過去1年間では、2015年8~9月、2015年12~1月、2016年2月に、それぞれ急落場面がありました。そして4月1日(金)から、4回目の下落局面が始まった可能性があります。過去15年で「春の暴落」は8回、今年も同様に下落するとすれば日経平均は13,000円になる計算です。(『長谷川雅一のハッピーライフマガジン』)
プロフィール:長谷川雅一(はせがわまさかず)
1959年、岐阜県生まれ。株式会社プレコオンライン(金融商品取引業)代表取締役社長。2000年より株式投資の研究を始め、日本で初めて「株の自動売買」という言葉を使った著書を出版。株式投資の世界では、「株の自動売買」ブームの火付け役として知られている。現在は、自動売買ソフトの開発、投資教室、メルマガの執筆など、多忙な日々を送っている。
安倍総理が「日経平均13,000円、為替108円」に唖然とする日
日経平均600円の急落
このところ、日経平均は17,000円付近で、そこそこ堅調に推移していました。証券会社系のアナリストの方々からは、「4月1日から新たな投資資金が流入する。株価は上昇するだろう」という力強い予想も出ていました。
ところが、その4月1日(金)に、日経平均は600円の暴落となりました。ニュースは「日銀短観が悪化したための下落」と報じていましたが、日銀短観が悪いことは事前に織り込まれていましたから、ちょっと下げすぎです。
僕は、3月19日号(前号)の「相場雑感」で、日本株について、「上値の重い相場が続いたあと暴落する」と予想していました。また、ここまでの株価上昇について、「政府の買い支えが大きく寄与している」と書きました。
※止まらない円高で株価はどうなる?「安倍政権の終わりは株高の終わり」=長谷川雅一
3月末まで、政府は、アベノミクスが成功していると見せかけるために日本株を買い続けてきました。しかし、決算が終わって4月になり、しばらくは株を買い支える必要がなくなりました。
金曜日の日経平均急落は、政府の買い支えがゆるんだところに、外国勢を中心とした売りが一気に浴びせられたためではないか、と見ています。
1日の下落は先物主導だったようです。日本政府の動きを見越して、ヘッジファンドなどが動いたのでしょう。
金融緩和の中の急落
安倍政権になってから、政府は、あの手この手で株価を上げようと躍起になってきました。
安倍総理は、よく、「株価が上がってるじゃないですか!」などと、株価上昇が自らの経済政策の成果であるかのように自慢します。
わかりやすい数値「だけ」を人為的に釣り上げて、成果を強調するのが、現政権の愚かなやり方ですが、そのためだけに大量の資金を投入して、株を買い続けてきたのです。
国民のお金を、総理大臣が、自らの名誉のために勝手に流用しているようなものですが、おめでたい日本国民は怒りません(怒るべきでしょう)。
こういう、あからさまな金融政策は、世界の投機筋の「餌食」になりかねないと、僕は、たびたび書いてきました。また、政府の金融緩和だけで、株価を長期間支えることは無理だとも書きました。
事実、これまでも、全力で金融緩和が行われる中、日経平均は、たびたび急落してきました。過去1年間では、2015年8~9月、2015年12~1月、2016年2月に、それぞれ急落場面がありました。
- 2015年8月…約30営業日で、約4,000円(約20%)下落
- 2015年12月…約30営業日で、約4,000円(約20%)下落
- 2016年2月…約8営業日で、約3,000円(約16%)下落
そして4月1日(金)から、4回目の下落局面が始まった可能性があります。
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よくある「春の暴落」
年がら年じゅう「株は上がります。今が買いどきです」と言うのがお仕事である、証券会社系のアナリストの方々が、「4月は株のパフォーマンスがいいんです!」とおっしゃることがあります。
しかし、実際には、4月から5月にかけての暴落も目立ちます。以下は「春の暴落」の発生した年と、日経平均株価の下落率です。
- 2000年4~5月(約20%の下落)
- 2004年4~5月(約12%の下落)
- 2005年4~5月(約9%の下落)
- 2006年4~6月(約20%の下落)
- 2010年4~5月(約17%の下落)
- 2012年4~6月(約18%の下落)
- 2013年5~6月(約21%の下落)
- 2014年4~5月(約8%の下落)
過去15年で「春の暴落」が8回あったわけで、「4月は株のパフォーマンスがいい」という論拠が、僕には、よくわかりません。むしろ「春は危ない」というのが、実際にリスクを取って売買しているトレーダー達の共通認識ではないか、と思います。
この春も、同様に、日経平均株価が約20%下落するとしたら、2016年3月30日の17,078円をピークに、約6週間後の2016年5月18日までに、日経平均株価は約4,000円(20%)下落して13,000円になる計算です。
つい先日まで、日経平均株価は17,000円付近で安定していましたから、「冗談でしょう。13,000円なんてありえない」と思われるかもしれませんが、この程度の下落は、過去に何度も、平気で発生しているのです。
政府の経済政策で株価が暴落する
もちろん、安倍総理の「目の黒いうち」は、そこまでの下落は、ないかもしれません。政府が買い支えれば、「一時しのぎ」にはなるからです。
しかし、安倍政権が「よかれ」とやっている経済政策を、投資家は必ずしも評価していません。アベノミクスは「危険だ」という見方もあるし「失敗だ」「根本的に間違っている」といった意見もあります。
ですから、安倍総理が得意満面で、新しい経済政策を打ち出した瞬間、政府の狙いとは逆に、株価が下落し米ドル/円も下落する(円高になる)恐れがあるわけです。先日の「マイナス金利」導入の後の暴落は、まさに「それ」でした。
僕自身は、安倍総理の経済政策は「根本的に間違っている」と考えていますが、そう考えている投資家達は、上昇トレンドでは買うかもしれませんが、基本的に、ひたすら「売り」のチャンスを狙っています。
また、いったん「売り」のトレンドがハッキリしてくると、投機筋が、そのトレンドに乗ってさらに売ってきます。その結果、「○○ショック」といった名前の付く「暴落」が発生する。それが、株式市場の「常」です。
Next: くすぶる2つの悪材料/安倍総理は相場を知らない
くすぶる火種
今、マーケットには、ずっとくすぶり続けている暴落の火種(悪材料)があります。それは、
- 原油価格の低迷
- 中国経済の減速
です。これらの悪材料は、たびたび書いているように「構造的」なもので、解決が困難です。
さらに今年は、4月末から出てくる国内企業決算が減益予想となっており、6月にはイギリスのEU離脱を問う選挙が予定されているなど、円高、株安の材料になりそうな悪材料が、出番を待って控えている状態です。
また、アメリカの大統領選挙で、トランプ氏やサンダース氏が善戦しており、それは、アメリカの「政治的な混乱」を意味するため、これまた円高、株安の材料になる可能性が高いと言えます。
現在、アメリカ次期大統領候補者達は口を揃えて、「ドル高はアメリカ経済にとってよくない。円安政策の日本はけしからん」と表明しています。ドルを買える雰囲気ではありません。
安倍総理は相場を知らない
安倍総理は、「日経平均など思いのままに上げられる」と思っているのでしょうが、彼は、マーケットの恐さを知らないのです。
マーケットは、一国の総理が(自己満足のために)長期にわたってコントロールし続けられるような甘いものではありません。
むしろ、あからさまな市場コントロールは、逆に利用される場合があります。つまり、政府が株高、円安にしようとすればするほど、実際のマーケットは、株安、円高に動いてしまう、というケースがありえるのです。
日経平均株価 週足(SBI証券提供)
現在の日経平均のチャート上、まず、16,000円にサポートがあり、その下の15,000円、14,000円にも強いサポートがあります。最悪の予想値である、13,000円まで下げる可能性は、さすがに、それほど高くはありませんが、
日経平均13,000円、米ドル/円108円
といった水準が現実のものとなる「可能性」はありますので、多少下がったからと言って、安易に買わないよう、注意が必要だと思います。
安倍総理が、日経平均13,000円、為替108円という数字を見て、唖然呆然とする日が来るかもしれないのです。
『長谷川雅一のハッピーライフマガジン』2016/4/3号より一部抜粋
※記事タイトル・太字はMONEY VOICE編集部による
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