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末期がん患者の「自宅で安らかに死にたい」をかなえる、公的介護保険の正しい利用法

40歳以上なら、末期がん患者も介護保険を利用できるのをご存じですか?しかし介護保険は要介護認定を受けなければサービスを利用できず、認定までには約1ヶ月のタイムラグが。そのため、介護認定が下りる前に病状が急変して亡くなる患者さんも少なくありません。

末期がん患者が自宅で安らかな最期を過ごすには、それを支える家族の心構えはもちろんのこと、介護保険に関する知識が大切です。ファイナンシャルプランナーの新美昌也氏が解説します。

「末期がんは公的介護保険の対象」まずは制度をおさらい

40歳になれば誰でも介護保険に加入します。介護サービスは、原則65歳から受けることができます。

40歳~64歳までは要介護になった原因が16種類の特定疾病に該当した時だけ介護サービスを受けることができ、末期がんは特定疾病のひとつです。

介護サービスを受けるためには、市区町村の介護保険担当課や地域の包括支援センターで本人や家族が申請書を提出し、要介護認定の調査、判定(1次・2次)を経て要介護度の認定を受けます。

自宅で生活を続けたい場合は、居宅介護支援事業者などに所属するケアマネージャーに相談し、本人の状態や希望に応じたケアプランを作成してもらいます。そして、このプランに基づいて介護サービスが提供されます。

介護サービスは要介護度に応じた利用限度額の原則1割負担で利用できます。申請から認定まで約1ヶ月かかりますが、認定は申請日にさかのぼって効力を生じます。そのため、認定前でも、申請後、暫定ケアプランによって介護サービスを受けることが可能になっています。

ただし、この場合はいったん費用を全額立て替え、認定後に自己負担分を除き払い戻してもらうことになります。要介護度ごとに利用限度があり、これを超えて利用した分は払い戻しの対象となりませんので注意しましょう。

Next: 介護保険のココに注意!認定前に亡くなれば自己負担アップも


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介護保険のココに注意!認定前に亡くなれば自己負担アップも

問題点1:末期がん患者は病状が急変し、認定が下りる前に亡くなることがある

この場合、暫定ケアプランで受けた介護サービスが全額自己負担となってしまう可能性があります(自治体によって対応が異なるようです)。

このような状況を踏まえ、厚生労働省老健局老人保健課は、平成22年4月30日に、各都道府県及び市区町村等介護保険主管課に事務連絡を出し、末期がん患者への迅速な暫定ケアプランの作成、迅速な要介護認定の実施を促していますが徹底されていないようです。

財団法人日本公衆衛生協会が実施した「末期がん患者の認定状況調査」(平成22年5月~10月)によると、保険者調査の結果では、申請から2次判定までの日数が20日を超えている保険者が86.6%、30日を超えている保険者も38.1%あります。認定調査については、申請後5日以内に実施している保険者が27.7%、6~10日で実施している保険者は50.2%です。

個別申請者の調査の結果では、申請から2次判定までの平均日数は28.9日で、19.4%の方が2次判定前に亡くなっています。推計では、申請後15日で約1割、25日で約2割、40日で約3割が亡くなっています

問題点2:要介護度認定が低く出やすい

要介護度は病気の重さではなく、介護にかかる時間で判断します。そのため、末期がん患者でも1人で歩行や食事ができれば要介護度は軽くなります(要支援1・2や要介護1)。

介護保険では特殊寝台(背中や足の部分が上げ下げできるベッド)、特殊寝台付属品(マットレスなど)、床ずれ防止用具や車いすなどもレンタルできますが、要支援1・2、要介護1の方は利用できないルールになっています。

例外として、末期がん患者に対しては、短期間のうちに日常的に起き上がりや寝返り等が困難となることが確実に見込まれる場合、市区町村の判断でレンタルが可能になっています(厚生労働省老健局振興課・老人保健課「末期がん等の方への福祉用具貸与の取扱い等について」)。

特殊寝台のレンタル料金は月1~2万円程度、特殊寝台付属品や床ずれ防止用具なども合わせれば月2~3万円程度かかります。介護保険が利用できれば原則1割負担なので大いに助かります。

Next: 末期がん患者の介護保険申請、4つの重要ポイントとは?


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末期がん患者の介護保険申請、4つの重要ポイント

ここまで「公的介護保険のしくみ」「公的介護保険の問題点」をみてきました。それらを踏まえて「公的介護保険のかしこい利用法」についてまとめてみます。

なるべく早い段階で市区町村に介護保険を申請しましょう

末期がん患者は病院を退院してから亡くなるまでの期間が短いので、入院中、退院を決めた時点で申請しましょう。また、同時に退院後の在宅医療を担ってくれる医者を見つけ、相談しておきましょう。

ケアマネージャーに暫定ケアプランを作成してもらいましょう

そうすれば、認定前でも特殊寝台のレンタル、訪問介護、訪問入浴、訪問看護、デイケアなどのサービスが利用できます。

認定を受けてから心身の状態が変化した場合、区分変更の申請をしましょう

随時申請が可能です。要介護度が高ければ利用限度額も増え、利用できるサービスの回数も増やせます。

介護認定主治医意見書の診断名欄へ「末期がん」と明示してもらいましょう

介護認定の迅速化に資することになります。がん患者が、自宅で最期を過ごしたいと考えた場合に十分なケアの体制を整えるためにも、家族の方は介護保険を知ることから始めませんか。

民間介護保険120%活用法』(2015年6月2日号ほか)より一部抜粋
※太字はMONEY VOICE編集部による

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