転手もどっからどう見てもデイビッド・ベッカムだし、さっきのカウンターまで連れて行ってくれた女性も…。

ユナイテッドエアライン162便 9:00AMのグラスゴーーニューアーク行き。僕の乗るはずだった便は、パイロットふたりが酩酊状態で乗務を試みようとし、フライト直前で当局に逮捕。世界的なニュースになりました。 ● CNN.co.jp : パイロット2人を飲酒の疑いで逮捕、米旅客機がキャンセルに 英

ベロンベロのパイロットは離陸寸前まで操縦席に座っていたそう。その日のBBCニュースでは、あのままフライトしていたら、墜落していた可能性が大きかった、と報道しました。

墜落するはずの飛行機に乗るところだった。

かつて、ロンドンとロッテルダムでHOLD UPされ、ローマでアラブの窃盗団に囲まれ、フィレンツェで目の前で建物が崩れ、ベルリンでスリに遭い、ティワナで車が半分になる事故に遭い、ハルビンで車に監禁され、ベルファストでスーパーモデルに全身ゲロ吐かれ、パリのブリューニュで野宿して、今回なにもないと思ったら、いちばんの被害に遭うとこだった。

なんだ、オレ、ツイてんじゃん。まだ、モッテんじゃん。

と思った翌日のUA。用意されたカナダ経由のERW行き。トロントでエスタがない!とわけのわからない(結果、カナダ政府の、というよりカウンターのおねえさんの)ミスで12時間、カナダの空港に監禁状態。やっぱ、ツイてねえじゃん!もう、どっちゃでもええわ(笑)

やっと解放され、カナダエアー、ニューアーク行きに乗れました。12時間もどうなるかわからない状態だったので、これ以上なく疲労し、機内で少しだけ息苦しくなります。

キャビンアテンダントのお姉さんに「水を一杯もらえない?」と聞くと、「飲み物のサービス、すぐに来るから待ってな」とひとこと。「いや、体調がよくないから、申し訳ないけどできれば、今、水を一杯だけもらえないかな」としつこく食い下がると、仕方ない感じで後ろのスタッフエリアまで、行ってくれました。不安なので見ていると案の定、同僚のCAさんと笑いながら、談笑し、そのまま水は忘れ去られました

ニューヨーカーにしても、スコティッシュにしても、カナディアンにしても、どうして日本人のようにきっちりできないんだろう。いい加減なんだろう。渡米して20年弱、ずーっと考えてきました。色々な説明ができると思います。あるいは、日本人の方が世界では稀で、少し責任感が強すぎるという意見がいちばん多いかもしれない。

でも、今回、やっとひとつの答えがでました。どうしても欲しい水を2回頼んだにも関わらず、いい加減に忘れられてしまう、その原因、答えが、です。それは僕自身が、いい加減だから。人間のカルマはよくわからないけれど、僕自身が、よく忘れるいい加減な人間。それを棚に置いて、他人に要求しても調子良すぎます。人を責める前に、自分を振り返れよ。人様に何か偉そうなことを言える人間か。長すぎる帰りの飛行機でちょっとだけ気持ちがラクになりました。

ニューアーク空港に到着して入国審査が終わると、急に呼吸がラクになりました。荷物受け取り場に行くと、妻が子供たちをベビーシッターに預けて迎えにきてくれていました。日系グロッセリーで買ってきた、めんたいこおにぎりを手渡され、ホッとしたところで、旅が終わります。(おわり)

image by: Shutterstock.com

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全米発刊邦字紙「NEWYORK BIZ」CEO 兼発行人。同時にプロインタビュアーとしてハリウッドスターをはじめ1000人のインタビュー記事を世に出す。メルマガでは毎週エキサイティングなNY生活やインタビューのウラ話などほかでは記事にできないイシューを届けてくれる。初の著書『武器は走りながら拾え!』が2019年11月11日に発売。

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【著者】 高橋克明 【月額】 初月無料!月額586円(税込) 【発行周期】 毎週水曜日

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