今週の新興市場では、マザーズ指数が大幅に上昇し、2018年6月以来およそ2年2カ月ぶりに1100pt台を回復した。決算発表やオプション8月物の特別清算指数(SQ)算出を通過し、東証1部の売買は低迷。日経平均も為替相場の円高傾向や米中対立への懸念から上値の重い展開となった。こうした市場環境において、米国のハイテク株高や先の決算で高まった成長期待も後押しする形で、個人投資家の新興株シフトが強まったとみられる。なお、週間の騰落率は、日経平均が-1.6%であったのに対して、マザーズ指数は+8.1%、日経ジャスダック平均は+0.8%だった。
個別では、メルカリが週間で4.8%高となるなどマザーズ時価総額上位は全般堅調。特にクラウド会計ソフトのフリーが同25.4%高、ネットショップ作成支援のBASEが同37.5%高と大幅に上昇した。全般に「ウィズコロナ」を意識した物色が活発だったうえ、BASEは前の週末に発表した決算もポジティブサプライズと受け止められたようだ。売買代金上位ではモダリスが大幅高となるなど直近IPO銘柄が引き続き賑わい、ティアンドエスに至っては2倍超となった。一方、アンジェスは伸び悩んで同2.5%安となり、ITbookHDなどが週間のマザーズ下落率上位に顔を出した。ジャスダック主力はワークマンが同4.5%安、日本マクドナルドHDが同3.7%安と軟調だったものの、セリアが同3.2%高、出前館が同7.0%高となり高安まちまち。売買代金上位ではSpeeeなどが大きく買われ、イメージ情報開発が週間のジャスダック上昇率トップとなった。一方、ディ・アイ・システムなどが下落率上位に顔を出した。IPOでは、8月20日にニューラルポケットが新規上場したが、ここまで2日続けて買い気配のまま初値持ち越しとなっている。
来週の新興市場では、マザーズ指数の好調が続きそうだ。グロース(成長)株物色を支えてきた米国の「期待インフレ率上昇に伴い実質金利が低下」という構図に揺らぎが見え始めた点はやや気掛かり。とはいえ、マザーズ指数が上値追いの展開となるなか、マザーズ売買代金は1日2000億円台半ばから後半まで膨らんでおり、個人投資家の資金回転が利いている印象。今週末の米国市場でも主要ハイテク株は上昇しており、「ウィズコロナ」「アフターコロナ」を意識した新興株物色は根強く続くだろう。
フリーは今週半ばに高値もち合いを大きく上抜けると、そのまま上値追いの展開に入っている。BASEやマクアケも上場来高値を更新中。株価バリュエーションを見ると過熱感は否めないが、需給状況が極めて良好なことと、「成長株の上昇に乗りたい」投資家心理の強さが窺える。また、マザーズ指数の上昇に伴い、出遅れている新興株に物色のすそ野が広がる可能性もある。なお、来週は8月28日にプレシジョン・システム・サイエンスなどが決算発表を予定している。
IPO関連では、8月25日にインターファクトリーがマザーズへ新規上場する。クラウドEC(電子商取引)プラットフォームを手掛け、初値を飛ばしてきそうだ。週明けはニューラルの初値にも注目したい。なお、今週はまぐまぐ(9月24日、ジャスダック)など6社の新規上場が発表されている。