ジム・ロジャーズ氏は東京五輪について、日本にとってお金儲けにならず、むしろ弊害をおよぼすと語っています。本当にそうでしょうか?金融のプロがこの言葉の重要なポイントを解説します。(俣野成敏の『トップ1%の人だけが知っている「お金の真実」』実践編)
※本記事は有料メルマガ『俣野成敏の『トップ1%の人だけが知っている「お金の真実」』実践編』2020年2月11日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会に初月すべて無料のお試し購読をどうぞ。
プロフィール:俣野成敏(またの なるとし)
ビジネス書著者、投資家、ビジネスオーナー。30歳の時に遭遇したリストラと同時に公募された社内ベンチャー制度で一念発起。年商14億円の企業に育てる。33歳で東証一部上場グループ約130社の現役最年少の役員に抜擢され、さらには40歳で本社召還、史上最年少の上級顧問に就任する。2012年の独立後は、フランチャイズ2業態6店舗のビジネスオーナーや投資家として活動。投資にはマネーリテラシーの向上が不可欠と感じ、現在はその啓蒙活動にも尽力している。自著『プロフェッショナルサラリーマン』が12万部、共著『一流の人はなぜそこまで、◯◯にこだわるのか?』のシリーズが13万部を超えるベストセラーとなる。近著では、『トップ1%の人だけが知っている』(日本経済新聞出版社)のシリーズが11万部に。著作累計は46万部。ビジネス誌の掲載実績多数。『MONEY VOICE』等のオンラインメディアにも数多く寄稿。『まぐまぐ大賞(MONEY VOICE賞)』を4年連続で受賞している。
ギリシャはアテネ五輪で大失敗した。日本も二の舞になるのか?
まもなく東京オリンピック不況がやって来る!?
今回は、「名言に学ぶシリーズ」の続編をお送りします。
前回に引き続き、ジム・ロジャーズ氏の名言を取り上げます。ロジャーズ氏の言葉を手掛かりに、私たちが生きている現代社会とはどのような時代なのかを紐解いてみたいと思います。
本日も、金融事情に詳しい大前雅夫さんをゲストにお呼びしています。大前さんは、当メルマガの金融情報監修をして下さっているFAN GLOBALSOLUTION PTE. LTD.のCEOにして、外国為替、金融商品の専門家でいらっしゃいます。
プロフィール:大前雅夫(おおまえ まさお)
高校、大学時代をアメリカで過ごし、金融業界に就職。HSBC(香港上海銀行)東京支店勤務後、HSBC香港本店では、日本人初のチーフトレーダーに就任。その後、モルガン・スタンレー社、バークレーズ銀行などを経て独立。2012年よりオオマエ・キャピタル・マネジメント社を設立。シンガポール通貨庁に登録し、ファンド業務を行う。現在、セカンドキャリアとして資産形成や金融教育を支援するためのFANを主宰し、シンガポールを中心に自身の経験を活かした講演活動等を行っている(以下、本文中について、名前が出てこない限り同一話者、敬称略)。
俣野:本日、最初に解説する名言はこちらです。
<名言ピックアップ>
「歴史を見れば、オリンピックが国家にとってお金儲けになった例しがないことがわかる。一部の人に短期的な収入をもたらすことはあっても、国全体を救うことにはならず、むしろ弊害をおよぼす」
出典:『日本への警告 米中朝鮮半島の激変から人とお金の動きを見抜く』著:ジム・ロジャーズ/刊:講談社+α新書
<名言のポイント「オリンピック・ジンクスは本当か?」>
俣野:ロジャーズ氏に限らず、世間では「オリンピックは弊害のほうが多い」という、もっぱらの噂ですよね。
大前:今回の東京オリンピックは、1964年に次いで2回目ですが、当時の日本は発展途上でしたから、今とはオリンピック開催の意味が違うと考えています。
64年のオリンピックは、日本の高度成長期を象徴するイベントとして、良いイメージで語られることが多いものの、問題がなかったのかというと、もちろんそんなことはありません。
64年の東京オリンピックは、総額9870億円かかったと言われており、これは当時の日本の名目GDP比で言うと、なんと3.1%に相当します。
これに対して、今回のオリンピックは、3.6~4.8兆円かかると試算されています。金額的には、確かに前回よりも多いのですが、名目GDP比で言うと、0.6~0.8%でしかありません(公益社団法人日本経済研究センターHPより)。
当時の日本と今の日本では、経済規模が違うのです。
これが、「オリンピックの弊害」と言われているものの正体です。つまり経済規模に対して、大会にかけるお金が大き過ぎることで、オリンピック特需以上に国力を消耗してしまう現象です。
Next: ギリシャはアテネ五輪で大失敗。東京五輪は本当に重荷なのか?
ギリシャはアテネ五輪で大失敗
大前:その典型とも言えるのが、2004年に開催されたギリシャのアテネオリンピックです。
当地はオリンピック発祥の地ということもあって、ギリシャは国の威信を賭け、当時、五輪史上最大となる1兆2480億円もの巨費が投じられました(Sankei Biz、2015年8月15日)。2001年に発生したアメリカ同時多発テロの影響で、オリンピック開催時の警備費が膨れ上がったことも重なりました。
さらにギリシャの経済を苦しくしたのが、2008年に発生したリーマン・ショックです。
アテネオリンピックの借金を返済するために、ギリシャは国債を乱発し続け、それがギリシャ危機に発展したことは、記憶に新しいところです。
不確定要素「新型肺炎」も出てきたが…
俣野:今の日本と、1964年当時の日本とでは、経済規模も、受け入れ能力もまったく違う、ということですね。
しかしここへきて、新たな不確定要素が出てきました。
大前:はい。中国の武漢市から始まった、新型コロナウイルスのパンデミック(流行)です。
昨年、日本で行われたラグビーワールドカップの経済効果は4300億円と言われ、それまで日本ではあまり馴染みのなかったラグビーという種目でも、あれだけの盛り上がりを見せていました(日経ビジネスWeb版、2019年10月29日)。
ですから本来であれば、東京オリンピックも、かなりの経済効果が見込めたはずです。
しかし、新型コロナウイルスがこれだけ蔓延し、多数の死者を出している状況では、インバウンド関連の数字の下落は、避けられないところでしょう。
実は私は、2003年にSARS(重症急性呼吸器症候群)が流行した際、発生地だった中国広東省に隣接している香港に駐在していました。
SARSも新型コロナウイルスが原因であり、当時の経験から、春頃が感染者のピークになるのではないかと見ています。
SARSは、2002年11月16日に最初の感染例が報告され、2003年7月5日にWHOによって終息宣言が出されました(国立感染研究所HP)。ちなみに、SARSはSARS-CoVという型で、今回の新型コロナウイルス2019nCoVとは別です。
Next: 東京五輪では日本経済は揺るがない?「人を呼ぶ」イベントの成功が今後の鍵
「人を呼ぶ」イベントの成功が今後の鍵
大前:このパンデミックがいつ終わるのかは、まだ見通せる状況ではありませんが、日本の経済基盤は、今回のオリンピックで揺らぐことはないでしょう。
とはいえ、短期的にはそうでも、長期的には、徐々に衰退が見込まれる日本ですから、以後はこうした“人を呼ぶ”イベントが、社会的にも、経済的にも、ますます求められるようになるのではないかと思います。
「国も、企業も、日本に体力がある今のうちに、長期的な戦略を練るべき」
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『俣野成敏の『トップ1%の人だけが知っている「お金の真実」』実践編』(2020年2月11日号)より一部抜粋
※太字はMONEY VOICE編集部による
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