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ゲームは子供をダメにする?「松本亨の株式必勝学」制作者が神回答

もうすぐクリスマス、サンタさんへのプレゼントにゲーム機をお願いする子は多いのではないでしょうか。しかし、親の悩みは「ゲームを与えると勉強しなくなるのでは」という心配。元ゲームデザイナーで、ファミコン「松本亨の株式必勝学」というソフトの企画制作に関わっていたというメルマガ『久米信行ゼミ「オトナのための学び道楽」 』の著者・久米信行さんは、ゲームの仕事に携わった経験をもとに、ゲームと併用した方が良いものなど、自身の家庭での実践方法などについて詳しくアドバイスしています。

オトナの放課後相談室「子供にゲーム問題」

Question

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息子にテレビゲームを買い与えるかで、妻と私で意見が割れています。

私は、ファミコン世代のど真ん中で青春はゲームと共にあったといってもいいくらいなので、購入に賛成派。

一方の妻はそれほど世代は変わりませんが、両親の教育方針でゲームにあまり触れる機会がなく、「ゲームにはまり、やるべきことをしなくなるからダメ」という考えの持ち主。確かにその指摘については、自分も心当たりがあり、中学、高校とテスト期間中にゲームにハマってしまい、ひどい点を取り、後悔したことは数知れず。

ただ、今にして思うと、その後悔は大人になって自分を律する上での大きな教訓になっていますし、ゲームで物事を継続させることで得られる成果を実感した経験が地味な作業を厭わない気質にもなっています。

この話を妻にすると「屁理屈」と一笑に付されますが、ゲームから学ぶことは少なくないと思うので、自分としては妻の理解を得た上で、クリスマスにニンテンドースイッチを息子に買ってあげたいと思っています。何かよきアドバイスでも、反対意見でも構いませんのでよろしくお願いいたします。(東京都・43歳、男性)

久米さんからの回答

元ゲームデザイナーの私は、愚息にゲームを与えましたが、カラダを動かす「おけいこ」とセットで。

結論から申し上げますと、 ゲーム以外に何か「おけいこ」にも励み、時間制限を付ける という条件付きで、 ゲームを与えれば良いと思います。それから、 ゲーム以上に毒にも薬にもなるので、どうやって与えるか考えるべき難問は、 スマートフォンだと思います。

はじめに 私のゲーム歴 をお話しますと、 幼少期は、自宅で超原始的なテレビゲーム 「テニス」 とか 「ブロック崩し」 を家族で楽しんだ世代です。 スペースインベーダー全盛でしたが、 上手ではありませんでしたし、 学生時代はほとんどゲームをしませんでした。

ところが、なぜか大学卒業後、 イマジニアというゲーム開発ベンチャーに入社しました。ちょうど ドラクエやファイナルファンタジーが生まれたころでしたが、入社前に販売されたゲームがクソゲーだったため経営危機に見舞われました。

そこで昼に飛込営業をしていた私は 、夜に「松本亨の株式必勝学」というゲームを企画する4人のチームに抜擢されました。その時ゲーム作りにはまったのですが、 ゲームデザイナーをして業界を裏側から見たせいか、 趣味としてゲームに夢中になることはありません

わが家のことを考えると、 子どもがゲームを欲しがったのは、長男が小学校2年生、次男が幼稚園年長だった頃。 「ポケットモンスター・ダイヤモンドパール」が大ブームの時で、売っていそうな玩具店を巡って買ったことを思い出します。

理由はシンプルで 「お友達もみんなやっているので、持っていないとお友達ができないから」 でした。

もちろん、 子どもたちはゲームに夢中になりました。しかし、わが家は、つい最近まで子供の個室がないオープンな子育て環境だったこともあり、 いつどこで何をやっているかお互いにわかるため、 相互チェックできました。

合わせて、 お稽古ごとや塾などもあったので、 忙しかったこともあるのでしょう。時々 「ゲームやりすぎでは」と思うこともありましたが、 ほど良いバランスで推移しました。またwiiなど家族で一緒に遊ぶゲームも、 中学生ぐらいの時までは楽しみました。

愚息が高校生以上に成長して、個室が与えられても、部屋にこもって寝ないでやり続けるようなゲームジャンキー にはなりませんでした。むしろ、 スマホを与えたので、そちら(多くがYoutube含むゲームプレイ動画)の方に 時間を取られているようでした。

ちなみに、その二人は、長男が大学院、次男が大学通いですが、 今でも、そこそこゲームをやっているようです。思春期に兄弟げんかばかりしていた二人が、 ニーアオートマタというPSのゲームにはまって仲良くなったことには驚きました。

ちなみに 長男に「子供にゲームを与えるべきか」尋ねてみましたら、「大人になってゲームにはまると本当に大変なので、子どもの頃に免疫をつけておいた方が良い」 とのことでした。

というわけで、 私は比較的ゆるいゲーム容認派 でした。しかし、 愚息の思春期が終わる頃、大学で教員体験を通じてイマドキの学生の問題点に気づいたため、 今は「おけいこ」との併用を強くおすすめ しています。

乱暴に言うなら、 「お受験」 と 「ゲーム」 が、子どもたちの 「やる気」 と 「根気」 を奪っています。尊敬する脳科学者 豊田 誠さん と「なぜイマドキの大学生は、すぐやる→やり抜くことができないのか」 という議論をした時に教わったことをお伝えしましょう。

  1. 14歳までに脳を鍛えることが大切
  2. それまでに3年以上反復練習する「おけいこ」を成就させる
  3. 3年以上「おけいこ」を続けると脳が発火して体が自然に動く

脳を鍛えるというと「お受験」を思い浮かべる 方が多いかもしれません。しかし、豊田さんは、言葉を暗記する 「お受験」 より、カラダを動かして覚えこませる 「おけいこ」 が大切だとおっしゃるのです。

たしかに、 私が子供の頃は、お受験の塾通いよりも、みんな、 習字、そろばん、柔道、ピアノ、バレエといった、 カラダを使って反復練習するおけいこに通っていました。 私は、習字とそろばんを習っていましたが、たしかに、3年も続けると、自然に筆が動き、ソロバンをはじくことができました。

おけいこの種別よりも、 体得する経験こそが大切で、 3年の壁を越えて続ければ自然に体が動くようになるとわかれば、 大人になってから仕事の体得時にスランプで心が折れることも少なく なります。学校も会社もすぐやめてしまうイマドキの若者にならずに済むわけです。

つまり、私も含め、 昔の子供たちは「おけいこ」を通じて、脳と体を鍛え、めげないオトナになっていた のです。 習字とそろばんを使う機会はほとんどありません が、 もっと役立つ生き方の基本 を、私は身につけていたことに気づいて、両親に感謝しています。

「おけいこ」はどんなものでも良く 、大人になった時に続けられなくとも、将来役立たなくても良いので、 お子さんに選ばせればよい でしょう。

それならば、 ゲームをお稽古のように究めれば と思われるかもしれません。ところが、 地味なおけいこ を反復すると分泌される幸福を感じる 脳内麻薬物質セロトニン と、 ゲームで興奮 した時に幸福を感じる 脳内麻薬物質ドーパミン には作用に違いがあるようです。

セロトニンは、日々の単純な繰り返しで分泌 されるのに対し、 ドーパミンは、ガチャやお祭りのような非日常イベントで分泌され 「もっともっと過激なものを求める志」中毒性があると目されています。毎日、お祭りを続けていると、 ちょっとした日常的なことでは幸福を感じなくなってしまうのです。

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先日、地元 墨田区の工場巡りツアー をした時に、 「20年修行して一人前になれる」「もっとうまくなりたい」 と 笑顔で語る職人 に、 大学の教え子たちは仰天していました。きっと、 職人たちはセロトニンの出し方を体得 しているので、 地味な仕事を続けていても大きな幸福感を継続的に得ることができるのです。

即ち、 ゲームを与えても良いけれど、お稽古も3年以上続けなければ、ゲームをする時間を与えない、新しいゲームも買わないという約束 を、お子さんと両親の間でされてはいかがでしょう。だから 好きなおけいことゲームを選びなさいと、子どもに選択権を与え 、できれば おけいこもゲームも親子で一緒に楽しまれてはいかが でしょう。

「ああ、ゲームは楽しいね。でも今日はここまでにして、一緒におけいこを楽しもう」

こんな親子関係が最高だと思うのです。

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久米信行この著者の記事一覧

1963年東京墨田区出身。87年慶応大経済卒。イマジニア新卒一期で飛込営業と株式投資ゲーム開発。88年日興證券でAI相続診断システム開発研修統括。91年家業の国産Tシャツメーカー久米繊維工業入社。94年三代目社長就任(現相談役)。97年日経インターネットアワード、05年経産省IT経営百選、09年東商勇気ある経営大賞等受賞。10年APEC中小企業サミット日本代表。20年開学の新大学iUでは起業家教育・地域創生担当教授。明治大、多摩大の授業や企業団体研修に即した25万部超の「すぐやる技術」シリーズ等著書15冊。内外情勢調査会等で毎年数千人に講師。東京商工会議所墨田支部副会長、墨田区観光協会理事、墨田区文化振興財団 評議員として地元振興。新日本フィルハーモニー交響楽団・NBS日本舞台芸術振興会・日本吟剣詩舞振興会 各評議員として文化芸術振興。

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