米大統領選挙、バイデン氏が勝利。瞬く間に消えたトランプの「赤い蜃気楼(レッドミラージュ)」
現地時間3日に行われたアメリカ大統領選挙。現職で共和党のドナルド・トランプ候補の一方的な「勝利宣言」会見から4日後の日本時間8日未明、民主党のジョー・バイデン候補は、米ペンシルベニア州とネバダ州で勝利し、選挙人が過半数の270人を超え290人となった。これで、バイデン氏の当選が確定した。

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トランプ氏は4日の一方的な「勝利宣言」会見で、郵便投票などの集計が終わっていない残りの票について「集計をやめさせる」などと発言していたが、まさにその「残りの票」によって、再選は幻となった。
今回の結果を不服として現在、トランプ陣営は激戦の州で複数の訴訟を起こしている。また、全米各地ではトランプ支持者による抗議の暴動などが予想されており、しばらく混乱が続く可能性が高いようだ。
トランプ氏は同7日午前、ツイッターで「大統領を奪取したと宣言すべきではない。私も主張出来るのだから。訴訟の手続きは始まったばかりだ」と投稿し、バイデン氏の「勝利宣言」をけん制していたばかり。
Joe Biden should not wrongfully claim the office of the President. I could make that claim also. Legal proceedings are just now beginning!
— Donald J. Trump (@realDonaldTrump) November 6, 2020
またAFP通信によると、今回の当選を受け、トランプ氏は「早まって勝者を装ってる」と声明を出した。
全米を覆った「赤い蜃気楼」はなぜ発生したのか?
トランプ氏は大票田のフロリダ州、テキサス州などの激戦州で勝利していたが、選挙前から懸念されていた「赤い蜃気楼(レッドミラージュ)」が現実となった。
囁かれていた「赤い蜃気楼(レッドミラージュ)」とは、以下のような現象だ。
期日前投票分(バイデン氏の支持者が多い)の開票(※州によって開票が遅く、投票日以降に開票の所も)→
選挙当日に投票所へ直接投票した分(トランプ支持者が多い)の開票→
郵便投票による投票分(バイデン氏の支持者が多い)の開票→
と、開票は以上のように進んでいるが、この過程で投票所へ出向いて直接投票した人にトランプ支持者が多く、その結果、投票日の直後は「トランプ優勢」の数字となる。
一時は共和党のシンボルカラー「赤」が全米を覆い尽くすことになるが、これが郵便投票の開票結果によってほどなく「青」に変わるため、時間が経つと消える「蜃気楼」になぞらえて、「赤い蜃気楼(レッドミラージュ)」と呼ばれていた。
この現象が起きた原因は、各候補とその支持者の「新型コロナウイルス」に対する考え方の違いから来ているようだ。
バイデンとトランプ、「コロナ」対策の違いが生んだ選挙結果の時差
新型コロナの対策についての考え方は、両者「正反対」だ。
トランプ氏は自身が新型コロナに感染したにも関わらず、「経済優先」を前面に押し出しており、マスクを軽視するなど新型コロナ対策に慎重さは窺えない。そして、トランプ支持者の多くも同様の考えを持っている可能性が高いと思われる。
一方のバイデン氏は、新型コロナに対して慎重な姿勢を示しており、その支持者も新型コロナの感染を警戒している層が多いようだ。そのため、バイデン氏の支持者は期日前投票、あるいは郵便投票によって、投票所での感染リスクを回避した人が多かったと思われる。
つまり、この投票行動の「差」が、そのまま開票結果の「時差」となってあらわれ、「赤い蜃気楼」を発生させたということになる。
おそらく、この「時差」についてはトランプ陣営も折り込み済みだったのだろう。だから日本時間4日の早い段階で一方的な「勝利宣言」の会見をし、郵便投票分を「無効だ」と主張して開票を妨害するために複数の訴訟を起こしたに違いない。しかし、民主主義国家アメリカが大統領の感情によって投票結果を無効化するようなことがあってはならないだろう。
いくつもの「赤い蜃気楼」が晴れて「青空」が見え始めた今、トランプ氏の訴えがどこまで認められるのかは定かではないが、そろそろ赤でもなく青でもない「白い旗」を素直に振るべき時がやってきたのではないだろうか。
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