【感動の傍聴記】万引きを繰り返す母、原因が病気と証明してみせた娘

 

弁護人 「それでは弁論を申し上げます。被告人には…執行猶予付きの判決が相当であると思料します。以下理由を…」

理由の骨子は、第1598号でレポートした、娘さんの証言の内容と同じだ。

ピック病すなわち前頭側頭型認知症」という語が出てきた。

50歳くらいの会社役員とか警察官とか、しょーもない万引きで捕まったという報道が続々あり、だいぶ前、某週刊誌が「ピック病」の可能性を指摘した。

国会も司法も行政もマスコミも知らん顔して、じつは深く社会に蔓延してるのかもね。

約13分間の弁論を、弁護人はこう結んだ。

弁護人 「…万引きをどうしたら止められるのか…真っ暗闇の中で苦しんでいた家族が…本件犯行後、控訴審に至り、専門医の診断を受け…再犯防止の希望を持ちました…治療へ向けた実践をすることで光明を見出し…など努力を継続しております。被告人から希望の光を奪わないでほしいと思います。是非とも…」

俺としては、希望の光と司法への信頼を娘から奪わないでほしい、という感じだが。

13時51分、清水淑子検察官の弁論が始まった。

検察官 「そもそも娘は母親の服役を回避したいと考えているだけ…身勝手な…同種再犯に至ることは確実…」

母親の再犯や服役を回避したいから、あれだけの凄いことをやったんじゃないか。ほかに何を求めればよかったんだ! 検察官よ、あんたこそ、逆転執行猶予で失点になりたくないだけだろっ!

前頭側頭型認知症、何人のうち何人に万引きが見られるだけだから…という部分もあった。百人中百人が万引きするなら仕方ないってわけ? バカですか? 俺はほんと呆れたょ。

けど、無罪と分かってても有罪を求め、執行猶予が当然と分かってても実刑(原判決維持)を求める、それは検察官の職務なのだ。疑問を感じる者は、職を捨てねばならないのだ。

高校生の頃、ルイス・ブニュエル監督の『トリスターナの哀しみ』(原題「Tristana」)という映画を観たが、これは『プロシキュータの哀しみ』か。

判決は1月14日(木)14時30分と決め、14時15分閉廷。

いっくら何でもこれは、新年最初の原判決破棄になると俺は見るね。

ところでマニア氏によると、東京高裁の別の部へ、やはり前頭側頭型認知症の「窃盗」が出てきてるという。うわぉ、それも傍聴しなければっ!

image by:Shutterstock

 

『今井亮一の裁判傍聴バカ一代』
著者/今井亮一
交通違反専門のジャーナリストとして雑誌、書籍、新聞、ラジオ、テレビ等にコメント&執筆。ほぼ毎日裁判所へ通い、空いた時間に警察庁、警視庁、東京地検などで行政文書の開示請求。週に4回届く詳細な裁判傍聴記は、「もしも」の時に役立つこと請け合いです。しかも月額108円!
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