■Jトラストの今後の見通し
新型コロナウイルス感染症拡大により世界各国で非常事態宣言が発令され、世界的に経済活動は大きく停滞しており、今後も予断を許さない市場環境が続くと予想される。同社グループは、韓国及び東南アジアを中心にグローバルに事業を展開しており、同感染症の拡大が国内及び海外の子会社の業績に影響を及ぼす可能性がある。今後、同感染症終息に伴う移動制限の緩和、経済活動の再開等により業績の回復が期待されるものの、現時点では各地域での終息時期や回復速度を見通すことが困難であり、合理的な業績予想の算出ができない状況にある。
ただ、同社グループは、2020年8月12日に不動産事業の売却を勘案して、2020年12月期の業績予想を修正しており、営業収益78,511百万円、営業利益1,731百万円、税引前利益1,436百万円、親会社の所有者に帰属する当期損失は1,531百万円を見込んでいる。なお、第2四半期累計で親会社の所有者に帰属する四半期利益を計上していたのに対し、通期で親会社の所有者に帰属する当期損失を予想する理由としては、主に法人税負担によるものである。また、今後、新型コロナウイルス感染症拡大による実体経済の悪化次第では、下振れのリスクもあることに留意したい。
セグメント別には、2020年12月期第2四半期累計の業績はおおむね計画どおりに推移していることから、同社では総合エンターテインメント事業以外の通期の連結業績予想を据え置いている。
すなわち、日本金融事業では、新型コロナウイルス感染症拡大の影響から海外不動産担保ローンの新規実行が大きく伸びていない一方、法人向け不動産担保ローンの残高が伸長しており、営業収益8,330百万円、営業利益2,930百万円と堅調な業績を見込む。韓国及びモンゴル金融事業でも、景気動向によって浮沈しやすい業種への貸付を意識的に抑制し、債権の小口分散を図ることで影響を最小限にとどめることで、営業収益38,876百万円、営業利益5,835百万円を予想する。また、不動産事業を外部譲渡した非金融事業でも、エンターテインメント事業でアイドルグループを運営する会社を買収したことで、営業収益7,222百万円、営業利益970百万円を見込んでいる。
一方、東南アジア金融事業については、インドネシアでは新型コロナウイルス感染症拡大に伴い人々の行動制限やオフィス・工場等の閉鎖が求められていた。各銀行では預金流出が相次いだが、BJIでは積極的な営業により大きな減少は食い止めた。ただ、大規模な不良債権処理を断行したことで、現在も貸出残高が損益分岐点を下回っていることなどから、東南アジア金融事業では営業収益21,671百万円、営業損失3,423百万円を見込む。今後は銀行業で体制のスリム化・効率化を進めながら顧客基盤拡大により収支の改善を図るとともに、JTOとのシナジー効果、JTRBの収益貢献等により業績回復を計画しており、2021年12月期の黒字化を目指している。また、投資事業でも営業収益990百万円に対して、訴訟費用の継続等から営業損失1,853百万円を見込んでいるが、今後は2019年3月期に計上した貸倒引当金の戻入を実現する計画だ。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 国重 希)