毎回さまざまな裁判を傍聴し、事件の知られざる裏側を紹介してくれる、メルマガ『今井亮一の裁判傍聴バカ一代』。今回はある「住居侵入、窃盗」裁判の傍聴記録。若い男性が女性宅へ侵入し、携帯電話やマイナンバーカードを盗んだというこの事件、しかし、それだけではなく、ある驚くべき行動を取ったんだとか。それは一体何だったのでしょうか?
女性宅へ侵入し下着を窃盗、その後に…
8月某日、東京簡裁・刑事2室2係(廣海賢治裁判官)、728号
被告人は非身柄。スタンドカラーの白い長袖オーバーシャツ、黒ズ
検察官が起訴状を読み上げた。
検察官「被告人は、窃盗の目的で、令和2年…午後6時20分頃か
ああ、金品狙いの空き巣なのだ。下着盗なら「女性の下着を窃取す
検察官「…携帯電話1台等5点、時価合計5万2200円相当を窃
ところが本件は単なる空き巣狙いではなかった。「等5点」の中に
半年ほど前、アパートの外で煙草を吸っていた被告人は、同じアパ
ある深夜、被告人はその女性の部屋のドアノブを回してみた。施錠
数日後、女性が外出したのに気づき、またドアノブを回してみた。
黒いパンツを見ながら自慰行為をし、射精した。
精液の付いたパンツを見たらどんな反応をするか、考えたら興奮し
ところがそれは別の部屋のドアだった。結局、警察へ届けられ、D
過去に同種犯行をやっているのか?と思うでしょ。だが被告人は前
甲3号証は被害女性の調書。
甲3号「午後6時20分頃、買い物へ…錠をかけ忘れた…午後6時
隣の部屋の郵便受けに自分の下着を発見したようだ。捜査が終わっ
検察官の立証が終わり、次は弁護人の番だ。
弁護人の情状立証は、被告人の母親の上申書のみ。あれっ、母親は
そして被告人質問が始まった。こんな部分があった。
弁護人「(被害女性と)一度も話をしたことがないのですか?」
被告人「してません」
弁護人「なぜ」
被告人「突然話しかけても迷惑…変な人と思われるので…」
部屋に侵入して下着を盗み、自慰行為をして精液をかけ…そっちの
小心な者は、というか小心な者ほど、自分だとバレなければ、つま
弁護人からの主質問は、普通にありきたりに(※)6分間で終わっ
検察官と裁判官は合計10分間かけた。よくある性嗜好障害が疑わ
私は違和感を覚えた。前歴2件が女性下着の万引き、という話は出
本件は、いわゆる規範意識の薄さ、また、これをやったらどうなる
性嗜好障害の者が次々再犯して法廷へ出てくる、それをよく知って
求刑は懲役1年6月。判決は翌々週と決め、36分間ほどで閉廷。
被告人の母親かと私が思った女性は、被告人を待たずにさっさと法
この夏休み、「コロナで帰省も行楽もできないのでちらっと裁判所
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