年齢を重ねるごとに増えてくるのが冠婚葬祭への出席。そこで必要となるのがフォーマルなスーツですが、なかなか袖を通す機会も多くないため、何を選べば良いのか、どうやって着こなすのかわからないという人は多いのではないでしょうか?そんなスーツのいろはを教えてくれるのは、週刊誌記者・CNN本社勤務ディレクター・大手ネットメディアプロデューサーなどを経て、現在はエッセイストやBAR評論家として活躍するたまさぶろさん。ファッションにも精通するたまさぶろさんが、自身のメルマガ『たまさぶろの人生遊記』の中でフォーマルスーツの種類や選び方、着こなしまでわかりやすくレクチャーしてくれます。
フォーマルスーツとは? ビジネススーツとの違いや正しい選び方を知ろう
意外なことに「スーツ=フォーマル」と思い込んでいらっしゃる方も多いのではないでしょうか。残念ながら、単に「スーツ」を着ただけでは、フォーマルとは呼べません。式典やパーティの招待状に「平服でお越しください」という文言を見かけると思われます。それでも常識的には、ビジネススーツぐらいの出で立ちで出席しますよね。つまり、ビジネススーツは「平服」なのです。「平服で…」という招待状の意味は「正装でなくても構いません」という意味。つまり「フォーマルではありませんよ」というメッセージなのです。
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ひと言で「スーツ」と呼んでも、そこには階層があります。その階層の最上位に位置するのが「フォーマルスーツ」。では、フォーマルスーツとは、いったいどのような出で立ちなのか。この項で解説して行きましょう。
1. フォーマルスーツの定義
それでは、そもそも「フォーマルスーツ」とはどのようなものでしょうか。簡単に言えば、表彰式、授賞式、結婚式など、いわば「ハレ」の日の式典に出席する際に着用する正装のことです。日本では冠婚葬祭で着用するとされますが、突然の不幸などでの出席は正装でなくとも許されるケースが多く見受けられます。
では、ふだんのスーツとはいったい何が違うのでしょうか。男性の場合、明らかな基準は色です。色は必ず黒、つまり「ブラック」となります。ダークブルーやダークグレーではありません。漆黒の黒です。
ヨーロッパなどでパーティなどに(ホームパーティではありませんよ)招待される予定がある方は、渡航前にしっかりチェックしておくと良いでしょう。ヨーロッパでは「出席はブラック・タイで」という注意書きがされているケースも見受けられます。ブラック・タイに合うスーツと言えば、フォーマルなブラックのスーツです。逆にフォルムが多少カジュアルでも、ブラック・タイとブラック・スーツにホワイトのシャツであれば、フォーマルと見なされます。
映画『メイ・イン・ブラック』シリーズをご存知の方も多いと思われますが、あの出で立ちは正装。「メン・イン・ブラック」は正装の男性を指すわけです。
2. ビジネススーツとフォーマルスーツの違い
男性の場合、フォーマルはブラックと決まっています。結婚式などでは近年、新郎がホワイトのタキシードや柄のタキシードなどの着用が流行っているようですし、正装が必要な式典にちょっとしたおしゃれなデザインを着こなす奇抜な主賓がいることも目にしますが、あくまでブラックです。和装で言えば、紋付袴は黒であるように、やはり正装はブラックです。
このブラックも、まさに漆黒と表現してよく、時として光沢を持つ上質な仕立てであること見受けられます。ビジネススーツとの違いは明らかで、リクルートスーツなどの専門店で少々黒系のスーツなどを眺め、その生地を実際に「フォーマル」として売られているスーツと比べてみれば一目瞭然です。
生地にも差があります。日常使いが目的のビジネススーツは素材もカジュアルで、ポリエステル系の素材が使用されることさえありますので、質感が異なります。また「仕立て」に関しても、比較的大量に作られるスーツと、ともすればハンドメイドとなっているフォーマルでは、その仕上がりにもおのずと差が出ます。
また、正対するとフォーマルスーツの襟は「ピークドラペル」となっているのに対し、ビジネススーツは「ノッチドラペル」となっています。ジャケットを正面から見ると、そんな違いで明らかになります。
3. フォーマルスーツの種類
フォーマルは「正装」というだけに、やはり階層があります。単純にわけると最上位から、「正礼装」「準礼装」「略礼装」となります。これは式などでの立場やTPO (Time, Place and Occasion)に分けて着用することになります。男性たるもの、普段はTシャツにデニムでも、こうしたハレの舞台ではしっかり装いを改めたいものです。
3-1正礼装
フォーマルの中でも最上位となる「正礼装」についてです。普段、あまり議論される機会はありませんが、正礼装はデイタイムとナイトタイムで使い分けるのがスタンダードと言われております。
デイタイムの正礼装は「モーニングコート」です。いわゆる通称「モーニング」と呼ばれるスタイルで、上着の後部が長めに仕立てられており、スラックスはグレーのストライプが基本とされています。いわゆる「式典」などはデイタイムに開催されるケースが多いため、公式行事などでよく見かけます。
これがナイトタイムには「イブニングコート」となります。男性のフォーマルとしては最上位となるのが、この「イブニング」。英語でも「スワローテイル」の別名があり、日本語でも「燕尾服」と形容されることもしばしば。
かつては、シンプルに「テイルコート」と呼ばれるようになりましたが、やがてフロントを閉じない仕立てに変化し、現在のイブニングコートとなります。「モーニング」との大きな違いは、白いボウタイを着用する点。
もっともイブニングを纏うとなると、それ相応の格式高い式に招待されることが前提。オーケストラの指揮者が着用しているように、一般のサラリーマンなどが身につける機会はそう多くはありませんが、知識としておさえておきましょう。
3-2 準礼装
準礼装もデイタイムとナイトタイムにわけられます。デイタイムは「ディレクターズスーツ」が活躍します。
ディレクターズスーツは、結婚式などでスピーチを担当するなど来賓が着用するケースが多いようです。ブラックジャケットにグレーベスト、コールスラックスが基本スタイルです。もともとは、主にヨーロッパで、経営陣、取締役などが執務着として好んで使用しました。よってその地位を示す「ディレクター(director)」から、この呼び名が定着しました。
略礼装となるブラックスーツのジャケットとモーニングのスラックスを組み合わせ、このスタイルとするケースも散見されます。
ナイトタイムの正装は「タキシード」。立食のディナー・パーティなどで活躍します。映画『007』シリーズでは、ひと作品に一度はジェームズ・ボンドが着ているイメージがありますね。ブラックタイまたはブラックのボウタイをあわせるのが基本となり、ブラックとホワイトのモノトーンでまとめるのがシックとされます。
タキシードは、格式ある式典に主賓として招待されない限り、正礼装の代用として用いてもしても場違いにはならず、汎用性も高いため、成人男性という自覚がある方なら、いざという時のために一着は用意しておくべきアイテムと言えるでしょう。
3-3 略礼装
ちょっとした余談ですが、これまでご紹介した礼装の際は、移動手段なども少し頭に入れておきたいものです。モーニングやタキシードを着たまま山手線に乗り込んでいる方はなかなか見かけません。どうしても電車などの公共交通機関で移動しなければならない場合は、会場のドレッシング・ルームなどで着替える算段なども想定しておきましょう。
そんな中、公共交通機関での移動も許容されるフォーマルの中では、もっともカジュアルな出で立ちが「略礼装」です。結婚式、披露宴などに招待された一般的ゲストが着用するスタイルです。おそらく社会人としてデビューされた方なら、最初に手に入れるフォーマルが、略礼装のブラックスーツであるケースは多いでしょう。
「フォーマルを身にまとうのは初めて」というビギナーにとっても、いわゆるビジネススーツと比較して、アイテム的にもほとんど変化なく、違和感なく着こなすことができるはずです。
結婚式などのビジネススーツで現れても笑い者にされることはありませんが、「あの方、フォーマルも持ってないのか」とレッテルをはられることは避けられません。まだ手に入れてないビジネスマンはご一考を進めます。
4. 結婚式での着こなしの注意点
結婚式、披露宴などの着こなしで注意しなければならない点は、まずは日本のタブーです。本人がいくら「お洒落」と意気込んでみても、周囲を不快にするような奇抜なファッションは後々まで笑いものにされるケースもありますので、留意しましょう。
4-1 立場によってスーツの種類を選ぶ
招待された結婚式や披露宴では、自身のステータスをしっかり認識しておきたいものです。披露宴における「席次」は、大いに参考になります。ひな壇に位置する新郎新婦に近い順にステータスは上位になり、主賓、上司など仕事関係者、友人代表を含む友人、親族、家族と決められています。
上記にある正装を席次に当てはめてみましょう。新郎新婦の父親などが正礼装にあたるモーニングが多いでしょう。また、主賓はディレクターズスーツ。夜の会なら、主賓や上司がタキシードである場合もあります。
このように出で立ちは式でのステータスを表していますから、会場に姿を見せただけで周囲は「あの方は今日、スピーチを依頼されているのだろう」と考えます。よって大の親友の結婚式だからと言って、主賓なみのドレスアップは笑い者となりかねませんので、ご留意のほどを。
招待者より特に事前の知らせなどもなければ、略礼装のブラックススーツが無難と言えます。このためにも、ブラックスーツを礼服として一着は必要となってきます。もっとも「友人代表」としてスピーチされる場合は、ジャケットにコサージュをつけられるようなケースもあるので、あらかじめ見劣りしないかっちりしたスーツで挑みたいものです。
「ハレの日」の代表格である結婚式、楽しい酒席でもあるのですが、羽目を外さず、装い同様、シックさを見せつけたいところです。
4-2 シャツ
艶やかな結婚式とは言え、フォーマルな場、シャツは無地ホワイトの一択です。
ホワイトだろうとストライプなどは場違いです。また、どうしてもワードローブにありがちなので、身につけてしまいそうなのだが、ボタンダウン・シャツ。たとえホワイトシャツだとしても、ボタンダウンはカジュアルウェアの位置づけとなりふさわしくありません。
日本では「ジューン・ブライド」などと6月の梅雨の時期の結婚式も多く、盛夏には辛い点でもあるのですが、半袖もNGとなります。「ジャケットを着ているので」と油断しがちですが、ジャケットの袖から覗くシャツの袖も、意外に着目されているものです。
4-3 ネクタイ
フォーマルについては「ブラック」と申し上げておりますが、こと結婚式ばかりは、ご存知の通りブラックタイはNG。日本では不幸の際に着用する習わしが根付いており、祝の席ではNGです。ただし、タキシードについてはこの限りではありません。
また、結婚式、披露宴はあくまで新郎新婦が主役。艶やかな色使い、大柄なペイントなど奇抜なネクタイは「目立たない」という意味でも着用を避けましょう。
基本はシルバーグレーやホワイトシルバーのような式にふさわしいタイを用意しましょう。おめでたい席の象徴的な色柄なので、慣れて来ると、このタイを準備しただけで、出席者として気分が高揚するものです。
4-4 靴
靴はネクタイと異なり、ブラックの一択です。フォルムとしても、プレーントウ、ストレートチップとスタンダードこそが最強と理解してください。また、紐付きのほうがよりフォーマルと捉えられています。ディレクターズ・ジャケットなどとは異なり、あまりにもスタンダードがゆえに、結婚式など以外でも必ず必要になりますから、ブラックスーツと同様、社会人の必須アイテムです。
さらにスーツとは異なり、年齢を重ねてもサイズが変わって行くことはありません。初ボーナスでちょっとした上質な靴を用意しておくなども、ひとつのアイデアです。
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4-5 その他の小物
タイピンやカフスは必ずしも身に着けなくてはならないわけではありません。こうした公式の場に出席するたびに、お気に入りのアクセサリーを追加して行けば、装いもグレードアップ。侮ってはいけないのが、ポケットチーフ。麻またはシルクの白無地で、スリーピークスで挿すのが常識です。ベルトもシンプルなブラックで決めましょう。
落とし穴はソックス。足を組んだ際も素肌が見えない程度のブラックのソックスを。ローカットはフォーマルではありません。
5. 喪服としての着こなしの注意点
喪服について、もっとも留意しなければならない点は、「華美にならない」の一点に尽きます。まず、お通夜、告別式ともに同様ですが、「呼ばれて嬉しい」場ではありません。歓迎されるべき場でないにもかかわらず、あまりにも凝った出で立ちで現れるのは、「不幸を待ち受けていた」とも受け取られかねません。
5-1 立場によってスールの種類を選ぶ
これまでに記した通り、フォーマル、「公式」の場の装いでありながら、これまでとは一転、めでたい席ではありません。どの立場においても、シンプルである点を心得たいものです。
基本的にはブラックやグレーのできるだけ目立たないスーツの着用が無難です。喪主や親族ではない弔問側であるなら、シンプルなブラックスーツにブラックタイで十分です。さらに注意するのであれば、流行り廃りに流されないスタンダードなフォルムのスーツならより問題はありません。
ビジネスマンとして役職者となって来ますと、社会的立場もあり、ダブルのブラックスーツを喪服の代表格として着用される方も多いようです。若くとも社内でそれなりの役職を与えられている方は、ダブルのスーツを考慮してもよろしいでしょう。ただ、時代の変化もあり、「ダブルよりもシングル」という方も多くなりました。
ビジネスマンとしてある程度の立場となると、いつ何時、取引先などの不幸を耳にするかわからないという観点から、ブラックタイやブラックシューズを職場に常備している役職者も多いようです。冠婚葬祭のうち、不幸以外はあらかじめ日程を知らされているケースが多く、それにむけての段取りにも余念がありませんが、こと不幸となると突然の訃報もあり、あらかじめ心得てべきかもしれません。
もっとも突然の不幸であるがゆえに、必ずしもフォーマルでなければ「許されない」わけではありません。「訃報にまずは駆けつけた」という状況もありえます。あまり華美なビジネススーツでなければ、ブラックタイを着用することで代用も可能です。
建築業などの業種によっては現場から作業着のまま駆けつけるような方も見受けられます。最後のお別れになりますから、まずは追悼の意を体現することがもっとも重要かもしれません。
なお、喪主に限っては葬儀の際、モーニングを着用するなど格式を重んじるケースもあります。必ずしも必要ではありません。
また弔事を担当される場合は、ビジネススーツではなく、フォーマルなブラックスーツで望みたいという点だけは心得ておきたいものです。
5-2 シャツ
男性のシャツは、ホワイトです。こうした時のためにも、男性としてスタンダードなホワイトシャツはマストアイテムです。もちろん、ホワイトであってもドレスシャツなどは避けてください。また、ボタンダウンもオススメはしませんが、突然の出来事ゆえ、許されないというほどではありません。
さらにストライプなどの柄物もできるだけ避けたい機会ではありますが、ビジネススーツで駆けつけなければならない状況も想定されますので、あまりにも華美なコーデでない限り、目くじらを立てられることもありません。
5-3 ネクタイ
ネクタイはブラックタイです。盛夏であろうとクールビズであろうと、不幸の際にブラックスーツも含め、ブラックタイ着用がマナーです。できるだけ光沢のあるものは避け、無地のブラックタイを用意しましょう。
時間に限りがあり、ビジネススーツで駆けつける際なども、できればブラックタイだけは調達したいものです。前述した通り、ビジネスマンでもある程度の役職者になると職場に準備している方もいらっしゃいます。気のおけない上司なら、お借りできるかもしれません。
また、紳士服量販店では「通夜、葬儀セット」として販売しているケースも多く、駅のキヨスク、駅構内のコンビニで入手できることもあります。万が一の場合は探してみることをオススメします。
5-4 靴
靴もブラック一択です。フォーマルの常識として結婚式と同様、プレーントウ、ストレートチップとスタンダードが好ましいです。紐付きのほうがよりフォーマルと捉えられていますが、ここでは紐なしでも問題ありません。ソックスもローカットではないブラックです。ダークネイビーなどでごまかさず、しっかり無地のブラックを用意しましょう。
結婚式でも紹介した通り、ブラックのプレーンは靴としてあまりにも定番。社会人の必須アイテムとして、しっかり選びぬき、常備したいものです。
やはり補足しますが、ビジネススーツで駆けつけた…という方は、この限りではありません。会社帰りの通夜で靴を新調するというのもままなりません。華美なものでない限りは、非常識と受け取られることもありません。
5-5その他の小物
不幸に向け用意しておきたい小物に、香典袋、数珠、無地のホワイトのハンカチがあります。日本の場合、宗教上の理由がない限りお別れの会は仏式のケースが多いため、数珠を手にすることで死者を悼む気持ちの現れとなります。
また、お香典を直に鞄やジャケットのポケットから出すよりも、香典袋を開いてお渡しするのをエチケットと見る向きもありますので、準備しておきたいもの。ハンカチはプレーンのホワイト。タオル地のものは避けたいですね。
ある程度の年齢、地位になると、ネクタイを含めた小物類はセットで準備しておくと、いざという時に慌てないものです。ブラックタイ、ブラックのソックス、香典袋、数珠はセットにし所定の場所に常備しておくと良いでしょう。アクセサリーなどは基本的に外すもので不要です。
6. フォーマルスーツ選びでこだわりたいポイント
ふだんの出で立ちがカジュアルでも、ふだんのスーツがお洒落でも、評価が一変するのが、フォーマルスーツでの装い。日頃、よれよれのTシャツで仕事に奔走していても、公式の場でバシッとフォーマルを着こなすと、一気に評価が上がります。それが社会人として「フォーマル」の意味でもあります。
日頃からお洒落気取りでありながら、フォーマルスーツが着こなせない方は、評価ガタ落ち…となりますので十二分に気を払いたいポイントです。
ここではフォーマル選びに欠かせない、色、サイズ、生地について述べます。
6-1 黒の濃さにこだわる
冒頭にも記した通り、ビジネススーツとフォーマルスーツの色は同じブラックでも比較するとだいぶ色合いが異なります。フォーマルスーツの中でも、もっとも凝りたい点はまさにその色合い。「漆黒」に近いほど、フォーマルの価値があがるとさえ考えられます。
キリスト教では「聖書以前の漆黒」という意味合いで、時として「バイブル・ブラック」と表現されるのですが、まさに余分な色彩に邪魔されないブラックこそがフォーマルの美意識を体現し、その品格を問うています。
後述する生地とも関連して来ますが、選ぶ生地によってブラックの質感も異なります。フォーマルを調達に訪れると、仕立て屋さんがさまざまな生地を見せてくれますので、ぜひ自身の趣味に合った色合いを吟味してください。フォーマルスーツが自身のワードローブにあると、そこだけ引き締まったブラックの品格が異彩を放つことになるでしょう。
6-2 生地にこだわる
よほどの着道楽でない限り、フォーマルスートを何着も仕立てる…ということはあまりありません。特にまだ社会人になりたてともなると、それほど懐の余裕もないでしょう。だからこそ、作り込むスーツの生地には凝ってみたいものです。
普段のビジネススーツとの違いは、ワンシーズン着たらくたびれてしまうような生地では困るという点。一年のうちのそう何度も何度も登場シーンがあるとは思えませんが、まずは通年着用しても違和感のない生地であり、また数年の使用にしっかり耐久できる程度の丈夫な生地である点も重要です。
もっともスタンダードな生地はウール。夜の会などを想定すると、こちらにシルクが混じった生地は光沢と高級感を演出してくれます。また、耐久性と価格を睨むと、混ポリエステルも選択肢となります。
色の項目でも述べましたが、生地によってブラックの色合いももちろん異なります。自身の好みの漆黒を選ぶと、そのまま生地も決まってしまう…というケースもありますので、色合いと生地を吟味し、自身の好みにピッタリの一着を仕立てたいものです。
6-3 サイズにこだわる
日常使いするビジネススーツとは異なり、フォーマルスーツはサイズ感も非常に気を使う点です。近年のスーツは、比較的スリムなシルエットを好む傾向にありますが、やはり数年は着こなす必要を考慮し、余裕があるサイズ感で仕立てたいものです。
このサイズ感は、もちろんスーツのシルエットにもかかわるので非常に重要なポイントです。どうしてもフォーマルな会場では、男性ほぼ全員がブラックを着用しているため、スーツのシルエットで差別化されることになり、またカラーの仕立てなどもポイントになります。
また、体型も年齢によって変化して来るため、若いうちはスリムシルエットで自分らしさを演出、ある程度の年齢になったらスタンダードを選ぶという戦略もありそうです。スタンダードをメインにウエストにアジャスターを装備したフォーマルも多いので、自身の体型維持に自信のない方(失礼!?)は、あらかじめこちらを選択するという手段もあります。
7. まとめ
フォーマルスーツは、男性としての価値を判断されかねない最重要アイテムとして過言ではありません。ハレの日しかり、不幸の際もしかり、人生の転機となる舞台において、フォーマルをしっかり着こなせるかどうか、男を上げもし、下げもします。
有名店を選ぶという手段もありますが、無名店でもテイラーとしてしっかり向き合ってくれる店を見抜けるかどうかも、フォーマルスーツを仕立てる際のひとつの試金石です。
時間が許す折、じっくりといくつか店をまわり、自身に寄り添うアドバイスを与えくれるテイラーを見つけ出したいものです。お気に入りのフォーマルを仕立てると、ついつい公式の場にでかけたくなるものです。
ただし、スーツだけで行動が伴わないようでは困りもの。「馬子にも衣装」などと揶揄されぬよう、男性としてのクオリティ向上にもぬかりがないよう務めましょう。
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