毎年11月の半ば頃になると会社で通知される、「年末調整」に関する書類の提出。コロナ禍ということもあり、最近ではリモート勤務の社員に向けてオンラインによる申請もおこなわれているようですが、この年末調整で「損をした」かもしれない人がいるようです。元国税調査官で作家の大村大次郎さんは、自身のメルマガ『大村大次郎の本音で役に立つ税金情報』の中で、年末調整によって税金を払い過ぎている可能性がある会社員のケースを紹介。たとえ今年は大丈夫でも、来年以降に備えて知っておくと損をせずに済みますよ。
※本記事は有料メルマガ『大村大次郎の本音で役に立つ税金情報』2020年11月16日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め初月無料のお試し購読をどうぞ。
プロフィール:大村大次郎(おおむら・おおじろう)
大阪府出身。10年間の国税局勤務の後、経理事務所などを経て経営コンサルタント、フリーライターに。主な著書に「あらゆる領収書は経費で落とせる」(中央公論新社)「悪の会計学」(双葉社)がある。
実は「年末調整」で損していた人も。あなたは大丈夫?
年末調整では、ほとんどのサラリーマンが少し税金が戻ってくるので、楽しみにしている人も多いでしょう。
ところで、なぜ年末調整で税金が戻ってくるのかご存じですか?
実はこの年末調整の仕組みを知らないばかりに、損をしている人もけっこういるのです。
なので、ここで年末調整の仕組みをご説明したいと思います。
サラリーマンというのは、毎月の給料は源泉徴収されています。
これは、確定した額を引いているのではなく、このくらいの収入の人は、だいたいこのくらいの税金になるだろうという見越しのもとに作られた税額表を基にして引かれているのです。
この税額表に表示されている源泉徴収額というのは、実際の税額よりも多くなりがちなのです。
サラリーマンの源泉徴収税というのは、一年間の収入に対してかけられるものです。
つまり、一年間の収入が確定してから、正確な税額が決まるのです。
でもサラリーマンは、一年が終わるのを待たずに、毎月の給料から税金を差し引かれています。
つまり、まだ税金が確定していないのに、見込みで税金を徴収しているわけです。
そして、その「見込み」の金額は、後で税金の取りはぐれがないように少し多めに設定されているのです。
たとえば、年収500万円で妻と子供二人を扶養している人は、だいたい毎月1万5、6千円を所得税として源泉徴収されています。年間にすると20万円近くなります。
しかし、この人の本来の所得税はだいたい10万円程度にしかなりません。だから年末調整で、10万円近くの税金が還付される事になるのです。
このようにサラリーマンの毎月の源泉徴収額というのは、「取りすぎている」場合が多いのです。
年末調整ができず、税金の払いすぎになっている人
普通のサラリーマンならば、この取られすぎている税金は、年末調整をすることによって清算されます。年末調整で税金が戻ってくるのはこのためです。
しかし、年の途中で退職した人は年末調整を受けていないので、税金を取られすぎのままになっています。
退職しても税金が還付される人と、されない人がいます。
税金が還付されるのはどんな人か、ここでご説明しましょう。
まず、年度の途中で退職した人で、再就職をしていない人はほぼ100%税金が戻ってきます。こういう人は先に言いましたように、年末調整を受けていないからです。
たとえば、3月31日付で退職した人が、その年は再就職していなかったとします。
1月から3月までは、毎月40万円の給料をもらっていました。扶養しているのは奥さんだけです。
この人は毎月2万円程度を源泉徴収されています。ということは、3月までに6万円程度、源泉徴収されていることになります。
でもこの人は、年の途中で給料がなくなりますから、年間の収入はそんなに多くなりません。
この人の場合は、この年、40万円の給料3ヵ月分で、合計120万円の収入にしかならないのです。
この人は退職金はもらうかもしれませんが、退職金の税金は別に計算されるので、この年の収入はあくまで給料でもらった120万円だけということになるのです。
年間の給料が、120万円であれば、配偶者控除などを差し引くとだいたい所得税はゼロになってしまいます。
つまり本来は所得税はゼロなのに、6万円も源泉徴収されたままになっているのです。
この、本来払わなくていいはずの税金は、確定申告をすれば戻ってきます。
というより、確定申告をしなければ戻ってきません。
退職した後、再就職していない人は、多かれ少なかれほとんどがこのパターンを持っています。
だから、退職して再就職していない人は、ほとんどの人が税金を払いすぎているのです。
「えーっ、そんなこと知らなかったよ。会社も税務署も教えてくれないじゃん」と思う人も多いでしょう。
ほんとにそうなんです。
会社も税務署も、こういうことをいちいち教えてくれはしないのです。
「ってことは、税金を納めすぎになっている人はたくさんいるんじゃない?」
その通りです。
退職して再就職していない人が税金を納めすぎになっていることは、あまり知られていないので、かなり多くの人が税金を納めすぎになっているはずです。
そして、退職した後、すぐに再就職した人は、税金が還付されるケースとされないケースがあります。
というのは、再就職した職場では、だいたい年末調整がされます。だから本来であれば、税金の還付は年末調整で終わるはずです。
ただ再就職の場合は、1年間に2箇所以上の職場から給料をもらっていることになりますので、両方の給料を通算して、年末調整をしなくてはならないのです。
再就職した会社が、前の会社の給料も通算して年末調整をしてくれていれば、それでOKなんですが、まれにそれをしていないことがあるんです。
同じ会社に嘱託で再就職したようなときはほとんどありませんが、大企業から中小企業に再就職したときなどでは時々あるパターンです。
そういう場合、前の会社で源泉徴収されている分については、放置されていますので、税金が還付される可能性が高いです。
1年を通して年末調整されているかどうかは、再就職した会社に聞けばすぐに教えてくれます。
もし前の会社の分の年末調整はしていないということであれば、前の会社の源泉徴収票と、再就職した会社の源泉徴収票を持って、確定申告に行きましょう。
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