社会問題となった「あおり運転」において、「あおり」行為に及んでしまうきっかけの一つに、前を走る車のノロノロ運転があります。「のろい」ことに怒りの感情が湧いてしまうのはなぜなのでしょうか。無料メルマガ『子育て相談室便り(非行 不登校 引きこもり)』の著者で、引きこもり不登校の子供を持つ母親を支援している「ラカン精神科学研究所」を主宰する登張豊実(とばりとよみ)さんは、子ども時代に親から「早く、早く」と急き立てられたことによる「切迫感」が大きく影響していると分析。切迫感は強迫観念を生み、強迫神経症の原因にもなると、伝えています。
子ども時代の母の「早く、早く」が大人になってあおり運転に繋がる
昨今、ニュースでよく耳にする『あおり運転』。
『あおり運転』の元にある性格は、子ども時代によく聞いた親の「早く、早く」の言葉からつくられます。
「早く、早く」は急き立てによる切迫感。「早くしないと学校に遅れる」、「早く食べなさい」、「早くお風呂に入りなさい」「早く寝なさい」…。
このように母はいつも「早く、早く」とあおっていました。
すると、「のろい」という文字が発生します。のろく走る車を見ると、かつて自分を急き立てた母になってしまう。
急き立てられていた主体が、一瞬にして急き立てていた母に入れ替わって、あおってしまう。
この切迫感は切迫流産にも繋がります。
すべては文字、言語です。どの言葉が自分を引っ張り、導いていくか。
親の急き立てが、後に子どもの強迫神経症に至る
「早く!早く!」と急き立てられて、いつも追い立てられていると感じる、この『切迫感』が強迫観念をつくります。
後ろから追い立てられると『早くしなければ』と焦り、自分のペースを維持できず、乱されてしまいます。
ここで強迫観念が生まれ、これが固定化すると強迫行為になっていきます。
強迫行為の代表的なものがきれい・汚いにこだわる、清潔恐怖症です。
手を洗ってもきれいになったと思えず、何度でも洗い続ける人がいます。
image by: shutterstock.com
そして、鍵を閉めた・閉めないの確認強迫があります。
一応の目安として、鍵を閉めたかどうかの確認のために4回以上ドアノブを引っ張ると病理と診断します。ドアノブを壊す人もいます。
ガスの元栓の確認に時間がかかるのも同じです。
「早く!早く!」と急き立てられる切迫感は、“早く”と“のろい”の対立です。
自分はのろいと思っている人には、いつも「早く」の声が聞こえています。
清潔恐怖症は、手を洗ってきれいになったと思っても、「汚い」の声が聞こえます。
この声が自分の中で聞こえてやかましいが、振り払えない事が病理です。
また、きれい・汚い、閉めた・閉めないにこだわり、囚われて、無意味な思考・行為を繰り返し、やめたいけれどやめられない。
ここには何の蓄積もなく、充実感もありません。
心の空洞化と、虚しさだけがあり、虚しいとわかっていながらやめられず繰り返すので、余計に虚しく、疲れ果ててしまいます。
これを強迫神経症といいます。
今ここに生き、心と身体を一致させる
強迫神経症の人達には“今ここに生きる”がありません。
いつも切迫感で追い立てられているために、“今”がなく、“今を味わう”ことができません。
現実感覚がありません。
“今ここに”を味わうことができるようになることです。
そのために、「ねばならぬ」を捨て、現実を認識できるように、自分が今していることを言葉にして言いながら行動します。
味わうことの訓練として、舌でよく食物を味わうのもいいでしょう。
image by: shutterstock.com
今、美味しいものを食べて、またはリラックスして、好きなことに興じて、体が喜んでいると感じられる。
この体の喜びは心の喜びになります。
(大澤秀行氏の著書『交通事故と無意識』より一部引用)
image by: Shutterstock.com