では、どのような「発禁本」が売られていたのかというと、1冊は、習近平の弟である習遠平に、美貌と肉体を武器に近づき、できちゃった婚で妻の地位を獲得し、習家というロイヤル・ファミリーに入り込んだ人民解放軍の歌手・張瀾瀾を描いたものだったそうです。また、近日には「習近平と6人の女たち」という政治ゴシップ本も発売予定だったということです。
要するに、習近平本人、および家族の醜聞本が含まれていたということですが、それを阻止するための書店関係者拘束であれば、ずいぶんチンケな理由です。
そういえば、昨年は胡錦濤の側近だった令計画が逮捕されて失脚しましたが、その弟の令完成は機密情報を持って、アメリカに逃亡しています。一方、習近平政権は必死になってこの令完成を追っているといいますが、一説では、この令完成が持ち逃げした機密情報とは、習近平を含め、政権要人のセックススキャンダルだという噂もあります。
習近平が自身や身内の恥の暴露本を必死に取り締まれば、地方政府の小役人もそれを真似て、自らの不祥事を伝えようとするメディアに圧力をかけようとするのは必然です。
たとえば、中国の地方新聞の記者が、地方政府当局のいじめに遭って拘束されたとのニュースが流れました。以下、ニュースを一部引用しよう。
逮捕されたのは、甘粛省の省都にある新聞、蘭州晨報の記者、張永生氏。同紙の公開書簡などによると、7日に同省武威市内中心部で行われた防災訓練中、担当者が処置を誤り周辺の建物に引火し火事となった。武威市当局者は各メディアの担当記者に「取材するな」と圧力をかけたが、張記者は無視して、家族と同僚に「現場に行く」と伝えて車で現場に向かい、そのまま行方不明となった。
9日に地元警察が家族と蘭州晨報に対し「張氏を買春容疑の現行犯として逮捕した」と連絡したという。
しかし、その約1週間後、張氏の容疑は「政府を恐喝した」に「変更」された。武威市の公安当局は、これまでの張氏が書いた政府の不祥事を追及する複数の報道について調査を始めているもようだ。張氏はこれまでも当局者に「気をつけろ」などと脅されたことがあったという。
(産経ニュースより)>
● 中国また言論弾圧か…甘粛の記者、不祥事取材が「売春」、さらに「政府恐喝」 新聞社「多くの疑問点」
このニュースの締めくくりとして、「北京の人権活動家は『甘粛省の記者逮捕も、香港の書店関係者失踪と同じく、当局による言論弾圧がますます強化された表れだ』と話している」と、あります。
その通りでしょう。さすがに一地方の出来事ですから、習近平政権が指示した可能性は小さいでしょうが、習近平のやり方にならって、地方政府の役人が不祥事隠しに動いたのでしょう。上から下まで腐っている中国共産党の体質そのものです。
しかし、言論弾圧がエスカレートしているということは、いよいよ政権が末期になっていることの現れでしょう。習近平は人心を失い、政策にも行き詰まり、外交でもインドネシアの高速鉄道建設事業の例のように、信用を失っています。
アメリカやロシアなどの大国と正面からぶつかる実力もなく、この先の行き場を暗中模索しています。そんな行き場のない政権が、もっとも容易にできることといえば、国内統制です。言論統制からはじまり、それに反対する勢力が出てくれば武力統制です。武力統制で政府側が負け、国内勢力が勝てば、政権交替となります。
経済や外交が順調ならば、これほど言論統制などする必要はありません。経済の大失速は言うにおよばず、現在では習近平のバラマキ外交に国内からも批判の声が出ている状態で、まったく人気がありません