どんな業種であっても欠かせないのが敬語。しかし、きちんとした敬語を使えている方は、そう多くないようです。メルマガ『幸せを呼ぶ!クレーム対応術』では、わかりやすい例文を用いて「正しい敬語」を紹介する、社会人必携の1冊を勧めています。
「これが正しい敬語です」 金井良子・著 中経出版
今回も、お客さま対応、クレーム対応をおこなううえで、どの本が参考にできるのか、書評をお伝えします。第30回目でご紹介する本は、「これが正しい敬語です」です。この本が刊行されたのは、2007年2月ですが、「この相手・この場面 これが正しい敬語です」という1995年に刊行されたこの本を、改題、全面的に再編集したものだそうです。
Amazonより抜粋した、著者・金井良子さんのプロフィールです。
「話し方マナーズ」代表。
1955年から、言論科学振興協会理事を17年、話力総合研究所常務理事を8年つとめる。
1980年、「話し方マナーズ」を設立。話し方・聞き方・話の心構え・話し方と人間関係とのかかわり・言葉づかい・スピーチの仕方・ビジネスマナー・接遇応対・能力開発などの講演、実技指導を行なっている。
いくつか検索ワードを入れて、著者のことを調べましたが、話し方マナーズについても、金井良子さん個人についても、20冊ほどある著書以外には、ほとんど情報がありませんでした。
経歴から考えると、20歳そこそこで、言論科学振興協会理事になったとして、今年で81歳。すでに第一線を退かれたのでしょうか。一貫して、話し方やマナーについて、研究指導されていた方のようです。
では、目次から本の中身を見ていきます。
この本のあらすじ
はじめに
パート1:読んで覚える これが敬語の基本です
パート2:見て覚える これが正しい敬語です
1:電話を受ける
2:電話をかける
3:訪問する
4:接客する(受付にて)
5:接客する(応接室にて)
6:社内にて
7:社外行事
巻末資料
この本の使い方は、著者ご本人が、「あらすじ」に書いてくれています。
まず、パート1では敬語の基本としての種類や使い方などを紹介しています。パート2では、場面ごとに敬語の実践的な使い方を紹介しています。「見て覚える」ため、代表的な例文を1つ取り上げていますので、すぐに活用できるはずです。
(P3より抜粋)
また、「はじめに」のP5では、
若い人達が言葉づかいや敬語で迷ったときに、すぐに使える本があればと思い、「見やすく」「わかりやすく」「役に立つ」をモットーに、この本を書きました。
とのことなので、話し方やマナーのプロが書いた、「初心者から使える敬語の教科書」として扱うのがよさそうです。
ところで、クレームを訴えてくる相手は、程度の差はあっても、ほとんどの場合、感情を害しています。商品やサービスに対して、すでに怒っていたり、期待はずれだったと落胆している人の感情は、敬語の使い方1つで、さらに悪くなることもあります。
わたしは、DELLのPCをメインで使っていますが、購入後、すぐにトラブルがありました。コールセンターに電話をかけたところ、担当者はネイティブの日本人ではありませんでした。コンタクトセンターは、2014年の記事によると、川崎、宮崎のほか、中国の大連にあるようですね。
● PC ウォッチ「デルは、なぜ中国・大連からサポートを行なうのか?」
誤解のないように申し上げておきますが、DELLテクニカルサポートの技術力、商品知識には問題はなく、応対も、精一杯丁寧にしてくれていました。しかし、
「いや、ソコじゃない、もっと下でス」
「ソコにないですか? おかしいでスね?」
「待ちまスので、どうぞやってミテください」
と、このような敬語だったため、「自分のいいたいことが、ちゃんと伝わっていないかもしれない」と、ずっと考えながら話していたのを覚えています。結局、そのトラブルは、わたしの勘違いだったのですが、きちんとした敬語の重要性を、思い知らされた出来事でした。
反対に、多少、技術力や業務知識に難があっても、きちんとしたことばで、お客さま対応ができれば、相手から信頼を得られることも、よくあります。この本のP22にはこう書かれています。
敬語のわきまえがなく、適切な使い方ができないと、あなた自身の知識や教養まで疑われてしまうのです。敬語を上手に使えるかどうかは、その人の品位や教養の程度をはかるバロメーターになっている、といってよいかもしれません。
これは、
・敬語が適切に使えることで、
・一定の品位や教養の程度があることが相手に伝わり、
・持っている知識や技術も信じてもらいやすくなる
ということでもあります。そして、相手から信頼を得られれば、大抵のクレームは乗り越えられるはずです。
パート1では、このように、敬語の必要性と、基本的な使い方がわかりやすく書かれています。パート2では、1ページに1つ、実例を挙げ、良い表現、悪い表現を、一目で確認できるような構成になっています。
わたしも、やってしまいがちなNG表現がわかって、とても参考になりました。例えば、P87の「名指し人休暇」では、
「申し訳ありませんが、山本は本日、休暇をとっておりますが…」
使ってもよい言い換え例として、
「申し訳ございません。本日は休んでおります」
「10日~15日まで休みでございます」
そして、悪い例として
「本日はお休みをいただいております」
あれ? これって、みなさんも、うっかり言ってませんか?
だめな理由も
「お」はつけません。「休ませて」が正解です。
このようにきちんと書かれており、しかも、とてもわかりやすいですね。
巻末の付録にある、
・親族の呼び方
・紹介の順序と言葉
・忌み言葉、あいさつ言葉
・よく使う敬語
・知っていると便利な言葉
などは、一生使える便利な一覧なので、仕事中はすぐに手の届くところにおいておくと、安心かもしれません。新卒はもちろん、敬語に自信がある人でもきっと気づきがあるはずなので、日本語で話すすべての人におススメできる1冊です。
image by: Shutterstock
『幸せを呼ぶ! クレーム対応術』
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