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なぜ日本企業はメリットだらけの「チェックリスト」を使わないのか?

日本のビジネスシーンではあまり普及していないチェックシート。その使い勝手の良さと多くのメリットをファッションビジネスコンサルタントの坂口昌章さんが自身のメルマガ『j-fashion journal』で紹介しています。

仕事の課題を、日本ではあまり見ないチェックシートで解決する方法

1.営業の商談チェックリスト

チェックシートとは、ミスを防ぐための点検や確認を目的としたものと、現状把握や情報の整理をするための記録用のものがある。チェックシートを徹底して使えば、マニュアル代わりにもなるのだが、日本では仕事の現場であまり見ることはない。

例えば、営業担当者が上司から「売上が足りないから得意先を回ってこい」と言われたとする。その営業担当者はどうするだろうか。

まず、どこに行くかを考える。最初に、その日に訪問する得意先リストを作るだろうか。それとも、思いついた1社に電話を掛けて、それから出かけるだろうか。あるいは、何も考えずに、とりあえず、会社を飛び出すだろうか。もし、上司が30分で訪問先リストを作成し、電話でアポイントを取るように指示し、そのリストを提出してから、会社を出れば無駄のない行動ができるはずだ。もし、訪問先リストができない場合は、上司がアドバイスすれば良いし、上司から電話を掛けてもらっても良い。

次に訪問先を回って、何を話すのだろう。「売上が足りないから、得意先を回ってこいと上司に言われまして……」といって、知り合いと適当に雑談をして、「それでは」と次に回る人もいるかもしれない。

もし、商談のチェックリストがあって、「市況全体の状況を聞く」「前回納品した商品の状況を確認する」「新商品の紹介をする」「現在開発中の商品について予告をしておく」等が用意されていて、相手の見える所でチェックすること、あるいは、相手に確認のサインをもらうようにすれば、少なくとも最低限の商談にはなるだろう。チェックリストの活用が相手にも知られれば、「今日は、何をしに来たの。チェックリストを見せてよ」と言われるかもしれない。それはそれで、お互いの時間の短縮にもなるだろう。そうなればそうなったで、情報収集等の項目を増やしておけばいい。

2.社内会議のチェックシート

チェックリストは社内の打ち合わせにも活用できる。チェックリストが用意できているということは、会議の議題が決まっているのと同じことだ。

たとえば、企画と営業の打ち合わせの場合、事前にチェックリストの交換と確認ができていれば、打ち合わせの時間も短縮できるだろう。企画側からは、「昨年の売上傾向の確認、特にアイテムのバランスについて」「小売価格について。競合他社の価格との比較」「商品展開時期の確認。前年通り?」「展示会商品と追加商品の割合」等。

営業側からは「新しい素材傾向の確認」「前シーズンからの継続商品」「新たに投入する商品」「素材トレンドの確認」「カラートレンドの確認」等。

事前にこれらが交換されていれば、その準備をして会議や打ち合わせに望むことができる。そうすれば、会議の時間も短縮できるはずだ。

3.チェックシートと日報の連携

自分が行うべきこと、考えるべきことが全てリスト化されれば、チェック済のチェックシートを全て蓄積すれば、それは日報の代わりになる。

そして、チェックシートの日報をチェックすることで、社員の行動を理解することができる。更に、チェックシートにもれている項目が見つかれば、それを追加するように指示することでより合理的な仕事ができるだろう。

たとえば新商品を発表してその反応が知りたいのなら、全社員のチェックシートに「新商品の反応」の項目をいれるように指示さればいい。

4.業務マニュアルとチェックシート

多くの場合、業務マニュアルは冊子の形状であり、読んで覚えて仕事に生かすか、迷った時に確認するために使う。

しかし、もし、マニュアルがチェックシートに記載されていれば、マニュアルを覚えなくても、マニュアル通りの業務ができるようになる。上司はチェックシートを事前にチェックす
ることで、チェック項目を追加したり、内容を精査できる。それを行うことが指導であり、教育であるということだ。グループウェアや社内チャットは、意識を共有することはできるが、具体的な業務の内容まで管理することはできない。

チェックシートの優れている点は、チェックすることで、その項目の業務が終了したのか、取りかかったのかが確認できることだ。

また、営業や販売等でインストラクターがチームのチェックシートを確認して、新たな項目を指示することで、生きたノウハウを共有することがてきるだろう。メールもチェックシートに代替えすれば、項目毎の管理が可能になる。全てを管理されることを嫌う社員もいるだろうが、行動の迷いがなくなり、効率を上げることで残業等が減少するというメリットもある。

単純だからこそ、強力な業務ツールになり得るが、問題は、慣れると、チェックシートを作られくなり、チェックもないがしろになるということだ。これを徹底するには、組織内のルールを決め、リーダーが模範となり、常にチェックすることが重要である。

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■編集後記「締めの都々逸」

「項目立てて 計画立てて それができれば いっちょ前」

昔、ザウルスというPDA(携帯情報端末)がありました。愛用していたんですよね。「ザウルスに電話がついたら便利だろうな」と思っていたら、出たんです、携帯機能付きのザウルス。でも、それは日本一重い携帯電話でした。それにメモリ容量が少なかったんです。

結局、紙の手帳に戻り、再びデジタル化したのは、つい4年前くらいです。グーグルカレンダーに統一しました。

でも、ザウルスって使いやすかったンですよね。予定に絵文字が入れられたりして。

今回、チェックシートを考えてみて、こういう汎用性の高いものこそ、ツールとしては使いやすいのにな、と思っています。但し、「チェックシートの仕事術」のような本を一冊書かなければいけないかもしれませんね。
(坂口昌章)

image by: Shutterstock.com

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