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【裁判傍聴記】スゴイ!口から水を吐き自転車を奪い、調書を食べた被告人

映画のシーンをマネて線路へ飛び降り逃走

『今井亮一の裁判傍聴バカ一代 第1421号(2015年1月12日号)』

8日(木)にたまたま傍聴した、すっごいのをレポートしよう。

1時~12時、東京地裁528号法廷(52席、西山志帆裁判官)で「窃盗未遂、暴行、公用文書毀棄」の新件。

10時58分、被告人が…うっわ、刑務官4人に伴われて来たよっ。裁判所の職員(腕章)も2人来てる。 ※刑務官は通常2人。

被告人は、人定質問によれば20歳、無職。

痩せて、不満そうに口を尖らせ、眉も目付きも不満そう。なーんか危ない感じが漂ってる、ように見える。

昨年11月20日付けの起訴状、検察冒陳、書証の要旨告知をあわせると…。

昨年9月から、某有名保養地のホテルで住み込みのアルバイトをしたが、ケンカして措置入院。

「精神保健福祉法の知識」というサイトに、「措置入院」についてこんなことが書かれてる。

「措置入院とは、患者本人に対して行政が命令して入院させるものです。これは精神疾患のために「自傷他害の恐れ」、つまり自分自身を傷つけたり、他人を傷つけたり、何らかの迷惑・犯罪行為をする可能性が高い場合に、行政が患者に命令して、行政措置として入院を強制するものです」

10月29日、自宅療養することになり、母親と電車に乗り…。乙2号証は被告人の調書。

乙2号 「東京駅で、急に、映画に出てくる線路を走る場面を自分でやってみたくなり…」

ホームから線路へ飛び降り、駅員から逃走。

しょんなことがあったの? とネット検索してみたが、分かんなかった。

被告人は、変装のため衣服を万引きし…。

乙2号 「おなかがすき、駅弁を万引き…自転車を盗んで遠くへ行こう…カギのかかってない自転車がなく、乗ってる人から奪おうと…」

同日20時45分頃、皇居外苑(←公園の名称とかじゃなく地名)を3人の男性が歩いていた。甲2号証は、そのうち自転車を押していた男性の調書。

甲2号 「オランダ国王の車列を見ようと、ツイッター仲間と待ち合わせ、3人組で歩いていたところ…」

ウィレム・アレキサンダー・オランダ王国国王陛下及び同王妃陛下の来日なんて俺はぜんぜん知らなかったス。

甲2号 「前を歩いていた男が突然ふり返り、ブーッと口から水を…自転車を奪って逃走…」

ツイッター仲間の1人が追いかけ、自転車の後部をつかんだのかな、被告人は自転車を乗り捨てて逃走。

もう1人がさらに追いかけ、被告人の衣服をつかんだところ、被告人から顔面を殴られた。病院へ行くほどのケガではなかったんだそうだ。

翌30日、警察により「保護され逮捕」。丸の内署で、弁解録取書を破った。

甲7号証は、丸の内署、組織犯罪対策課の警察官の調書。

甲7号 「弁解録取書の内容に間違いないとのこと…署名…突然、手に取り、破ってくしゃくしゃに…」

甲8号証は、弁解録取書毀棄状況報告書。

甲8号 「一部を自分の口に入れ、まずいと言って吐き出した」

乙3号証は被告人の調書。

乙3号 「分からない単語…質問したが…きちんと答えてくれず頭にきた…反抗を示すため口に入れ…」

11時20分、情状証人として被告人の父親(黒スーツにネクタイ)を尋問。病院での診断名を問われて…。

証人  「急性一過性精神病性障害と…軽ければ薬、常に服用していればいいと…」

父親がそんな証言をしてる途中、被告人の様子がおかしくなった。激しい笑いをこらえてる? いや、泣いてる?

やがて被告人は、足を組み、傍聴席の母親のほうをキョロキョロ見た。

今度は、組んだ足の、膝に肘をつき、手を頬に当て、大きくため息をついた。

さらに、大きく背伸びするように、背を伸ばして両手を挙げ、指を頭の後ろで組み、「フー! フー!」と息を吐いた。

足を組み替え、組んだ足の先をぶらぶらさせ、ポケットに手を突っ込み、体をゆらゆら動かし、急にニヤニヤし始め、「フッ」と笑い…。

被告人席(ベンチ)の背もたれに背をあずけてのけぞる、というよりもう寝そべる姿勢になり、足を組んだ。

組んだ足をほどき、片足で床をドンドンと鳴らした。これは弁護人から制止され、やめた。ちなみに弁護人は、ときどき見かけるメガネの中年男性だ。

寝そべった姿勢のまま、上半身より足を高く上げ、何度も足を組み替えた。

やがて体を起こし、体を前へ倒してニヤニヤし、左の拳(こぶし)で自分の右肘をドンドンと音が聞こえるほど叩き…。

そんなことが10分間ほど続き、11時31分、証言台のところに被告人を座らせ、被告人質問。

弁護人 「やったこと自体は間違いないと…」

被告人 「はい」

弁護人 「何がきっかけになってそういうことをしてしまったんですか?」

被告人 「………(長~い沈黙)………黙秘権を…」

弁護人 「××県の病院を退院して、東京駅へ…」

被告人 「はい」

弁護人 「1人でいたんですか?」

被告人 「母親といっしょに」

弁護人 「お母さんといても、自分の行動は制御できなかったと…」

被告人 「黙秘権を」

弁護人 「被害者に(謝罪の)手紙を送ったのですね?」

被告人 「黙秘権」

弁護人 「調書を破ったことに関して、警察に謝罪をしましたか?」

被告人はまた「黙秘権」と言い、ため息をついて体を左右に揺らした。

弁護人 「勾留中、(医師の)先生が面会に」

被告人 「はい」

弁護人 「どういう話をしましたか?」

被告人 「黙秘権を(と言ってフーと大きくため息)」

弁護人 「釈放されたあと、どうするつもりですか?」

被告人 「黙秘権」

弁護人 「お父さん、いろいろ話してくれた、どう思いますか?」

被告人 「黙秘権を」

とうとう、弁護人が裁判官に言った。

弁護人 「すみません、ここでちょっと休廷いただいて、被告人と話をさせていただければ」

弁護人も裁判官も、この場でちょっと話をする程度のことを考えたようだ。が、傍聴席側にいた刑務官が強く言うのだった。

刑務官 「下(地下の仮監)で! 接見は下で。休廷なら下げます!」

裁判官 「うーん、分かりました。じゃいったん休廷します」

刑務官4人が被告人を取り囲み、手錠・腰縄を。傍聴人は退廷させられた、被告人の両親も。

11時48分、再開。

弁護人 「次回以降へ続行という形で…」

このまま被告人質問を続けても、「黙秘権」の連発になり、被告人の権利は──病気ゆえに──守られなくなる。

裁判官 「やむを得ないかな~と思いますので」

裁判官は最初、1月26日を提案したが、検察官が差し支え。その他の日は裁判所がダメ、弁護人がダメ…。

被告人は、被告人席に寝そべるように座り、祈るように両手をあわせ、顔に当ててる。

次回は2月13日(金)11時30分と決め、11時52分閉廷。

体を起こして、興味なさそうに両手の爪を見ていた被告人は、刑務官にうながされて立ち、再び手錠・腰縄を付けられた。

刑務官 「(被告人に)帰ろう帰ろう、行こう帰ろう」

急性一過性精神病性障害、ネットをチラ読みする限りでは、過去のショックなことが原因で、脳の働きに変調をきたす…らしい。

そんな重い病気でもないのかな、被告人はそれなりに学歴があり、有名保養地のホテルでは1カ月ほど働いてたようだし。

俺の認識としては、内臓が病気になるように、脳も病気になるんであって…。

脳の病気はびっくりな言動になって顕れるため、周囲は仰天するけれども、内臓の病気と同じようにそれなりに薬もあり…。

ただ、問題は、内臓の病気と違って、病識(自分が病気であるという認識)を持たず治療を拒否することが多いってことか。定期検診とかもないし。

今回の事件、被告人は次回までに投薬治療を受け、人が変わったようになって普通に被告人が行われるかもしれない。

そうなれば、2月13日(金)は結審までいくかも。見届けたい。

やっかいなのは、病気ではなく、人格の偏りが度を超えた“パーソナリティ障害”かなと思うんだけど、まだよく分かんないです。

関係ないけど、今回の事件の逮捕は10月30日。起訴は11月20日。第1回公判は1月8日。

速やかに検察送致され、20日間勾留されて起訴、それから1カ月半ちょいで公判廷へ出てきたわけだ、ふむふむ。

 

『今井亮一の裁判傍聴バカ一代 第1421号(2015年1月12日号)』
著者/今井亮一
交通違反専門のジャーナリストとして雑誌、書籍、新聞、ラジオ、テレビ等にコメント&執筆。駐車監視員資格者。著書は20数冊。ほぼ毎日裁判所へ通い、空いた時間に警察庁、警視庁、東京地検などで行政文書の開示請求。
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