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笑う中国。往生際の悪いトランプ煽動で「第二次南北戦争」勃発か?

未だ混乱は続いているとはいえ、バイデン氏の当選がほぼ確実となったアメリカ大統領選。しかしながらトランプ大統領に煽られた支持者たちによる暴動の可能性も囁かれており、予断を許さぬ状況となっています。この先アメリカ社会は、そして世界はどのような方向に進んでゆくのでしょうか。今回のメルマガ『国際戦略コラム有料版』では著者で日本国際戦略問題研究所長の津田慶治さんが、バイデン大統領就任後の米国や世界をさまざまな側面から分析・予測するとともに、日本が世界に対して果たすべき役割についても考察しています。

米バイデン政権の展望

11月3日の米国大統領選挙は混とんとしている。バイデン氏の当選が確定しても、トランプ大統領は法廷闘争に持ち込み抵抗するという。今後を検討しよう。

米国および世界の状況

NYダウは、週間で1,822ドルも上昇した。大統領選挙混乱で10年国債の金利が上昇していたが低下し、金価格も上昇している。一部の投資家はリスクオフに動いているが、多勢はリスクオンを維持しているようである。

トルプル・ブルーとして当初上げ、その後、上院でも民主党勝利がなくなり、「ねじれ」になると増税ができなくなったと好感して株価を上げている。楽観的な見通しでリスクオンの上げになった。

しかし、まだ、ねじれになるかどうかの判断は早い。ジョージア州の上院選挙2名で50%以上の得票の候補者がいないために、1月に再選挙になっている。50対50になる可能性もある。

そして、投票の開票中、トランプ支持者の集会や開票中止や民主党支持者の最後まで開票しろとのデモで、多くの人が集団で行動している。このため、コロナ感染者数が、1日で12万人を超えてきている。

前回コラムの見通しと違い、11月3日には大統領は決まらなかったが、株価は上昇している。11月7日現在、バイデン氏の勝ちになっているが、法廷闘争になり、大統領の決定が遅れると、迅速な財政出動もできなく、株価は下落の方向にシフトする。事実、6日に下落したが、米雇用統計が良かったので、小幅になっている。

トランプ氏が法廷闘争しても、最終的にはバイデン政権になるとみる。しかし、コロナ感染拡大で、欧州のようなロックダウンをバイデン次期大統領が行うと、景気は後退する危険もあり、上院が共和党になると、財政出動の量が制限されてしまうリスクも出てくる。

このリスクを多勢が織り込むのがいつか、難しい局面に来ている。 

米大統領選挙の混乱で

トランプ大統領は自分が勝っているのに、民主党が不正をしてバイデン候補を当選させたのであり、不正な選挙として法廷闘争をすると言っている。

トランプ氏には、熱烈な支持者がいる。米国は、銃砲を個人が持っているので、この熱烈な支持者たちが、トランプ大統領の嗾(けしか)けで、何が起きるかわからない状況が、長く続くことになる。既に、トランプ支持者たちが、ホイットニー州知事拉致未遂事件を起こしている。

米国の分断は、両陣営の支持者たちによる法廷闘争と並列に武装闘争になる危険性があるからだ。「ANTIFA」(アンティーファ)などの極左の武装勢力と、白人至上主義のプラウド・ボーイズやクー・クラックス・クランなどが武装闘争に出る可能性もあるので、南北戦争V2になる可能性もある。米国内内戦という状況になってしまう可能性も感じる。

このため、ニューヨークなどの繁華街で、11月3日の両陣営のデモ略奪行動を警戒して、店舗の周りをべニア板で囲い、被害を免れようとしているが、その状態の長期化が起きている。店の営業ができないことになっている。コロナ感染と大統領選挙の混乱という2つの事態で、米国の経済は大きな痛手を受けることになる。

バイデン大統領になった後

次の注目点は、バイデン政権の人事に移る。左派のカラマ・ハリスが副大統領になり、どこまで左派が影響をバイデン政権に及ぼすのかである。

サンダース、オカシオコルテス、ウォーレンなど左派には人気者が多く、トランプ大統領が混乱を起こせば起こすほど、民主党内の左派の力が強くなる。

武装闘争では、中道派には力がない。熱狂的な信者がいる社会主義者が武装闘争の中心になり、その闘争を経て、民主党内で左派の力が強くなる。

米国の分断で、共和党と民主党内の極左、極右勢力が力を増すことになる。その分断を煽っているのがトランプ大統領だ。米国衰退の原因は、熱狂的なアジテーション能力のある人を大統領にしたことにある。

そして、その結果、左派のウォーレンが財務長官になれば、法外な財政出動による赤字支出を伴う社会主義政策になる。現在、多くの人が家賃滞納に追い込まれている。このため、追加の特別給付が必要になっている。それもコロナ感染が短期に終わるはずもなく、長期間の給付になる。

この給付と財政出動の結果は、国債金利の上昇とドル安になる。

それと、アマゾンなどのハイテク企業や富裕層への極端な増税になる。銀行に対しては、グラス・スティーガル法のような投資銀行と普通銀行を分離する法案を作ることになる。

中道派のブレナードFRB理事が財務長官になると、財政出動に必要な国債をFRBが買い、金利も上げないようにイールドカーブ・コントロールをするべきであるという。国債金利の上昇を抑えることで、しかし、その分、ドル安になる。

このため、どちらが財務長官になっても、ドル安になりインフレが起き、かつ企業や株売買への増税などで、スタグフレーションになる危険もある。

しかし、共和党が上院の多数になると、この富裕層への増税や極端な社会主義的な政策を阻止するので、財政赤字も減ることになるが、特別給付とアマゾンなどのハイテク企業への増税は実現するはず。

この2つは、共和党でも問題視しているので、問題視しているのは民主党だけではないからだ。リアル店舗の廃業の原因がハイテク企業であると思われているからだが、米国経済に活気を与えているのは、ハイテク企業であり、このハイテク企業の成長を止めると、株価も停滞することになる。

しかし、ネジレにより、両党の左右の人たちを抑えた現実的な政策が実現できることを期待したいですね。

ただ、共和党が上院で多数になるかどうかは、まだわからない。

米国の対外政策

米国は、国内の混乱が増すと、国内での特別給付などに予算が回り、軍事費や援助費を減らすしかない。このため、国外の問題を解決する能力は大きく減退する。

しかも、国務長官にはスーザン・ライス氏が予定されている。オバマ政権下の補佐官で中国寄りの姿勢であったが、どうなるのであろうか?

このようなことで、中国は南シナ海の占有を強化し、次に西太平洋の覇権を徐々に取りに来ることが想像できるし、台湾への締め付けを強化することになる。同時に尖閣諸島への締め付けも強化してくる。

コロナ感染拡大で、欧州も景気後退して、米国と同様に特別給付を追加で行うしかない。コロナ拡大による行動の制限などで欧州経済も大打撃になる。

このため、欧米諸国の外交能力がなくなり、自由主義圏ではコロナ感染が比較的少ない日本が中心になって、外交能力が高めるしかないことになる。

しかし、中国包囲網などの外交的な動きは米国と協調して行う必要があり、米国の戦略を確認するまでは、動けない。

ということで、中国とロシアは、欧米衰退で、大きなチャンスが訪れている。

日本の対応

米国の大統領選挙結果で、菅首相は、トランプ氏とは相性が合わないが、オーソドックスなバイデン氏とはトランプ氏より相性が合うと思う。

トランプ大統領が再選になったら、安倍前首相の再登板もあったが、バイデン氏なら、その必要はない。しかし、トランプ大統領は、2024年の大統領選挙に出馬すると述べているので、2024年に当選したら、安倍首相の再登板もあり得る。

あとは米国の動向を見て、それに適合して、日本の戦略を考えていくしかないが、徐々に米国の衰退が起きているので、日本は自立した軍事・経済システムを確立しないといけない。

中国とも、付かず離れずの関係を構築する必要があるかもしれない。

グレート・リセット

5月の次期ダボス会議でのテーマになる。今までの資本主義を変えるという。GDP成長から生活の質向上を目指す必要があるという。

2019年11月時点で、世界の国と企業、個人の債務残高が250兆ドルになっている。その上に、このコロナ感染拡大で、政府も企業も個人も借金を増やしている。

このため、米国の国民の多くが借金地獄になっている。このため、個人の借金を解消する徳政令を言い始めている。富裕層から貧困層への富の再分配までもテーマになっている。そうしないと、コロナの影響で、欧米の中間層まで没落することになるからだ。

というように、グレート・リセットとバイデン大統領の政策は似ているし、富裕層の少ない比較的平等な現在の日本を目指しているとも見える。日本も環境政策を重視するとグレート・リセットを見て宣言した。よって、環境重視・国民皆保険などの政策が米国でも実行されることになるのであろう。その分、軍事費が削減されることになる。

米国がサンダース的政策を打つので、それをダボス会議で権威付けして、世界的にそれを広めようとしているようにも見える。

どちらにしても、新自由主義的世界(米国)から統制的資本主義の世界になる。個人の自由を確保しつつ、統制された社会が来る。中国のような個人の自由を制限、監視社会にだけはしてはいけない。

この社会を、このコラムで述べていたが、世界的に言われることになるようだ。

さあ、どうなりますか?

image by: Alex Gakos / Shutterstock.com

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【著者】 津田慶治 【月額】 初月無料!月額660円(税込) 【発行周期】 毎月 第1〜4月曜日 発行予定

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