仕事をする上で、同僚や上司との「雑談」は無駄なものだと考えていませんか? たしかに、「雑談しているヒマがあるなら仕事をしろ」と、つい思ってしまいますよね。メルマガ『毎月1000人集客するプロ講演家が教えるコミュニティづくりの秘訣』の著者で、ベストセラー作家・起業家の岡崎かつひろさんは、仕事における雑談にも意味があると力説。そう考えるに至った経緯として、自身が参加したという能力開発の研修で言われた「衝撃的な一言」の体験談を明かしています。
「仕事での雑談」は本当に無意味なのか
雑談から生まれる人間関係っていうのは僕の場合はなかったです。あまりはっきりとは覚えてないんですが、会社の人から話しかけられるようなことも少なかったと思います。どっちかと言ったらとっつきにくい。仕事は真面目なんだけれど、プライベートで付き合うとまでは思わない。
そういう感じだったと思います。無駄話とかも嫌いだったんです。「そんな無駄な話をしている時間があったらとっとと仕事しろよ」みたいなそんな感じでした(笑)。今とは全く真逆な感じでしたね。
でも、それは会社員だからできたことなんです。自分で起業するとそれじゃ人間関係が築けないんですよね。人間関係ができないと、仕事の話もしづらい。
僕が変わるきっかけになった1番大きな出来事は、能力開発の研修を三日間、受けに行ったことです。その会社は今でもお世話になっているところなんですが、人との関わり方とか人生のビジョンとかそういったものを考えさせられる研修だったんですね。
その研修会社で三日間の研修を受けたのですが、ある研修でコミュニケーションゲームをやったんですよ。僕は、そのゲームにおいて「完璧な答え」を出しました。僕としては、すでに「これが正しい」という答えを導き出せているため、内心鼻高々だったんです。
しかし……。
事件が起きたのは、そのゲームの結果発表の場においてです。その時、研修トレーナーによるゲームのフィードバックがありました。僕は、一言によって心を完全に打ち砕かれました。
「この中にヒットラーがいる!」と研修会で名指しされたこと
研修トレーナーの彼は「この中にヒットラーがいます」と言ったんです。「なぜなら“ヒットラー的存在になりうる彼は、自分の正しさを押し付けて、周りの人の意見を言わせず、一方的に話をクロージングさせたのです。たまたま答えが一致していたからいいものの、これが間違った方向だった大変なことになりますよ」
こういったのです。
かなり強烈なフィードバックですよね(笑)。その言葉を聞いたときは、僕の中で立ち直れない位のレベルのショックを受けました。しかもそれは70人ぐらい参加している人たちの前で言われたんです。70人いて、全員が僕だってわかるフィードバックの仕方だったんですよ。
僕としては、70名もいる前で「岡崎さん、彼は完璧な答えを出しました!」と褒められるんじゃないかとまで想像していたのに、実際はその真逆ですよ(笑)。今だから笑い話にできますが、僕はその日一晩、泣きながら考えました。
「ノー」と言わせないクロージングは人間関係を破壊する
そう言われてみれば、確かにそのゲームの中でやっていたような「ノー」と言わせないクロージングをあちこちでやっていたなと思ったんですよ。それでやっと自分の中でわかったんです。
「だから人間関係がうまくいかず、信頼関係も築けない。表面的に仲の良い人いっぱいいるんだけれども、深く付き合っていったりとか、いざと言う時に助け合える人間関係が作れていなかったんだな」ということに気がついたんです。そのフィードバックを受けたことが僕の中で一番大きく変わったきっかけだったと思います。
僕がその後、どのようにかわっていったのか。
まず、初めに気を付けたことは、人の話をしっかりと聞くということ。これまでは「自分の売りたいものをどうやったら相手に欲しいといわせるか」ということを考えて、営業をしていました。そのため、たとえ相手がその商品を欲しいと思っていなくても、必要だと思わせて売ってきたのです。
しかし、本当に相手の話を聞き、買う側の立場になった場合、必ずしも自分の商品を売ることが相手にとっていいことではないと気づいたのです。つまり「すべての人に売る」スタイルから「本当に必要な人だけに売る」スタイルに変えたのです。
営業スタイル大転換。売り上げは一時的にゼロになったものの…
この営業スタイルの返還は自分にとって大転換でした。
というのも、「ちゃんと相手の話を聞いてその人の求めているものを提供しよう」って言う形に変えたんですね。そしたらその時にはもう起業してたんですけど、セールスが全くうまくいかなくなったんですよ。それまではぐるゴリゴリのクロージングでやっていたわけです。それでうまくいっていたんです。相手のことを気遣うとかしたときに、今までやってきたことと逆のことになるので、全くアプローチの方法が変わって全然うまくいかなくなったんです。
ちなみにその時は、当時の師匠が販売していたビジネス講座の販売です。起業したい向けの人の研修講座です。つまり営業代行ですよね。典型的なフルコミッションの営業みたいな仕事をやってたんですよ。それは講座内容が良かったから受けた人の満足度は高かったんですけど、でも僕のゴリゴリの影響で売られた人は、いい気はしませんよね。
自発的に行動する「エンロール」、強制してやらされる「コントロール」
要は何かコミュニケーションを伝えるときに、自分の伝えたいものを伝えていく。伝えようというか、愛で相手の行動喚起をしていく事を「エンロール」と言う言い方をします。
エンロールメントというのが正確な言葉なんですが、端的に言えば、人がやる気になる状況や環境を作ることをエンロールといいます。
セールスとかリーダーに求められるのはエンロールなんです。要は、リーダーがいて管理下に人がいて動かないんだとしたら、これはコントロールですよね。リーダーがいなくても自発的に行動するメンバーがいるとしたら、これはエンロールです。
お客様も一緒で、「営業マンのゴリゴリのクロージングがなければ買わない」と言うのであれば、これはコントロールです。営業マンがそこにいなかったとしても自発的に購入に至るとしたら、これはエンロールですよね。理想は自発的に購入に至ることじゃないですか。(メルマガ『毎月1000人集客するプロ講演家が教えるコミュニティづくりの秘訣』より一部抜粋)
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