人材派遣業界3位のパソナグループが本社機能を東京から兵庫県の淡路島に移転させるとして話題を呼んでいる。こうした地方への流れが始まると日本は東京一極集中が収まり、新たな潮流が生まれる。(『億の近道』炎のファンドマネージャー)
小学生から証券会社に出入りし、株式投資に目覚める。大学入学資金を株式の利益で確保し、大学も証券論のゼミに入る。証券会社に入社後は一貫した調査畑で、アナリストとして活動。独立系の投資運用会社でのファンドマネージャーの経験も合わせ持つ。2002年同志社大学・証券アナリスト講座講師を務めたほか、株式漫画の監修や、ドラマ『風のガーデン』(脚本:倉本聰)の株式取引場面の監修を行う。
本社従業員の3分の2が淡路島へ移住
神戸出身の南部オーナー率いる人材派遣業界3位のパソナグループ<2168>が本社機能を東京から兵庫県の淡路島に移転させるとして話題を呼んでいる。
1,800名の本社従業員のうち1,200名が淡路島に移住して業務を推進するとの驚きの計画だが、こうした地方への流れが始まると日本は東京一極集中が収まり、新たな潮流が生まれることとなる。
パソナグループ<2168> 日足(SBI証券提供)
パソナグループは地方創生に熱心な企業。もともと関西が活動拠点だった同社なので淡路島と言ってもさほどサプライズはないのかも知れませんが、いわば故郷帰りとも言うべき大胆な施策に関心が集まっている。
これは余談だが、淡路島に関心が高まったせいか、先般から淡路島に工場等の拠点を置く住宅用タイルメーカーのダントーホールディングス<5337>が人気化している。
ダントーホールディングス<5337> 日足(SBI証券提供)
地域活性化にもつながる
首都圏に拠点を置く企業の地方移転で期待されるのはコストの低減で、人件費や賃料が削減されることになる。
また、この移転には地域を活性化する効果も考えられる。グループ全体で8,000名近い人材を雇用するパソナグループの場合は、淡路島での人材誘致による地方創生に挑戦。様々な観光施設やイベント開催などで国内外から多くの方が訪れる魅力的な島をつくってきたと言う経緯がある。
今回はこうした事業基盤に本業の従業員を移住させての大がかりなビジネスとなる。
まあ、いわば旅行ビジネスを展開するHISの本社社員が佐世保のハウステンボスに移り住むようなもの。家賃の高い東京を脱して地方でのネットワーク、DX(デジタルトランスフォメ─ション)業務を推進して観光ビジネスも盛り上げていこうとする流れと言える。
Next: 東京一極集中は終焉へ。地方発ビジネスが市場の注目を集めている
東京一極集中は終焉へ
すでにこうした地方発のビジネスは、他の多くの企業でも見出せる。
和歌山県海南市に本拠を置くガーデニング関連資材・用品メーカーのタカショー<7590>の株価がガーデニングブームの到来で最近になって人気化。
タカショー<7590> 日足(SBI証券提供)
また、熊本県山鹿市に本社を置くユニークな住宅メーカーLibWork<1431>が、市場人気を高めたことも記憶に新しい。
LibWork<1431> 日足(SBI証券提供)
さらには岡山市に本社を置く自然災害関連の建設コンサルタント会社、ウエスコHD<6091>もこのところ人気化(※編注:原稿執筆時点9月8日)。
ウエスコHD<6091> 日足(SBI証券提供)
こうした地方を拠点にした地道な活動を続ける企業の活躍が永続するかどうかは何とも言えないが、市場の潮流として関心を寄せておきたい。
東京ではなく地方に拠点を置いていても企業はDXの力で成長を享受する時代の到来。通勤の地獄を味わう必要のない新しい従業員の幸福度追求の姿がそこにはあるように感じられる。
それこそが停滞してきた日本経済の復活に向けた取り組みにつながるのかも知れません。
東京一極集中がコロナ禍で変わりつつある。パソナグループの大胆な取り組みに引き続き注目しておきたい。
『億の近道』(2020年9月8日号)より一部抜粋
※太字はMONEY VOICE編集部による
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