なお、蕎麦については、すでにニューヨークではひとつの食のジャンルとして定着し、安定した人気を誇っている。
何年か前にSOHOにあった有名店のオーナーさんがご家庭の事情で日本に帰国して店を閉めた後、日本式ラーメンが広まったため、蕎麦ブームが去ったとか言う人もいるが、そういう人は、上述のとおり、そもそもアメリカと日本ではブームや流行の性質が違うということを理解していないだけだ。
それからもう1つ、ニューヨークで「うどん」が新たなブームになるという報道が出てくる理由がある。
たぶん、今後、実態に関わらず、その手の報道は増えるだろう。
なぜなら、日本の「つるとんたん」が今年、ニューヨークに進出し、一号店をオープンするからだ。
しかも、その出店予定地は、あの「ユニオン・スクエア・カフェ」(Union Square Cafe)のあった場所に、である。
ご存知ない方のために補足すると、「ユニオン・スクエア・カフェ」は、昨年、NY証券取引所にも上場したハンバーガー・チェーンの「シェイク・シャック」を生み出したダニーマイヤー(Daniel Meyer)氏が、地元の地域活性化のために一番最初(1985年)にオープンしたレストラン。
「ユニオン・スクエア・カフェ」から発展して、1994年に「グラマシー・タバーン」(Gramaercy Tavern)、2002年に「ブルー・スモーク」(Blue Smoke & Jazz Standard)、2005年に「ザ・モダン」(The Modern)等などとグループ店を増やしていった。
〔ご参考〕
●Union Square Hospitality Groupの歴史
さらに、ユニオン・スクエアで開催される地元農家の方々による青空市場、グリーン・マーケットが発展した理由のひとつに、マイヤーさんのレストランがグリーン・マーケットで食材を調達するようになったから、とも言われている。
レストラン・ガイドのザガットがまだGoogleに買収される前、調査員のレビューに基づく評価が掲載されていた時代に、ニューヨークのナンバーワンのレストランに、10年ほど連続して選ばれ続けていたのも、「ユニオン・スクエア・カフェ」だ。
ちなみに2位は系列店の「グラマシー・タバーン」で、何年間もずっと1位と2位で競争しあっていた。
そんな伝説の名レストランである「ユニオン・スクエア・カフェ」も、家賃の高騰を理由に、30年続いた場所から数ブロック離れた別の場所(Park Ave & 19 St、以前City Crabがあったところ)へ移転することになった。
実は、ちょうど今、新しい場所への移転作業中で、工事中のお店の外壁にアート作品が登場して、そんなことまでニュースになっていたりする。