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「売ってくれない魚屋」から学ぶ、良くないものは売らない決断

商品やサービスを扱っている限り誰しも売り上げは立てたいものですが、敢えて「売らない」という決断をすべきシーンもあるようです。今回の無料メルマガ『販売力向上講座メールマガジン』では接客販売コンサルタント&トレーナーの坂本りゅういちさんが、かつての経験から学んだ「良くないものは売らない」という考え方を紹介するとともに、目先の利益を追いお客様にとってデメリットとなるような商売は、結局自分たちが割りを食うことになるとしています。

売ってくれない魚屋

魚屋さんに買い物に行ったことってありますか?スーパーとかではなくて、魚だけを専門に扱う商店街にあるような魚屋さんです。それかもしくは、市場なんかでも良いでしょう。鮮魚市場に行くと、魚介類が大量に並んでいる様子を目にすることができますね。

私は実家が魚をメインに扱う和食料理屋だったこともあって、懇意にしている魚屋さんに行ったり、親の手伝いと称して、明け方の市場に連れて行ってもらっていた経験が結構あります。そういうところで買い物(当時は仕入れでしたが)をしていると、時々、魚屋さんが魚を売ってくれないという場面に遭遇することがあります。「これが欲しい」と言っても、「それはダメだ」と売ってくれないのです。

なぜかというと、あまり良い素材ではないから。魚という食材は、その時々の天候や海の状態によってかなり味が変わります。悪天候でまともな魚が取れていないこともあれば、気温が普段とは違っていて、おいしくないということもあるわけです。プロである魚屋さんは、そうした味の変化をよく理解しているので、「これは良くない」というものは、ある程度顔を見知った相手になると売ってくれなかったりするわけですね。その逆に、「だったら今日はこっちが良いよ」と別のものを勧めてくれることもあります。

当然、私の親がやっていた料理屋でも、そうしたお勧めとされている食材を使うから毎日メニューは変わります。お客様がやって来て「今日は〇〇がいいな」と言っていても「今日は〇〇は味が悪くて仕入れていない。こっちならどうか?」と言うわけです。そうしてお客様もそれを注文し、刺身などを食べて美味しいと喜んでくれる。そういう光景を子供の頃にかなり見てきました。

でも今振り返ってみると、こういう中で育ってきた私はすごくラッキーだったのかもしれません。なぜかというと、「売らない決断」をできるからです。「良くないものは売らない」という判断をしている大人を間近で見てきたものですから、目の前のお客様にとって良くないものは売らない、その代わりに良いものを勧めるという感覚があったように感じています。もし良いものがなければ、「次に良いものが入った時に来てくださいね」と言える。これって結構難しいと思うのです。

実際、私も全ての場面でそうできたかというとやっぱりそうはいきませんでした。どうしても売り上げを上げたい時や、どうしても自分よがりになって売りたい商品があるという時は、ついお客様のためではなく、自分のために商品を売ってしまうこともありました。今はコロナの影響もあって、特に売り上げが欲しい時期でもあるでしょうし、私自身、コロナの影響は思い切り食らっていますから、ついやってしまいそうになります。

でも幸い、この1年は特にこのことを強く考えることができました。幼少期に過ごしてきた生活の中のことを振り返り、自分よがりになって売るということはせずに、「これは良くないからやめときましょう」「その代わりこれはどうですか?」と伝えることができています。

そうするとどういうことが起こるかというと、やっぱり売った後の満足度が違うのです。私が売っているのは研修やコンサルといった無形とも言える商品ですが、終わった後のクライアントの反応を見ると、やっぱりあそこで無理に売らなくてよかったなと感じます。

小売の現場でも同じことは常に言えます。その瞬間、どうしても売り上げが欲しくなって自分たちのためにも売り上げを上げる。これが決して悪いこととは言いませんが、それがもしお客様にとってはデメリットとなるような商売になってしまっていると、どんどんお客様は離れていきます。

もしコロナがある程度収束してきたり、他のチャネルで商品を売る方法が確立できても、「あそこで良い思いをしなかったから」と、もう選んでもらえなくなるかもしれません。そうなれば、結局自分たちが割りを食います。

長い目で見る余裕がない時ほど、こうした感覚は忘れがちになるものです。今の売り上げを作ることも大切なので、全てを否定するつもりはさらさらありませんが、少し意識をしておいてもらえると嬉しいなーと思います。

今日の質問です。

image by: Shutterstock.com

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【著者】 坂本りゅういち 【発行周期】 日刊

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