先週の新興市場では、日経平均とともにマザーズ指数、日経ジャスダック平均も上昇した。欧米で新型コロナウイルスの感染拡大ペースが鈍化しつつあるとの期待などから、東京市場でも株価指数先物の買い戻しが強まった。株式相場全体として下値不安が和らぎ、新興市場では個人投資家の押し目買いが優勢となった。なお、週間の騰落率は、日経平均が+9.4%であったのに対して、マザーズ指数は+12.9%、日経ジャスダック平均は+5.6%だった。マザーズ指数は日足チャート上で25日移動平均線を上回り、終値としては3月6日以来の水準を回復している。
個別では、メルカリが週間で10.0%高、ラクスが同11.3%高とマザーズ時価総額上位は全般堅調だった。弁護士ドットコムは同21.1%高と大きく上昇。売買代金上位では遠隔医療関連のメドレー、直近上場のサイバーセキュリティクラウドやNexTone、東京海上HDとの資本業務提携を発表したPKSHA Technologyなどが賑わった。また、新薬開発でマイルストーンを達成したステムリムが週間のマザーズ上昇率トップとなった。一方、所属タレントの退所が伝わったUUUMなどが下落率上位に顔を出した。ジャスダック主力もワークマンが同21.8%高、ハーモニック・ドライブ・システムズが同16.8%高と全般堅調。売買代金上位では出前館が賑わった。大阪府が出前代行業者に補助制度を設けると発表したことなどが材料視されたようだ。また、新型コロナ治療で臨床治験を開始したメディシノバが週間のジャスダック上昇率トップとなった。反面、メディカル一光グループやビーマップが下落率上位に顔を出した。IPOでは松屋アールアンドディが新規上場し、公開価格を下回る初値形成となったものの、その後大きく値上がりした。
今週の新興市場では、ひとまずマザーズ指数の戻り歩調が続きそうだ。欧米株高とともに日経平均が堅調に推移している点は安心感につながり、新興市場でも軟調な出足だった直近IPO銘柄が賑わうなど、個人投資家のマインドは改善しつつある。しかし、国内では新型コロナの感染拡大が続いており、政府が打ち出した経済対策に対しても物足りないとの見方が広がってきた。こうした不安材料を抱え日経平均が戻り一服となれば、新興市場でも目先の利益を確定する売りが強まる可能性がある。
今週は、4月13日にウエストHD、農業総合研究所、Sansan、エヌ・ピー・シー、識学、14日にUUUM、マネーフォワード、リックソフト、ロゼッタ、バリュエンスHDなどが決算発表を予定している。SansanやマネーフォワードといったSaaS(ソフトウェア・アズ・ア・サービス)企業を中心に成長期待の高い新興企業の発表も多く予定されており、マザーズ指数の戻りを後押しするか注視したい。
IPO関連では、先週3社の上場取り止めが発表された。年初来のIPO中止件数は17社まで増えている。ただ、4月24日上場予定のさくらさくプラスは価格を引き下げ、公開株数も減らしたうえでブックビルディング期間に入った。同社は保育所を運営するが、政策の追い風期待でどこまで需要を積み上げられるか注目したい。