年金の運用損失問題。“失われた5兆円”みたいなセンセーショナルな見出しが付くと、多くの人がショックを受けると思いますが、さすがにこの報道の仕方には偏りがあります。(『海外投資とネットビジネスで海外移住、ハッピーライフ』栗原将)
センセーショナルな見出しに埋もれた、GPIF本当の問題点とは?
5兆円損失は「まあ、そんなものだろう」
GPIFの正式名称は「年金積立金管理運用独立行政法人」となりますが、これはいくらなんでも長過ぎる名称ですね(笑)
このところ、新聞などで書かれているのが、2015年度の運用損失が約5兆円にのぼる見込みといったものです。
“失われた5兆円”みたいなセンセーショナルな見出しが付くと、多くの人がショックを受けるものと思いますが、さすがにこの報道の仕方には偏りがあります。
もし、運用総額が10兆円でマイナスが5兆円だったら、確かにやばいのですが、約150兆円に対しての5兆円です。利回りでいえば、マイナス3.5%程度です。
昨年の上海ショックに伴う金融市場の混乱を鑑みれば、個人的には、その位のマイナスだったら、まあ、そんなものだろうと感じています。
本当の大問題
一方で問題だと考えているのが、「GPIFをアベノミクスの株高誘導に使ってしまった」ことです。
これは、年金の原資を使った、壮大なギャンブルみたいなものです。
2014年10月に、国内株式運用の割合を従来の約15%から25%に変更することを発表したわけですが、その後しばらくは、日本株が上がって、株式投資していた人は利益が出ましたし、GPIFの運用成績も上がって、万々歳だった。
でも、この好循環はあくまで、株高が続くことが前提です。
日経平均でいえば20,000円を超えたあたりで天井となり、現時点では150,00円といったところで、約25%下落している。
GPIFの運用は、予め、ポートフォリオ(資産構成割合)を決めていますから、個人投資家のように、下落したから慌てて損切りということはなく、損失といっても実現損ではなくて含み損が大部分と思われますが、別な視点で考えてみたら、損切りして他の投資に果敢に切り替える可能性は低い。
同じ年金基金でも外国のものは、ヘッジファンドを使ったり、特定企業の大株主になって、質問状を送付したり、さらに強烈なアクティビストとして行動する所もあるのですが、GPIFにそのような戦略性を感じることは皆無で、手厳しい言い方をすれば「日本の証券会社の応援団」みたいなものだと感じています。
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いまGPIFが取るべきポジションとは?私の妄想
もし、ショーがいま、GPIFのファンドマネージャーで「禁じ手は何もないですよ」と言われたら、「日経平均の空売りと円買い」を仕掛けると思います(まず、採用される筈がないのですが・笑)
巨大年金基金が攻撃したら、ドル円は80円とかになる可能性だって十分にあります。
もちろん、これは極端な例ですが、もし、現在の運用体制に大きな批判が集まって、結果、日本株式の運用割合を減らすとでもなったら、もう大変な暴落になります。
現時点はまだ5兆円といっても、3%強の損失ですから、大したことはないのですが、今後、さらに日本株式が下落していくと、国民の間に将来不安がますます広がっていく恐れは十分にありますね。
それと、これは余談ですが、昨年の損失の5兆円にもう少し足せば、例えば日本郵政の時価総額5兆円といった感じです。
外国の有力企業で、どちらかというと日本と外交でしっくり行っていない国の会社の株式を買い占めて揺さぶりを掛けるとか、やって欲しいものだと思っています。他国のソブリンファンドは、そのあたり、かなりしたたかにやっていますからね。
『海外投資とネットビジネスで海外移住、ハッピーライフ』(2016年7月6日号)より
※太字はMONEY VOICE編集部による
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明るい希望が見いだせないサラリーマン生活から脱却すべく、国内不動産投資から海外投資に目指した40歳独身男が、2012年6月をもってサラリーマンリタイヤ。投資インカムに加え、インターネットビジネスも開始し、タイ バンコクに移住、稼ぎは大きく、生活コストは小さく、ハッピーライフを追求していきます。