昨年11月、日本の大手コンビニ「ローソン」が、あの有名ラーメンチェーン「幸楽苑」とのコラボ商品を出したことが大きな話題となりました。ローソンは昨年10月頃から大手外食企業とのコラボに力を入れ始めましたが、こうしたコラボ商品は双方にとってどのようなメリットがあるのでしょうか? メルマガ『理央 周 の 売れる仕組み創造ラボ 【Marketing Report】』発行人の理央周さんは、ローソンの「幸楽苑」コラボを事例にしながら、「クロスブランディング」と呼ばれる既存の有名ブランド同士が共同開発で商品を発売するマーケティングの可能性と、メリットについて分かりやすく解説しています。
ひと味違うローソンと有名飲食店のコラボ商品~その狙いはどこにあるのか?
ローソンが、昨年10月から外食企業との提携商品を共同開発して、各店舗で販売しています。
これまでも、コンビニのような小売業と有名飲食店やパティシエが監修するコラボ商品は数多く開発され販売されてきました。
しかし、今回のローソンと飲食店の提携商品は、これまでの単なるコラボ商品と少し異なります。では何が違うのでしょうか? その辺りを、マーケティング的に深掘りしていきます。
企業はなぜ共同ブランド商品を出すのか?
ローソンは、昨年11月3日から、有名ラーメンチェーンの幸楽苑ホールディングスと組んで、中華そば味の「からあげクン」、肉あんかけ炒飯、塩野菜タンメンなどの7品を、全国約1万4千店で発売しました。
これらの商品群は、今でもローソンの「ローソン研究所」というホームページに載っていますが、幸楽苑が監修しているだけあって、見るからに美味しそうです。
たとえば、肉あんかけ炒飯は、2つに分かれていて左に炒飯、右にとろっとした肉あんかけが乗っています。
冬の間は寒いため、コンビニで夕ご飯を買う場合も、温かいものが欲しくなりますが、このあんかけ炒飯や、塩タン麺を買い、自宅で温めて食べれば、お店の味に近い美味しさが楽しめます。
幸楽苑監修 肉あんかけ炒飯 出典:「ローソン研究所」より(現在は販売終了)
このように、ローソンと有名飲食店といった有名ブランドが共同して、コラボレーション商品を出したりするケースが、ここのところ多くみられます。ローソンは過去にも『鬼滅の刃』と組んでタイアップ商品を出したり、キャンペーンをしました。
また、スポーツシューズのナイキも様々なブランドとタイアップしてコラボ商品を出しています。高級ブランドのルイ・ヴィトンと、カジュアルなブランドのSupremeとのコラボ商品であるスニーカーや、長財布もデザインのユニークさと意外なブランド同士の組み合わせ、ということで、SNSなどでも大きな話題になりました。
このように、既存の有名ブランド同士が共同開発をして商品開発をすることを、「コ・ブランド」とか「クロスブランディング」と呼びます。
目的は、話題性をアップすることと、お互いのブランド力の相乗効果による新しい顧客層の獲得をすることにあります。
ルイ・ヴィトンとSupremeがコラボ商品を出せば、それだけで大きなニュースになります。そして、それを見てそれぞれのファンが買います。
購入し使っている中で、ルイ・ヴィトンが好きだった人も以降、Supremeが好きになり、新しいファンの層が加わって厚くなることが期待できます。
ローソンの事例はこれまでのクロスブランドと何が違うのか?
今回のローソンの取り組みも、もちろん同じ狙いがありますが、それ以外の取り組みによる更なる狙いもあります。
ローソンのこれらのコラボ商品を購入すると、売り上げの一部などが幸楽苑に還元されます。
さらに、幸楽苑の店舗で使える割引券をレシートで発行するので、幸楽苑の実店舗への送客にもつなげられます。
コンビニ側のメリットとしても、競争が激しくなり販売が伸び悩むなか、知名度の高い外食企業と組むことで、コンビニでは「ローソンにしかない」商品を店頭に置くことができます。
これは、商品の開発力やブランド力を高めることもできる上に、顧客からすると「ローソンに行く明快な理由」になるので、いうまでもなくローソンにも大きなメリットがあります。
また、コラボ商品の単価は定番商品と比べて1~2割高めでも売れる傾向にあります。
流通ニュースによると、昨年12月にローソンが発売した東京・浅草の老舗レストラン「洋食屋ヨシカミ」のビーフシチュー弁当は、コンビニとしては高めの800円でしたが、その美味しさからSNSなどで話題になったこともあり、販売数は定番弁当の約4倍になったとのことです。
また、ローソンでは、「串カツ田中ホールディングス」や、洋食店「たいめいけん」など35社と提携を始め、2021年1月には60社と、過去最大級に増やしてお互いの集客につなげています。
昨年からのコロナの影響で飲食店も苦戦している中、売り手、商品元、買い手に便益がある「三方よし」、関連するステークホルダーのことを考えた、良質なエコシステムの好事例です。
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