横浜F・マリノスが15年ぶりにJ1リーグで優勝し、柏レイソルと横浜FCのJ1昇格、松本山雅FCとジュビロ磐田のJ2降格で迎える来季のJリーグ。1月1日に新しい国立競技場で行われた天皇杯決勝は、ヴィッセル神戸が鹿島アントラーズを下して初優勝を飾りました。アジア・チャンピオンズリーグ(ACL)はここからですが、ひとまず落ち着きを見せるJリーグ。この時期の関心事といえば選手の移籍情報です。人気メルマガ『J3+ (メルマ)』では今回、有力チームだけでなく、J3チームサポの知られざる悲喜こもごもまで含めた様々な事情を紹介。熱心なJリーグウォッチャーでも「補強評価が難しい理由」も綴っています。
突如として舞い込んでくる移籍話
今シーズンの公式戦が終了してオフに突入し、Jリーグの移籍市場が活発になって来た。
朝の9時くらいから夕方の18時あたりまで続々と移籍あるいは残留のニュースが入ってくる季節になった。ほとんどのクラブは「○○時00分」に公式サイトでニュースを流すが「○○時30分」に情報を流すクラブもある。通常の移籍の場合は移籍元と移籍先の2クラブが関係するが期限付き移籍になると3クラブ以上が絡むこともある。いずれにしても「何日の何時に公式サイトで情報を流す。」というところまでクラブ間で決められているので移籍情報は同時刻にリリースされるケースがほとんどになる。(※稀にズレるケースもある)
J1の有力クラブの移籍話は事前にメディアで流れるケースが多い。例えば今オフに横浜FMへの移籍が決まったMF仙頭(京都)、FWオナイウ阿道(大分)、GK梶川(徳島)、DF前貴之(山口)の4人はいずれも事前にメディアで「移籍確実」や「移籍濃厚」や「移籍が決定的」などと報じられている。なので引き抜かれる側のチームのサポーターも受け入れる側の横浜FMのサポーターも心の準備は出来ていただろう。正式に各クラブから移籍決定のニュースが流れたときもほとんどの人は冷静に受け止めることが出来たはずである。
その一方で注目度があまり高くないクラブ間での移籍になるといきなり公式サイトに移籍確定のリリースが流れることになる。心の準備が出来ていない中で突如として発表されるパターンの移籍は引き抜かれる側にとっては精神的なダメージが大きい。当たり前の話になるが「J2のクラブからJ2のクラブへの移籍」となると事前に情報が流れないケースの方が多い。そして、「J3のクラブからJ3のクラブへの移籍」となると事前にメディア等に情報が流れるケースの方が稀である。そのほとんどは「突然の移籍」になる。
全ての移籍を正確に記憶するのは難しい
今オフに決まった移籍の中で例を出すとJ3の熊本に移籍したFW浅川(Y.S.C.C.横浜)やMF谷口海(岩手)の移籍に関してはどちらも事前の情報はなかったはずである。両選手ともチームの顔だったのでショッキングな移籍になった。チームの顔を失ったY.S.C.C.横浜や岩手のサポーターはつらい思いをすることになった。昨オフのMF加藤潤(鳥取→群馬)の移籍も事前の移籍の情報は全く流れていなかったはずである。J3の勢力図を大きく変えるだろう移籍話が突如として舞い込んでくるのでこの時期は本当に面白い。
きちんと数えたことはないがJリーグの冬の移籍市場で確定する移籍件数はレンタルバックを除くと350件~400件くらいになる。Jリーグのクラブ数は2019年は55クラブなので平均すると6件~7件くらいになる。各クラブが保有している選手の数は25名~35名くらいなので3割くらいの選手がオフ期間中に移籍をすることになる。「契約満了→移籍」のパターンもたくさんあるので望んでいない移籍も多々ある。かなりの割合を占めると思われる「Jリーガーとしては微妙な立ち位置の選手」にとっては大変な時期である。
オフ期間中は連日、たくさんの数の移籍が決定するのでそれぞれの移籍先ならびに契約内容(完全移籍なのか?期限付き移籍なのか?育成型期限付き移籍なのか?)を正確に記憶するのは大変である。まだ、記憶力は落ちていない(と思う)ので何となっているが60代や70代くらいになって記憶力が落ちてきたら面倒なことになると思う。「あれ、どうだったかな…」といちいち調べないといけない状況になると作業は進みにくくなる。いずれは老化し始めると思うが、出来る限り、その時期が遅く訪れることを期待したい。
Jリーグのクラブが関係した全ての移籍については「どうだったのか?」を評価することにしているがなかなか大変である。「素晴らしい移籍だ」と移籍直後に評価した選手がシーズンに入って全く活躍しないケースは多々ある。その一方で「そのチームに移籍をしても出場機会は望めないのでは?」と思った選手が主力に定着することも多々ある。予想以上にすぐにチームにフィットする選手もいるし、予想以上にチームにフィットするまでに時間がかかってしまう選手もいる。いい移籍なのか?否か?を評価するのは難しい。
移籍や補強を評価するのは難しい
言い訳をすると「その後に予期せぬことが起こるケースは多々ある」という点である。ありがちなのは怪我である。開幕前のキャンプ期間中に怪我をしてしまってレギュラー争いから脱落して出場機会に恵まれずに難しいシーズンになることはサッカーの世界では良くある話になるが「怪我をするのか?しないのか?」まで予想するのは不可能である。練習中や試合中に怪我をしてしまうのは仕方がない話である。怪我をするのか?怪我をしないのか?まで考慮して移籍を評価したり、活躍度合いを予想するのは無理な話になる。
また、「このチームであれば出場機会は見込めるだろう」と思って移籍が決まった直後に高評価を下したものの、その後、同じポジションの強力なライバルが加入して出場機会に恵まれずに苦労するケースもある。お金のあるクラブになると「すでにいい選手を獲得しているにもかかわらず、さらに上のレベルの選手を獲得して競争心をあおろうとするケース」もある。さらなる補強があるのか?否か?の予想はある程度は出来るがポジションが重なることは承知の上で貪欲に補強を進めるチームもいくつかある。
さらに「いい補強なのか?否か?を評価すること」と「実際にその選手が活躍するか?否か?を予想すること」は似たような系統の話ではあるが微妙に異なるということもここで改めて主張しておきたい。強いチームやいいチームや完成度の高いチームや優秀な監督が指揮をしているチームはどんな選手を連れてきても何とかしてしまう。当然、チームのスタイルに合いそうな選手を見つけてフロントは補強の話を進めているとは思うが生かしてくれる監督やチームメイトがいるか?いないか?でも選手の将来は大きく変わってくる。
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