スポーツ産業市場は政府が2025年までに15.2兆円まで拡大する目標を掲げています。そこで今回は、2020年に注目しておきたい国策スポーツ関連銘柄をご紹介します。
東芝グループでエンジニアを経験後、金融業界に転身。上場証券会社、独立系投資顧問会社で営業、企画、マーケティングなどを担当。2017年にアレス投資顧問株式会社を共同創業。青山学院大学の亀坂安紀子教授が、ノーベル経済学賞を受賞したYale大学のロバート・シラー教授と共同で実施している株式市場に関する国際比較調査に協力するなど株式市場の発展に向けた業務にも従事。日本ソムリエ協会認定「ワインエキスパート」の資格を持ち、ワインのティスティングで鍛えた鋭い嗅覚で株の銘柄も発掘する「株ソムリエ」。
大本命のスポーツイベント、東京オリンピック開催年が到来
ラグビーワールドカップ2019が大成功で注目度アップ
昨年9月20日から11月2日にかけて、日本でラグビーワールドカップ2019が開催されました。開催国の日本代表が史上初のベスト8進出を成し遂げたこともあり、大成功を収めましたね。
その影響もあってか、株式市場でも関連銘柄が上昇するなど市場テーマとしても盛り上がりをみせました。
大成建設<1801> 19%上昇:大会オフィシャルスポンサー
ゴールドウイン<8111> 27%上昇:日本代表一般向けレプリカジャージーを制作
ハブ<3030> 27%上昇:英国風パブ運営で、店内スクリーンで試合を放映
※上記の%表示は、開催1ヶ月前の8月20日終値から閉幕前日の11月1日までの期間の高値に対する上昇率です。同期間の日経平均の上昇率は11%
そして、いよいよ今年は東京オリンピック・パラリンピックが開催。さらに来2021年にはワールドマスターズゲームズ2021関西が開催されるなど、日本では3年連続で世界的なスポーツイベントが開催されるため、この3年間を「ゴールデン・スポーツイヤーズ」と呼ぶ動きがあります。
さらに、2012年時点でのスポーツ産業市場規模は5.5兆円ですが、政府が2025年までに15.2兆円までの2.7倍に拡大する目標を掲げており、スポーツビジネスは国策テーマと言っても過言ではありません。
そこで今回は、「ゴールデン・スポーツイヤーズ」の2年目で狙うべき国策スポーツ関連銘柄をいくつかチェックしていきたいと思います。
Next: これから注目しておきたい、スポーツ関連銘柄3選
eスポーツ×リアルスポーツのWスポーツ関連銘柄
コナミホールディングス<9766> 時価総額:約6,800億円
コナミホールディングス<9766> 日足(SBI証券提供)
スポーツ関連の成長分野として見逃せないのがeスポーツです。eスポーツ元年と言える2018年の日本eスポーツ市場規模は前年比13倍の48.3億円となったようですが、今後も年間平均成長率は19.1%とも予想され、22年には99.4億円までの拡大が予測されています。
先日出席したフォーブス主催イベント「Forbes JAPAN SPORTS BUSINESS AWARD」では、同社傘下のコナミデジタルエンタテインメントが展開する「eJリーグ ウイニングイレブン 2019シーズン」のeスポーツ大会が【イノベーション賞】を受賞。
10月に開催された茨城国体では、文化プログラムとしてeスポーツの都道府県対抗大会が開かれ、コナミホールディングスが開発する『eFootball ウイニングイレブン 2020』が採用されています。
萩生田光一文部科学相は、「eスポーツ」をスポーツと認定するかどうかについて協議を進める意向を示しておりますが、「ウイニングイレブン 2019」はモバイル版が累計2億ダウンロードを記録し、国内では毎日約100万人が楽しんでいますので、「eスポーツ」がスポーツと認定された際には、利用者からは国技として認識される可能性もありそうですね。
また同社はスポーツ施設で業界首位です。ラグビーワールドカップ効果で、一部ラグビークラブでは体験申し込みが急増したようですが、今年は水泳、ボルダリング、卓球など特に金メダルが狙える競技で、オリンピック効果による申し込み増加も期待できそうです。
スポーツに注目があつまることで、ブランド価値の向上に期待
アシックス<7936> 時価総額:約2,500億円
アシックス<7936> 日足(SBI証券提供)
同社は東京オリンピック・パラリンピックの国内最高水準のスポンサー「東京2020ゴールドパートナー」で、大会スタッフや都市ボランティアの提供ユニフォームの製作を担当しております。
先日開催された東洋経済新報社 X WPPグループ共催のブランドフォーラム、「グローバル視点に見る日本企業のブランドパワー」に参加してきましたが、「日本からグローバルへ飛躍するスポーツマーケティング~国境無きブランド価値を構築する~」のセッションには、同社の松下直樹取締役も登壇されておりました。
松下氏はいかにイノベーティブな商品を作っているかを見て欲しいと自信をのぞかせており、オリンピック関連のテーマ性とともに、本大会でのブランド価値向上が、中長期でのマーケティング効果として期待できそうです。
ちなみに上記画像の真ん中に飾ってあるのは、同社がサプライヤ契約を締結している南アフリカラグビー代表のユニフォームです。ご存知のように南アフリカ代表はラグビーワールドカップ2019で見事優勝しましたので、同大会でもブランド価値を高めた可能性は高いでしょう。
Next: 野球ボールの投球データを蓄積するスポーツテック銘柄
投球データを収集・解析するスポーツテックを手掛ける
アクロディア<3823> 時価総額:約57億円
アクロディア<3823> 日足(SBI証券提供)
同社が展開しているスポーツIoT「i・Ball Technical Pitch」は野球用のガジェットで、ボールを投げると内蔵センサーが投球データを測定。・球速・回転数・回転軸・球種・変化量・最大加速値(最も腕の振りが強かったときの値)・ピッチングタイムなどのデータが取得できます。
国内及び海外において販路を獲得しておりますが、すでに大学や高校の野球部を中心に5,000個を販売。登録ユーザー数はすでに2万を超え、100万球の投球データをクラウド上に蓄積しているようですが、蓄積された投球データの解析サービス等の新たな事業をKDDI<9433>との協業で「アスリーテック」として展開しております。
このボールは、硬式野球ボールの規格に準拠しているものの、19年12月には同じ機能を備えた軟式野球ボールを発売。軟式野球チームは、軟式野球連盟に登録したチームだけで4万8,000と、競技人口は硬式野球よりも格段に多いだけに、ユーザーの裾野は一気に広がることになりそうです。また野球は、北米と中南米のほか、中国や韓国などアジア地域でも人気があるだけに、今後の海外展開も期待できますね。
軟式野球ボールのほか、クリケットボールなどさまざまな球技にも広げていく方針ですが、10月にはセンサー内蔵サッカーボールの開発を発表。月額課金などでの収益化を模索しておりますので、今後もスポーツテック関連の材料が期待できそうです。
今年、東京オリンピック・パラリンピックが株式市場でも重要なイベントであることは間違いありませんが、スポーツ関連は高齢化先進国である日本が健康寿命を延ばすといった観点からも息の長いテーマですので、ぜひ継続してチェックしていきましょう!
【参照元】
※スポーツ未来開拓会議 中間報告 P9
※ラグビーワールドカップ効果で、一部ラグビークラブでは体験申し込みが急増
※アシックス ブランド
グローバル視点からみた日本のブランドタワー‐東洋経済新聞社×WPPグループ ブランドフォーラム
株式会社アシックス‐東京オリンピック・パラリンピック公式サイト
※アクロディア
球速や回転数などの投球データを計測できるIoTボール「Technical Pitch」‐engadget
TEEHNICAL PITCH
アクロディアと内外ゴム、センサー内蔵軟式野球ボール「テクニカルピッチ軟式M号球」の販売開始へ‐PR TIMES
アクロディア、センサー内蔵サッカーボールを開発、「CEATEC 2019」のKDDIブースにて展示‐PR TIMES
公益財団法人 全日本軟式野球連盟
image by : sondem / Shutterstock.com、アレス投資顧問
本記事は『マネーボイス』のための書き下ろしです(2020年1月10日)
※太字はMONEY VOICE編集部による
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