■要約
品川リフラクトリーズは、世界で五指に入る工業用耐火物メーカー。下位企業では容易にできない大型・最新鋭の設備を導入するなど、競争優位性を生み出す積極的な設備投資を行っている。主力の高炉・電炉市場向けでは顧客の操業安定化や環境経営に貢献する製品を提供している。
1. 2020年3月期第2四半期の連結業績と通期予想
2020年3月期第2四半期の連結業績は、売上高が前年同期比0.7%減の58,707百万円、経常利益が同11.7%減の4,903百万円となった。計画比では、売上高が2.6%減であったが、経常利益は0.1%増と予想並みであった。通期計画は期初予想が据え置かれた。売上高が前期比5.2%増の125,300百万円、経常利益が同6.2%減の10,000百万円、売上高経常利益率が8%となる。
2019年3月期は、粗鋼生産が前期比で1.9%落ち込んだものの、同社の耐火物の販売数量は増加、耐火物原料価格の上昇に対応した販売価格への転嫁、在庫評価益、原材料調達力の優位性の発揮、コークス炉工事の売上計上、コストダウンの寄与と好条件が重なった。3ヶ年中期経営計画の目標値となる2021年3月期の売上高1,230億円、売上高経常利益率8%に対し、2019年3月期実績は売上高が1,190億円、売上高経常利益率が9.0%を達成した。前期のような好条件がそろわないとの前提から、2020年3月期は期初から減益予想が立てられた。
2. 2020年3月期の鉄鋼会社の業績予想
高炉メーカー各社は、2020年3月期の利益予想をたびたび下方修正している。JFEホールディングスは、2020年3月期の鉄鋼セグメント利益予想を期初に1,050億円と予想した(前期実績は1,613億円)。それが、第1四半期決算発表時には700億円へ、第2四半期時点ではとうとうゼロとなった。上期に177億円の利益を計上しており、下期に同額の損失を出す予想となっている。最大手の日本製鉄は、鉄鋼事業の経常利益について、上期実績の492億円から下期はわずか8億円へ縮小すると予想している。通期利益予想の500億円は、前期比で2,246億円の減益となる。同社の鉄鋼業界への売上高依存度は8割を超えることから、影響が懸念される。
鉄鋼事業の予想利益の大幅な減少は、需要の一層の低下、高水準の在庫、鋼材市況の悪化から、数量と価格が共に下落するダブルパンチに見舞われるためである。国内市場では、造船、建設機械・産業機械及び建設分野で需要が一層低下するとみている。需要減の上、輸入鋼材の影響などから在庫は高水準が続き、生産調整を余儀なくされる。米中貿易摩擦の激化などを背景に、世界各地で需要が減少している。海外鋼材市況は、インド及びロシアミルの輸出攻勢で価格競争が激化している。中国の鋼材輸出は低位にあるものの、目が離せない。
3. 株主還元策
2019年3月期は、好業績を反映して、1株当たり年間配当金は前期比55円増の135円に引き上げられた。3期連続の増配となる。2020年3月期は、中間・期末とも65円、1株当たり年間配当130円を計画している。予想配当性向は、前期並みの20.2%となる。
■Key Points
・2020年3月期第2四半期は、国内粗鋼生産が落ち込むも底堅い業績
・2020年3月期下期は、高炉メーカー各社の業績がさらに悪化へ
・2020年3月期の1株当たり年間配当金は130円を計画
(執筆:フィスコ客員アナリスト 瀬川 健)