17日(木)の早朝に、アメリカFOMCの政策金利が発表されました。結果は「利上げなし」。さらに、利上げのペースが「年4回」から「年2回」にスローダウンすることになりました。
この発表を受けて、直後の為替(米ドル/円)は下落。「円高」方向に動きました。
FOMC後、米国株は堅調に推移しました。「利上げなしなら株を買え」という、方程式どおりの反応です。17日(木)の東京市場でも、最初、この米株高を受けて株価が上昇しました。しかし、後場から円高が進む中、株価は下落。翌、18日(金)も続落となりました。週末の日経225先物は、16,600円近辺で引けています。
円高が進む中、さすがに株高持続とはならなかったわけですが、このあとの相場はどうなるのでしょうか?(『長谷川雅一のハッピーライフマガジン』)
プロフィール:長谷川雅一(はせがわまさかず)
1959年、岐阜県生まれ。株式会社プレコオンライン(金融商品取引業)代表取締役社長。2000年より株式投資の研究を始め、日本で初めて「株の自動売買」という言葉を使った著書を出版。株式投資の世界では、「株の自動売買」ブームの火付け役として知られている。現在は、自動売買ソフトの開発、投資教室、メルマガの執筆など、多忙な日々を送っている。
日本株は安倍政権の終わりとともにクラッシュ(暴落)する
政府が日経平均を1,000~1,500円つり上げている
そもそも、今年に入ってから、外国人投資家は、ものすごい勢いで日本株を売りまくっています。
円高傾向がハッキリしてきましたし、原油価格が上がらない中、外国人の日本株売りが止まる気配はありません。今回のFOMCの決定も、「円買い、株売り」につながるのが自然でしょう。
しかし、日本株は現在、そこそこの水準にとどまっており、「株安」という状況には至っていません。
通常、ここまで円高になれば、日経平均は15,000円付近まで下落していても、おかしくありません。ところが、現実には、円高の中、むしろ「株高」傾向にあります。これは、ひとえに政府の株の買い支えによるものです。
では、もしも政府が買い支えをしていなかったら?日経225は現在より1,000円~1,500円ほど安い、15,500円~15,000円程度まで下落していたことでしょう。
日経平均株価 週足(SBI証券提供)
米ドル/円は105円に向かう
このあと為替(米ドル/円)がどうなるかを考えてみましょう。
2014年8月頃、米ドル/円は101~103円程度で、もみあっていました。
その後、米ドル/円は、日米の金融政策の違いにより急騰。約2年後の2016年6月には、125.85円まで上昇しました。なんと25円近くも上昇した(ドル高になった)ことになります。
しかし、2015年12月にFOMCによる利上げが現実のものとなり、期待したほどの利上げ幅は望めないことがわかると、米ドル/円は下落を開始。今年2月からは、ドル安(円高)の流れが鮮明になり、121円から111円付近まで、一気に10円ほど下落しました。
要するに、トレーダー達は、「利上げ期待で米ドル/円を買いすぎた」ため、ドル売りに転じたのです。
さすがに短期間で10円ほど下落したあと、今は「もみあい」に入っていますが、米ドル/円の長期的な平均値が105円前後であることを考えると、現在の111円はまだ「割高」であり、あと5~10円ほどの下落余地があると言えるでしょう。
米ドル/円 週足(SBI証券提供)
現在は、原油価格が持ち直す中、目立った悪材料がないため、大きく下げる動きは出ていませんが、それでも米ドル/円のトレンドは下向きです。
今後、上下変動を繰り返しながらも、米ドル/円は、しだいに下値を切り下げ、やがて長期的な平均値である105円付近に向かう。それが自然な流れと言えるでしょう。
Next: 政府介入で株価を上げるのは困難/安倍政権の終わりが株高の終わり
政府が介入しても株価を上げるのは難しい
円高の流れが続く可能性が高い中、日本株はなかなか上昇が難しいのですが、現在の日本の株式市場は「官製相場」です。株価は政府の都合しだいで、どちらにでも動く状況です。円高だろうと円安だろうと、関係ありません。
政府が全力で株を買い続ければ、20,000円台の再現もありえますし、政府が積極的な買い介入をやめれば、14,000円か、それ以下まで落ちても不思議はありません。経済の実態を考えれば、むしろ「株安」が自然です。
証券会社系のアナリストたちの口からは、
「日本の企業業績は堅調だし賃金も上がっている。原油安も日本経済にプラスに寄与する。選挙もあり、財政出動が期待できる。日経平均は、このあと18,000円を目指し、さらに再度20,000円を目指して上昇する」
といった、「株高シナリオ」が聞かれます。しかし、
- 中国経済が上向く可能性が低い
- 原油価格が長期的に低迷しやすい
という世界経済に横たわる2つのマイナス要素が、今後も投資家心理を冷やし続ける可能性が高いため、相場の流れは、どうしても株安に傾きやすくなります。
この逆風の中、日経平均が17,500円を超えるためには、政府は、ひたすら大量に株を買い続けなければなりません。
安倍政権の終わりが株高の終わり
昨日の報道ステーションで、ドイツのワイマール憲法についての特集が組まれていましたが、あの特集は有意義な内容でした。今の安倍政権の危うさを痛烈に批判していましたね。政府が「電波を止めるぞ」と脅しかねない思い切った特集でした。
安倍政権は、実に巧妙に失敗を隠しながら生き延びていますが、「事実」を変えることはできません。
このあとも、「消費増税延期」「衆参同時選挙」「憲法改正」に進む方針がミエミエですが、いたるところで「ほころび」が見え始めています。
今の株高は安倍政権の「演出」です。今後も「株高」が続くかどうか?それは、安倍政権の存続にかかっていると言えるでしょう。
現在は特に「期末」に向けての、政府の粉飾的な買い支えが盛んですが、政府のPKO(Price Keeping Operation)がなければ、すぐに株安です。
安倍政権の終わりが、どのような形でやってくるかは、わかりませんが、「安倍政権の終わりは株高の終わりを意味する」という現実を、しっかり把握しておくべきでしょう。
Next: 上値が重い相場が続いたあと株式市場はクラッシュ(暴落)する
「株式会社を作れば儲かる」という発想の間違い
ここへ来て、アメリカの継続的な利上げが難しくなり、日本やEUなどの金融緩和も効果がなくなってきました。
そんな中で開催されたG20の結論は、「財政出動でも何でもして、経済を支えろ」というものでした。ただ、何をやっても、根本的な経済のシステムが「まずい」限り、その効果は限定的でしょう。
日本については、少子高齢化、それにともなう諸問題、財政赤字、政治の腐敗、行政のムダなどの問題が山積です。
こうしたマイナス要素を、金融緩和や財政出動でなんとかしようとしても無理です。
僕は、起業家育成のアドバイザーもやっていますが、起業を志す人の中に、ときどき、「株式会社を作って、立派なオフィスを構え、ベンツに乗れば儲かる」と、本気で考えている人がいることに驚くのですが、今の政府のやっていることも同じようなもの。
形だけ「それらしく」して、本質的な努力がされていないわけですから、結果は出ないのです。
上値が重い相場が続いたあと株式市場はクラッシュ(暴落)する
たかだか政府の資金の投入程度では、短期的に株価をつり上げることはできても、長期にわたって株価を高値で安定させることはできません。
また政府の手の内が、あからさまなのも問題です。トレーダー達は、
「安倍が買うんなら高く売っておけ。買いの手がゆるんだところで全力で売れば、暴落で大儲けできるぞ」
という、アベノミクスに乗じるシナリオを描くかもしれません。
僕は、日本株は、このあとも「上値が重い」状況が続いたあと、安倍政権の終わりとともに、あるいは、それより先にクラッシュ(暴落)するのではないか、と考えています。
『長谷川雅一のハッピーライフマガジン』2016/3/19号より一部抜粋
※記事タイトル・太字はMONEY VOICE編集部による
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