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止まらぬ震災関連死と避難者数の大ウソ。まだ東日本大震災は終わっていない

今年で発生から10年という節目を迎えた東日本大震災ですが、その被害は「現在進行系」であることに間違いはないようです。今回のメルマガ『きっこのメルマガ』では人気ブロガーのきっこさんが、未だ福島県において災害関連死が絶えない現実と、その内わけに「自死」が多いという事実を記すとともに、その死は自然災害ではなく現政権による「人災」であると指摘しています。

 

東日本大震災から10年

この第110号の配信日は3月10日(水)なので、明日は「3月11日」、東日本大震災から丸10年という節目の日を迎えます。ひとくちに「10年」と言っても、「もう10年」と思った人もいれば「まだ10年」と感じた人もいるでしょう。しかし、この10年をどのように感じたとしても、1つだけ言えることは「東日本大震災はまだ終わっていない」ということです。

復興庁の発表によると、2021年2月26日の時点で、東日本大震災の避難者は約4万1,000人。未だに、これほど多くの被災者が故郷に帰れずに、北海道から沖縄まで、全国に散らばって生活しているのです。しかし、これは現政権が事実を矮小化し、復興の進捗率を過大にアピールするために発表している「まやかしの数字」であって、実際の避難者は、この数倍いると見られています。

たとえば、原発事故による放射能汚染によって強制避難地区に指定され、仮設住宅などに強制移動させられた住民らは、指定が解除された時点で、もう避難者ではなくなります。しかし、2017年に当時の政権が強行したのは、住宅の周辺だけ除染をし、広大な野山は汚染されたまま、高濃度の汚染土が詰められたフレコンバッグが山積みされたままの指定解除でした。

このような状況で、小さな子どもを持つ親が、自分の家へ戻ろうと思うでしょうか?結局、すぐに戻ったのは一部の高齢者だけで、指定解除から1年が経っても、住民の8割が戻らなかった地域もあるのです。そして、この8割の人たちは、指定が解除された時点で「自主避難者」と見なされ、補償が打ち切られ、復興庁の「避難者」の統計から排除されたのです。

他にも、避難地区に指定されていなくても、自宅周辺の放射線量の高さを危惧し、ここでは安心して子どもを育てられないと、自主的に避難した人たちが数多くいます。そのため、現在の実際の避難者数は、政府発表の「約4万1,000人」の数倍に上ると見られているのです。

しかし、あたしが「東日本大震災はまだ終わっていない」と言ったのは、まだ数多くの避難者がいるからだけではありません。震災の二次災害であり人災でもある「震災関連死」が、今も続いているからです。長期化する避難生活の中で、持病を悪化させて亡くなってしまった人たち、故郷を奪われ将来に何の希望も持てなくなり自らの命を絶ってしまった人たちなどを「震災関連死」と呼びますが、これが今も続いているのです。

あたしは、大災害による死者の数を一覧にして表わすことが嫌いです。何だか人の命をモノ扱いしているように感じるからです。しかし、この「震災関連死」の問題を理解してもらうために、あえて数字で表してみます。まずは、東日本大震災で被害の大きかった東北3県の震災による死者と行方不明者の合計数を見てください。

岩手県 5,795人
宮城県 1万0,770人
福島県 1,810人

行方不明者を「死」と呼ぶことは不謹慎かもしれませんが、便宜上、これが地震や津波で亡くなった「直接死」の人数です。それでは、震災では幸いにも一命を取り留めたのに、その後の辛い避難生活の中で、持病を悪化させて亡くなってしまったり、自らの命を絶ってしまった人たちの中で、国によって「震災関連死」と認定された死者数を見てください。

岩手県 469人
宮城県 929人
福島県 2,313人

これを見ると、地震と津波という自然災害による被害が甚大だった岩手県と宮城県は、どちらも「震災関連死」の人数は「直接死」の1割以下です。しかし、原発事故という人災によって、自宅は壊れていないのに多くの人々が強制避難を余儀なくされた福島県では、「震災関連死」が「直接死」を追い抜いてしまっています。「震災関連死」の死者数は、復興庁が毎年9月に発表しますので、この数字は2020年9月のものですが、それでは、過去4年間の推移を見てください。

2017年9月

 

岩手県 464人
宮城県 926人
福島県 2,202人

2018年9月

 

岩手県 467人
宮城県 928人
福島県 2,250人

2019年9月

 

岩手県 469人
宮城県 928人
福島県 2,286人

2020年9月

 

岩手県 469人
宮城県 929人
福島県 2,313人

「震災関連死」の人数は、岩手県と宮城県は震災直後から翌2012年までの1年間だけ急増し、その後は「年間に数人」という状態が続いています。しかし、福島県だけは、震災直後から現在まで、ずっと増加し続けているのです。もちろん、年間に100人、200人と亡くなり続けていた2014年や2015年よりは増加が緩やかになりましたが、それでも、福島県だけが今も年間に数十人ずつ亡くなり続けているのです。そして、その内わけを見ると、悲しいことに「自死」が多いのです。

2019年から2020年に掛けての1年間で、福島県の「震災関連死」は27人増加していますが、分かっているだけで、このうちの5人が「自死」なのです。そして、福島県のこれまでの「震災関連死」の累計2313人の内わけを見ると、少なくとも118人が「自死」なのです。

しかし「震災関連死」だけでも国の認定は厳しい上、さらに「自死」と認定されるためには「遺体が避難所や仮設住宅などで発見された」「被災地から避難後に自殺した」「大震災が直接影響したことが遺族の説明や遺書で判明した」などの要件を満たさなければなりません。たとえば、仮設住宅でひとり暮らししていた高齢者の自死したご遺体が発見されても、遺書がなく、証言してくれる身寄りがいなければ、「震災関連死」の「自死」とは認定されません。そのため、実際はもっと「自死」が多いと推測されます。

そして、初めに書いたように、そもそもが「避難者」と認定されていない「自主避難者」が政府発表の何倍もいるのです。その中には、長期化する避難生活で持病を悪化させて亡くなってしまった人たち、将来に何の希望も持てなくなり自らの命を絶ってしまった人たちも数多くいるかもしれません。

使い古された表現で言えば、ここに挙げた数字は「氷山の一角」なのです。実際には、政府発表の何倍もの人たちが今も避難生活を続けており、今も「震災関連死」が続いているのです。せっかく大震災で一命を取り留めたのに、その後に「震災関連死」をしてしまうなんて、それも「自死」だなんて、これほど悲しいことは他にありません。しかし、大震災から10年が過ぎた今も、この悲劇が続いているのです。

当時の首相は、選挙が近づくたびに「被災者に寄り添い復興を加速させる」と連呼していましたが、実際には復興予算を被災地とはまったく関係ないことにバラ撒いていました。中には「原発輸出の視察費用」にまで使っていたのです。その一方で、復興が進んでいるように見せかけるため、除染が不十分なのに強制避難地区の指定を解除して賠償を打ち切ったり、東京五輪を「復興五輪」と呼んで放射能汚染地域で聖火リレーを行なわせようとしたのです。

明日で東日本大震災から丸10年ですが、当時の首相が「完全にブロックしている」と公言した高濃度放射能汚染水は今も増え続けており、とうとう国は海洋投棄に舵を切り始めました。また、当時の首相が「完全にコントロールしている」と公言した原発事故は、未だに溶け落ちたデブリを取り出す方法すら見つかっていません。今も約4,000人の人たちが危険な最前線で廃炉作業に従事していますが、建屋周辺などの高線量エリアではすぐに年間被ばく線量に達してしまうため、長時間の作業はできない状況です。

こうした現状からも分かるように、東日本大震災も福島第1原発事故も「現在進行形」の災害であって、決して「過去の出来事」ではないのです。そして、今も続いている「震災関連死」は、自然災害ではなく、被災者のことなど何も考えていない現政権による「人災」なのです。国が口先だけでなく、本当の意味で被災者1人1人に寄り添い、必要な支援の手を差し伸べ、「震災関連死」の「自死」が0人になった時こそ、初めて「東日本大震災の終息の第一歩」を踏み出せたと言えるのです。

(『きっこのメルマガ』2021年3月10日号より一部抜粋・文中敬称略)

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