日経平均は続落。31.93円安の19587.42円(出来高概算6億2000万株)で前場の取引を終えている。
米株式市場では、1日から6日までの4営業日でNYダウが681ドル下落した。経済活動再開への期待が高まる一方、トランプ大統領が新型コロナウイルスを巡る中国の責任を問う姿勢を強め、米中摩擦再燃への懸念が浮上。米民間雇用サービス会社ADPの4月雇用統計で雇用者数が過去最大の減少となるなど、経済指標の悪化も嫌気された。円相場は一時1ドル=106円近辺まで上昇し、5連休明けの日経平均は米株安や円高を受けて150円安からスタート。朝方には一時19448.93円(170.42円安)まで下落したが、その後下げ渋り、小幅ながらプラス圏に浮上する場面もあった。
個別では、東証1部売買代金トップのソフトバンクGが3%下落しているほか、武田薬、OLC、東京海上などの軟調ぶりが目立つ。JALやANAは6%前後の下落。その他売買代金上位ではファーストリテ、トヨタ自、ソニーなどがさえない。また、石川製や豊和工といった防衛関連銘柄が東証1部下落率上位に顔を出した。一方、東エレク、キーエンス、村田製といったハイテク株や、ゲームソフト「あつまれ どうぶつの森」の好調が伝わった任天堂は堅調。タカラバイオが大幅続伸し、アイロムGが連日でストップ高を付けるなど新型コロナ対応に絡んだ物色も引き続き活発で、決算発表銘柄では野村不HDなどが急伸した。
セクターでは、空運業、保険業、陸運業が下落率上位。半面、鉱業、精密機器、金属製品などが上昇率上位だった。東証1部の値下がり銘柄は全体の44%、対して値上がり銘柄は53%となっている。
連休明けの日経平均は3ケタの下落でスタートしたのち下げ渋ったが、前営業日終値水準を回復すると戻り一服となった。米中摩擦の激化懸念は連休前の取引で織り込み済み。また米国では雇用情勢や企業景況感が大きく悪化しているが、おおむね想定内と受け止められているのだろう。欧米で経済再開に向けた動きに変化がないことも相場の下支えとなっているが、一方で積極的に買い上がるほどの追加材料も連休中には出なかった。
売買代金上位を見るとハイテク株が堅調だが、米市場ではNYダウが4月30日終値比で2.80%の下落となっているのに対し、ハイテク株比率の高いナスダック総合指数は0.40%の下落にとどまっている。インターネットサービスの利用増加や半導体需要の伸びへの期待が背景にあるとみられる。反面、新型コロナの影響が強い空運、レジャーなどは下げがきつい。タカラバイオが賑わいを見せているほか、マザーズのアンジェスが日経レバETFをも抜き全市場売買代金トップとなっている。新型コロナワクチン開発で注目されるアンジェスは大幅に11日続伸し、マザーズ指数は6%近い上昇だ。
前引けの東証株価指数(TOPIX)は0.45%の下落となっており、日銀による上場投資信託(ETF)買い入れは本日実施されない見込み。新型コロナの感染拡大やその後の回復で先行する中国が本日、4月貿易収支の発表を予定しており、後場の日経平均はその内容次第で上下に振らされる可能性もある(本稿執筆時点では未発表)。
さて、足元の日経平均は日足チャート上で19200円台に位置する25日移動平均線を上回って推移しており、目先的に二番底を探りに行くようなムードではない。主要中銀による空前の金融緩和が相場をサポートし、海外での経済再開シナリオに狂いが出てこなければ、主要株価指数はまずまずしっかりした推移が見込めるだろう。とはいえ、自動車やレジャー関連株の軟調ぶりを見ると、新型コロナ終息後の個人消費の回復に自信が持てない市場の姿も浮かび上がる。1日の当欄でも指摘したが、企業業績の回復確度が高まってこなければ、日経平均は株価純資産倍率(PBR)1倍水準となる21000円には到達しづらいだろう。趨勢が見えない新型コロナ治療を巡る物色は短期的なものと割り切る必要がある。
日本では連休中に緊急事態宣言が延長され、新型コロナを抑え込めるか注目される。海外では流行の第二派を回避しつつ経済再開を実現できるか、今年11月の米大統領選に向けてトランプ氏が中国批判をどこまで強めるのかなどを見極めたいところ。日経平均は連休明けも当面、現行水準でのもち合いが続くとみておきたい。
(小林大純)