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デリカフHD Research Memo(7):BtoC、DtoC事業への進出で中期的な成長ポテンシャルは一段と高まる

■今後の見通し

2.中期展望
(1) 中期の取り組み
デリカフーズホールディングスは事業環境が依然、不透明なことから次期中期経営計画についての発表を見送っているが、検討課題として「既存デリカモデルのさらなる拡充」「新領域での事業モデル展開」「リスク耐性を備えた事業基盤の構築」「ESGを重視した広い視野と将来を見据えた経営」の4点を挙げている。

a) 既存デリカモデルのさらなる拡充
既存デリカモデルのさらなる拡充として、中期的には複数ヶ所にてFSセンターを増設、空白地域への事業進出も視野に入れている。進出にあたっては単独で進出する可能性もあるが、北海道のようにM&Aで進出する可能性もある。

b) 新領域での事業モデル展開
新領域での事業モデル展開としては、前述のとおりBtoC、DtoC領域での展開を進めていく。特に、DtoC事業については国内でも市場が拡大し始めており、後発ながらも認知度の向上と付加価値を上手く訴求していくことで、成長を目指していく。

c) リスク耐性を備えた事業基盤の構築
今回、コロナ禍によって、外食業界に売上高の8割を依存するリスクが顕在化した格好となった。青果物専業であることに変わりないものの、今後は中食業界やBtoC領域など対象市場を広げること、また外食業界の中でもファストフード業態などコロナ禍の影響が少ない業態に注力することでリスク耐性を強化し、事業基盤の一層の強化を進めていく。

d) ESGを重視した広い視野と将来を見据えた経営
ESG経営に取り組む企業が増えるなかで、同社も次期中期経営計画ではESGに従来以上に着目して、経営に取り組んでいく方針となっている。同社は「農と健康を繋ぐ創造企業」として、1)外食・中食産業の価値創造を見据えた経営(バリュエーション力、メニュー提案力、青果物の安定調達・供給力、物流力等)、2)青果物の流通を通じ、農業の発展と人々の健康な生活づくりに貢献、3)環境に配慮した経営、の3点に取り組んでいくほか、地域社会をはじめとした各ステークホルダーとの関係強化や強固なガバナンス体制の構築など、バランスの取れたESG経営を基に社会的ニーズに対応した価値創造を進めていく。環境への取り組みとしては、フードロス低減への貢献(形状が不定形な野菜をカット野菜として加工販売、DtoC事業の拡大による廃棄ロスの削減等)や、野菜屑の堆肥・飼料化(野菜リサイクル・ループ)、二酸化炭素排出量の抑制などを各事業拠点で取り組んでいる。

(2) BtoC、DtoC市場進出によって成長ポテンシャルが拡大
業務用青果物の市場規模は年間2兆円程度と見られており、業界トップの同社でも市場シェアは2%弱にすぎない。安心・安全を担保するための国際標準規格での品質管理基準取得やBCP対策、自然災害リスクに対応した大型低温貯蔵施設の開設、外食企業の人手不足課題に対応するための真空加熱野菜の量産化など、様々な取り組みを業界に先駆けて進めてきたことで顧客からの評価は年々高まっている。今後は大都市圏だけでなく、北海道、九州など地方エリアでの拡販にも注力するほか、商品ラインナップの充実を図ることによって、外食業界のなかでの市場シェアはさらに拡大していくものと予想される。

また、未開拓のBtoC、DtoC領域に本格進出することを決定したことにより、中長期的な成長ポテンシャルは高まったと言える。特に、ここ最近はコロナ禍の影響もあって健康への意識が高まっており、良質で栄養価の高い青果物を摂取するニーズが増大してくれば「青果日和」にとっては追い風となる。今後のプロモーション展開も含めてその動向が注目される。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)

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