■業績動向
1. 2020年3月期の業績概要
コネクシオの2020年3月期の業績は、売上高が前期比20.8%減の209,005百万円、営業利益が同0.5%増の10,330百万円、経常利益が同0.2%減の10,515百万円、親会社株主に帰属する当期純利益が同1.1%増の7,000百万円となった。
販売台数は、2019年6月からのNTTドコモの分離プラン移行、同年10月からの改正「電気通信事業法」の施行や消費税増税、期末にかけてのコロナの影響などにより前期比19.8%減の201.8万台となったが、端末価格が比較的安定したこと(値崩れが少なかったこと)、販売台数に連動しない手数料収入の増加やスマートフォン向け周辺商材の販売を強化したこと、法人向けモバイルヘルプデスク導入社数の伸長と採算性改善などにより売上総利益率は25.0%(前期19.7%)へ改善した。その結果、減収にもかかわらず売上総利益額は52,245百万円(同0.7%増)と増益を維持したが、特にキャリアビジネスと連動しない独自収益の売上総利益額は前期比で9.3%増となり売上総利益の増加に寄与した。加えて販管費を前期比0.7%増の41,914百万円に抑制したことから、営業利益は9期連続の増益を達成した。
営業利益のセグメント別増減では、コンシューマ事業が370百万円減、法人事業が736百万円増、全社費用が313百万円減(費用の増加)となり、前期までの先行投資により収益力が改善した法人事業が利益をけん引した。
2. セグメント別状況
(1) コンシューマ事業
改正「電気通信事業法」の施行等の影響を受け、販売台数が前期比20.0%減の193.0万台となったことなどから、セグメント売上高は191,810百万円(同21.6%減)となった。内訳としては、商品販売が131,844百万円(同26.1%減)と大幅減となったが、手数料収入は59,965百万円(同9.4%減)にとどまった。
一方でスマートフォン向け周辺商材(nexiplus、nexiパッケージ等)の販売を強化したこと、販売台数に連動しない手数料を獲得したこと、分離プランへの移行に伴い端末価格が安定したこと(値引きが抑制されたこと)などから利益率が大きく改善し、セグメント利益は13,196百万円(同2.7%減)と小幅の減益にとどまった。特に期末のnexiパッケージ会員数は前期末比で118%増(約2倍)となり、利益増に寄与した。
(2) 法人事業
売上高は前期比11.1%減の17,194百万円となった。販売台数が8.6万台(同18.1%減)と減少したことなどから、商品売上高は同35.4%減の4,219百万円となったが、モバイルヘルプデスクの導入社数の伸長と採算性の改善などから手数料収入は同3.0%増の9,123百万円となった。ちなみに同サービスの導入社数は前期末比で6.2%増加した。プリペイドカード販売は3,851百万円(同2.7%減)となった。ヘルプデスクの収益が引き続き伸長したこと、モバイルソリューションを積極的に展開したことなどから利益率が大きく改善し、セグメント利益は前期比75.4%増の1,714百万円となり、全体の増益に寄与した。
3. コロナの影響
コロナの影響は2020年3月から出始め、第4四半期の業績を押し下げた。来店客数は1月が前年同月比3%減、2月は同2%減、3月は同16%減となり、第4四半期の販売台数は51.8万台(前年同期比23.7%減)となった。しかし一方でポジティブな動きも見られた。特に法人事業においては、テレワーク導入や働き方改革の推進などの機運が高まり、ヘルプデスクの導入やソリューション提案の機会が増加した。
さらに同社では、当面は従業員にとっても厳しい事業環境が続くと予想し、3月中に全社員にマスクを配布(計15万枚)すると同時に特別賞与を計上(正社員・契約社員へ一律8万円 / 5月支給)した。2020年3月期の業績は、この費用を計上しても増益を達成していることは特筆に値すると言えるだろう。
同社では、このようにコロナの影響(事実、対応等)を適切に開示してきたが、この点が東京証券取引所からも評価され、「新型コロナウイルス感染症の影響に関する開示の好事例」の1社に選ばれている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 寺島 昇)