日経新聞朝刊にこんな記事が掲載されました。「社員口コミ 投資も左右 投稿もとに企業文化を定量評価」。この記事を見て「あー気づかれてしまったか」と思いました。何を隠そう私も転職サイトを投資の貴重な情報源としているからです。(『バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問』栫井駿介)
株式投資アドバイザー、証券アナリスト。1986年、鹿児島県生まれ。県立鶴丸高校、東京大学経済学部卒業。大手証券会社にて投資銀行業務に従事した後、2016年に独立しつばめ投資顧問設立。2011年、証券アナリスト第2次レベル試験合格。2015年、大前研一氏が主宰するBOND-BBTプログラムにてMBA取得。
投資の判断材料に。下手なアナリストよりもわかりやすくて的確だ
転職サイトは貴重な情報源
日経新聞朝刊にこんな記事が掲載されました。
転職や就職を考えたときにまず気になるのは、その会社の評判だろう。中でも参考になるのは、実際に働いている社員の口コミ情報だ。そんな口コミサイトが林立する中、書き込まれた口コミ情報をビッグデータとして分析し、投資に活用する取り組みが始まっている。会社側が公表するデータや資料からは読み取れない企業風土や信用力などが分かるとして米国では投資に活用されているサイトもある。今後、日本でも投資判断を下す際の手掛かりの一つになるかもしれない。
この記事を見て「あー気づかれてしまったか」と思いました。何を隠そう私も転職サイトを投資の貴重な情報源としているからです。
新聞や雑誌では決して見られないオブラートに包まない意見
ただし、使い方は記事にあるような「スコア」で定量化を図るというものとは少し異なります。もっと定性的な、社員の「生の声」を参考にするのです。
私の投資の情報源は、原則として有価証券報告書を中心とする開示資料です。これを読めば、その企業のビジネスモデルや強み、リスクをおおよそ把握することができます。
もちろん、そこに書かれていることだけで十分ではありません。そのため、ホームページや新聞・雑誌記事からインタビューや取材記事を読むことで、経営者の考え方などわからない部分を補います。
しかし、ホームページや新聞・雑誌の記事は少なからず「バイアス(偏り)」がかかっているものです。ホームページでは自社のことをよく見せようとするのが当たり前ですし、新聞・雑誌もよほど不祥事でもなければ悪いことは書きません。
そこで活躍するのが「転職口コミサイト」です。サイトの性質上匿名が絶対条件であり、実際に勤めている(勤めていた)社員のオブラートに包まない意見がゴロゴロと書かれています。
ここまでの内容は、直接社員にインタビューしてもなかなか答えてくれるものではないでしょう。匿名だからこそ悪い意見も書け、書いている内容も自分のことであるため切実です。
Next: インサイダー情報ギリギリの新鮮な情報がゴロゴロ転がっている
投資に直結する内容も豊富。仮説の検証に最適
私がよく参考にするサイト『Vorkers』では、「企業分析」「経営者への提言」など投資に直結することも書かれており、ある意味インサイダー情報ギリギリの、新鮮な情報を得ることができるのです。
某航空会社の口コミ。下手なアナリストよりわかりやすく、的確に書かれている。
ただし、これを読んだりスコアを集計しただけで投資を決めるのは早計です。社員に甘い会社が必ずしも株主にとって望ましいとは限りませんし、実力主義だからこそスコアが低くなることもあります。
使い方としては、まず有価証券報告書などの客観的な資料でビジネスに関する「仮説」を立て、それを検証する形で社員の口コミを見るのが良いでしょう。自分の考えが正しいかどうかを判定でき、気づかなかった事実を新たに発見することもあります。
どんな情報も使いようです。情報の性質を理解しつつ、先入観を持たずに正しく投資に役立てたいものです。
※上記は企業業績等一般的な情報提供を目的とするものであり、金融商品への投資や金融サービスの購入を勧誘するものではありません。上記に基づく行動により発生したいかなる損失についても、当社は一切の責任を負いかねます。内容には正確性を期しておりますが、それを保証するものではありませんので、取扱いには十分留意してください。
『バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問』(2018年3月13日号)より
※太字はMONEY VOICE編集部による
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【毎日少し賢くなる投資情報】長期投資の王道であるバリュー株投資家の視点から、ニュースの解説や銘柄分析、投資情報を発信します。<筆者紹介>栫井駿介(かこいしゅんすけ)。東京大学経済学部卒業、海外MBA修了。大手証券会社に勤務した後、つばめ投資顧問を設立。