そう、この証人は本誌第1409号の証人と同じ、京都大学・大学院・薬学研究科の教授、金子周司さんなのだった。
今回もアルミの杖をついてるってことは、たまたま足をケガしたとかではないのかも。
今回の尋問は、証人が作成してきた文書やグラフ等を、法廷内のモニター(傍聴人から見える壁の大型モニター2台を含む)に写し出して証言する、というスタイルがとられた。
モニターの画面切り替えは、100円ライターのような小さなリモコンを証人自身が操作して行った。
ほとんど教授の授業を聴講するようなもんだ。前回よりずっと分かりやすく勉強になった。
まずは証人の経歴がモニターに映し出された。
1980年、京大の薬学部卒…1985年、薬学博士に…1988年、京大の助手に…1992年、助教に…2004年、教授に…。
2004年~2006年、MDMAが流行した。2012年から危険ドラッグ(当時は脱法ハーブ)が流行し、その関連で約80件、専門家としての意見を書いた。法廷で証言するのは、東京、名古屋、大阪、高松…今回が8回目。
そのうち俺は2回を傍聴してるわけだ。えっへん。←威張る意味が分かんね(笑)。
モニター画面を切り替えつつ、講義は流れるように続く。
証人 「大麻はカンナビス…危険ドラッグは合成カンナビノイド…外国ではニセ大麻…植物片は無害なもの…そこに薬物を…水には溶けない…アルコールやアセトンに溶かして…」
証人 「ダウナー系…中枢神経を抑制する…アルコールが似た薬理効果を…脳の判断力を低下させ…自動車運転に対する影響が大きい…。もうひとつ、リキッド、アロマ…これは水に溶ける…アッパー系…ニセの覚せい剤…煙草も同じ…」
証人 「(危険ドラッグは)お風呂の中に1滴でも十分…中枢神経を…モルヒネ以上…ヘロインと肩を並べるくらい強い…今まで歴史上ないようなもの…(最強のものは)覚せい剤の100倍強い…」
大麻が1%のアルコール飲料だとすれば、危険ドラッグは40~50%のジンやウォッカに相当する、それくらい強力で危険なんだとも言ってた。
証人 「物性として近いのは煙草…5分の間にニコチンの血中濃度はどんどん上がる…吸うのをやめると1時間で濃度が下がり、次が吸いたくなる」
え~、そうなんだ~。
合成カンナビノイドは水に溶けにくく、尿にはまず出ない。ところが被告人の尿からは、本件とは異なる成分の合成カンナビノイドが検出されてるんだという。
証人 「尿から見つかるのは珍しい。記憶を失わずに(そのような体験なしに)尿から出ることはほぼあり得ない。以前から薬効や危険性を認識していたと推測される」
そして本件時…。
証人 「異常を感じて運転を止めることは可能…ぼーっとなったり目が回ったり、普段となんか違うぞと感じていたはず…」
以前の摂取で危険の予知ができた、本件時、体調に異変を感じて運転中止が可能だった、とまとめさせて14時17分、検察官からの主尋問は終了。
弁護人は2人。危険ドラッグについて下調べしてきたようだったが、「当時、意識はあった。薬効のひとつ、前向性健忘により記憶できてないだけ」という肝心な部分は、まったく崩せなかったと思う。
次回は4月28日(火)10時~11時30分、別の証人を尋問すると決め、15時閉廷。
次回の証人は「召喚で」と検察官が言ってた。てぇことは警察官なのかな。
※勤務簿作成の関係で裁判所からの召喚状が必要なのか、と俺は想像してる。
判決は有罪で決まりなのに、無駄な手続きのために被告人は勾留され続けることになる…という考え方は病んでるか。
逆に言えば、実刑なら未決勾留日数がかなり算入(刑期から引かれる)わけで、やっぱ拘置所暮らしは刑務所より楽だろうから、被告人としてはラッキーかもしれない…。
著者/今井亮一
交通違反専門のジャーナリストとして雑誌、書籍、新聞、ラジオ、テレビ等にコメント&執筆。ほぼ毎日裁判所へ通い、空いた時間に警察庁、警視庁、東京地検などで行政文書の開示請求。週に4回届く詳細な裁判傍聴記は、「もしも」の時に役立つこと請け合いです。しかも月額108円!
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