現在では、著名投資家が「どの銘柄を購入して、どの銘柄を売却したのか」という売買情報が、インターネットを介して一瞬にして世界を駆け巡ります。そして、いま現在、どういうポートフォリオになっているのかもわかります。
それでは、私たちのような素人が著名投資家のポートフォリオを真似することで、素晴らしい投資結果を得られるかどうか?
本稿ではこの疑問に応えるべく、具体的に検証していきたいと思います。(『ウォーレン・バフェットに学ぶ!1分でわかる株式投資~雪ダルマ式に資産が増える52の教え~』東条雅彦)
バフェットの成績を上回る方法も?実用的な「コピー投資」を検証
最も影響力のある投資家「ウォーレン・バフェット」
私たちのような素人は、著名投資家のポートフォリオを真似することで、素晴らしい投資結果を得られるかどうか?
この検証で利用するのは、世界一の投資家ウォーレン・バフェットが経営する投資会社バークシャー・ハサウェイのポートフォリオです。
バフェットの生涯の運用成績は年利約20%となります。年利20%で世界一の投資家になれると聞くと、一見、低いリターンに見えるかもしれません。しかし、それは異なります。
人間の脳には理解しがたい「複利マジック」によって、資産は指数関数的に増えていきます。以下のグラフを見れば、年利20%という運用成績がどれだけ凄いのかがわかると思います。
<年利20%で100万円の資産を運用していく>
長期にわたって年利20%の運用成績を続けることで、100万円が26年後には1億1,448万円に化けます。すべての長期投資家はこの「複利マジック」を炸裂させることを意識していくべきです。
10年前のバフェットの投資先は?
今から10年前の2007年12月末時点で、バフェットは次の銘柄に投資していました。
<バークシャー・ハサウェイ投資先一覧 2007年12月末>
出典:Annual Report
少し本題から話が逸れるかもしれませんが、バークシャーの投資先で時価総額(Market)が取得価格(Cost)の10倍以上になっているのは、コカ・コーラのみです。いわゆる、テンバガー(10倍株)を保有し続けるのはなかなか難しいということがわかります。
まず、検証の前に以下の銘柄は投資対象から外します。
・バーリントンノーザンサンタフェ(後にバークシャーの完全子会社になったため)
・クラフトフーズ(後にハインツと合併して、バークシャーの関連会社になって、投資部門から外れたため)
Next: 真似して上位5銘柄を保有してみると…驚きの結果に!
真似して上位5銘柄を保有してみよう
さて、私たちが2007年12月末時点のバフェットのポートフォリオ「上位5銘柄」を真似して投資するとします。
上位銘柄に絞って検証する理由は、そもそも下位銘柄はバフェットがそれほど重視していないと思われるためです。
バフェットに限らず、全てのアクティブ投資家は「自信のある銘柄」に対してできるだけ多くの資金を割り当てようとします。バフェットが「自信あり」と見なしている銘柄を真似して保有することで、より高いパフォーマンスを期待できるはずです。
そこで、取得価格(Cost)ベースと時価総額(Market)ベースの2種類のポートフォリオを検討していきます。
取得価格ベースと時価総額ベースで見た時の上位5銘柄を合わせると、下記の7銘柄になります。
- ウェルズ・ファーゴ
- ジョンソン・エンド・ジョンソン
- USバンコープ
- アンハイザー・ブッシュ
- コカ・コーラ
- アメリカン・エキスプレス
- プロクター・アンド・ギャンブル
これらの銘柄が5年後、10年後にどのぐらいの利益をもたらしたのかを調べてみました。その結果は下記の通りです。
さすがはバフェットが選定していた主力銘柄です。マイナスリターンを記録した銘柄はなんとゼロ!この点は凄いと思います。
そして、バークシャー・ハサウェイの平均年利7.7%を上回っている銘柄もいくつかあります。
果たして私たちがバフェットの主力銘柄を真似してポートフォリオを組んで、バークシャー・ハサウェイの平均年利7.7%を超えることが可能なのか?
その鍵を握るのは「各上位銘柄に対してどのぐらいの割合で投資していくか」になります。
Next: バフェット銘柄の上位陣をどのぐらいの割合で保有すべきか?
バフェット銘柄の上位陣をどのぐらいの割合で保有すべきか?
結果論で言えば、
- アンハイザー・ブッシュ
- ジョンソン・エンド・ジョンソン
- ウェルズ・ファーゴ
の3銘柄に集中投資しておけば、バークシャー・ハサウェイのリターンを軽々と上回ることができました。
しかし、それはあくまで結果論です。2017年12月末時点で未来のリターンを正確に予想できるわけがありません。
そのため、バフェットの選んだ上位銘柄に分散投資をして、ポートフォリオを組んで、ミニバークシャーを作るというのが、より現実的な選択肢になろうかと思います。
つまり、バフェットが力を入れているお気に入りの銘柄に投資して、「いいとこ取り」をするという作戦です。このいいとこ取りが本当に可能なのかどうかを、複数のパターンで検証していきます。
パターン1「取得価格の高い上位5銘柄をそのまま真似する」
先程の取得価格ベースの投資割合をそのまま真似してポートフォリオを組んでみます。上位5銘柄の合計取得価格から、各銘柄の投資割合を求めました。
この投資割合に従ってポートフォリオを構築すると、次のような結果が得られます。
ポートフォリオ全体の平均年利は9.0%で、バークシャーの平均年利7.7%を1.3%程、上回る結果になりました。
パターン2「時価総額の高い上位5銘柄をそのまま真似する」
次に取得価格ベースの投資割合をそのまま真似してポートフォリオを組んでみます。上位5銘柄の合計時価総額から、各銘柄の投資割合を求めました。
この投資割合に従ってポートフォリオを構築すると、次のような結果が得られます。
ポートフォリオ全体の平均年利は7.4%で、バークシャーの平均年利7.7%を0.3%程、下回る結果になりました。
結果として、取得価格をベースにしたポートフォリオの方が「いいとこ取り」できました。時価総額をベースにしたポートフォリオでは少しバフェットにリードを許してしまいました。
それでは常に取得価格をベースにしたポートフォリオの方がいいのか?と言われると、少し疑問に感じる部分があります。イマイチ説得力に欠けると思うのです。
Next: バフェットのパフォーマンスを超えられる方法もある?
もっと合理的で良い方法はないのか?
そこで、もっと合理的で良い方法はないだろうか? もっと説得力のある方法はないだろうか?
そこで私が考えたのが「取得価格と時価総額の差が小さな銘柄」でポートフォリオを組むという方法です。
そもそもバフェットが選定する銘柄は株価が上昇する可能性が高い。そして、取得価格と時価総額の差が小さい銘柄は、まだ株価が上昇していないと考えられます。
そのため、「まだ株価が上昇していない銘柄」に集中投資することで、バフェットのパフォーマンスを超えられるのでは!?という発想です。
パターン3「株価上昇率の低い銘柄に集中投資する」
早速、取得価格と時価総額の小さい(=株価上昇率の低い)銘柄を抽出してみます。全銘柄を対象に抽出しようとすると、投資額の小さな銘柄(=元々、力を入れていない銘柄)が多くヒットしてしまいます。
そのため、取得価格が15億ドル以上の銘柄に絞って抽出しました。さらに株価上昇率が30%未満の銘柄に限定しました。
バフェットの買値よりも離れすぎている銘柄に投資すると、パフォーマンスが落ちる可能性が高くなると考えたためです。
3銘柄が抽出できました。バフェットとほぼ同じ価格で取得できます。この3銘柄の合計取得価格から各銘柄の投資割合を求めると、次のようになります。
この投資割合に従ってポートフォリオを構築すると、次のような結果が得られます。
ポートフォリオ全体の平均年利は9.3%で、バークシャーの平均年利7.7%を1.6%程、上回る結果になりました。
Next: バフェットを真似るのは「大いにアリ」! しかしもちろんリスクも
バフェットの選定した銘柄を真似るのは「大いにアリ」!
バフェットはとても「安全域」を重視する投資家です。銘柄の選定も慎重に行っており、長期投資を前提にして、割安な銘柄に投資しています。
そのため、ある程度、バフェットの選定した銘柄を参考にしてポートフォリオを組んで、「ミニバークシャー」を自分で作っても、それ程、悪い結果にはならないでしょう。
ただし、バフェットは「神」ではありません。失敗することもあります。
あと、本稿では敢えて触れていなかったのですが、バフェットは意外にも比較的、短期で保有銘柄を放出することもあります。
次回はその点も踏まえて、バフェットに真似ぶリスクについても取り上げていきます。さらに、バフェットの生涯平均年利20%に近づく方法はあるのか?なども探っていきます。
まとめ
【1】
2007年12月末から2017年12月末の平均年利は、
◎バークシャー・ハサウェイ→平均年利7.7%
◎パターン1「取得価格ベースの投資割合をそのまま真似する」→平均年利9.0%
◎パターン2「時価総額の高い上位5銘柄をそのまま真似する」→平均年利7.4%
◎パターン3「株価上昇率の低い銘柄に集中投資する」→平均年利9.3%
【2】
バフェットの真似をして、ミニバークシャーを自分で作ってもそれ程、悪い結果にならない。バフェットが力を入れている投資先に重点投資することで、バークシャーのリターンを超えることも可能である。
【3】
バフェットは意外にも比較的、短期で保有銘柄を放出することもある。そのため、バフェットの真似をするリスクもある。(詳しくは次回以降にお伝えします)。
『ウォーレン・バフェットに学ぶ!1分でわかる株式投資~雪ダルマ式に資産が増える52の教え~』(2018年4月7日号)より一部抜粋
※太字はMONEY VOICE編集部による
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