前科12犯の50歳男、働きたくても履歴書を作れないワケに思わず納得

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渋谷駅での「通報」とか「イライラ」とか、そのことを尋ねられ…。

被告人 「電車の中でタバコ吸ってるのいっぱいいますし、なんで自分だけ通報するのかなぁ…」

どうやら電車内かホームで喫煙し、通報されたらしい。

被告人は、刑務所を出てから早いと1週間、長くても1カ月でまた逮捕されてるんだという。

「嫌煙権」とかいう言葉がない時代のまま、ストップしちゃってるのかと推認できる。

検察官 「今後、思いに沿わないとき、またイラついてしまうのでは?」

被告人 「仕事さえあればマジメにやる人間なので…なかなか仕事が見つからない…」

検察官 「先ほど、聞きたいことがあると?」

被告人 「○○警察(よく聞き取れず)で靴とか返してくれると言ったんで…それ返してもらわないと刑務所出てから困る

検察官 「あなた裁判受けてる…いちばん気になってるのはそこなんですか」

被告人 「(刑務所を)出たとき(靴がないと)仕事探せなくなる」

仕事に就くことに対する姿勢は、大したものだった。裁判官からの質問にこんなことを述べた。

被告人 「(刑務所を出たとき)マジメに働こうと、横浜の保護観察所へ…仕事探してもらった…12時、面接して、3時まで待ってろって…やっぱないからどうする…お金ないので交通費だけもらえないですか…その日に探せば探せたかもしれない…」

被告人 「あと、震災関係、福島…自分、福島刑務所にいたとき震災に遭ったんですよ、そのとき福島で(仕事を)探せばよかったなと」

被告人 「(雇われる際)はい、ハンコと履歴書あれば…履歴書書いたけどハンコ買えなかった…ハンコないと仕事できないんで…組関係に(ハンコ代を)借りるの嫌なんで…履歴書書いて、募集のとこ行って、自分の名前、珍しいので、三文判ないんで、つくってもらわないと」

さらにこんなことも言うのだった。

被告人 「自分、休みの日はボランティアやりたいんで…仕事はできる、刑務所でもできるって言ってくれる…(出所した)その日のうちに仕事探さないと(更正は)難しいんですよね」

結局、刑務所以外で働いたことはないような雰囲気だった。そして…。

被告人 「自分、あんまり字読めないんで、漢字おぼえて、宗教やりたいんで、キリストとか…身体障害者の世話したい、あと、鶴折ったり、とにかく仕事がないとまた悪いことしちゃうんで…(今、50歳)そういうこと考えてやってたんですけど、今回も失敗した」

裁判官 「刑務所に戻りたいのでは?」

それに対する被告人の供述に、なんつーか俺はしびれた

被告人 「い、そそ、そ、そういうのは、そういうふうに取られちゃうと、自分、がっかりします」

キャラが立ってる! という表現が適当かどうか分かんないが。

求刑は懲役2年。判決は同年(2013年)10月22日(火)13時20分。

俺は判決を確認してないが、2割引なら懲役1年8月くらいか。

そうして2015年6月8日(水)、同姓同名の被告人の「窃盗」の判決があったわけだ。

その第1回公判を俺は知らない。裁判所が1週間分の開廷表を隠匿したせいで、いろんなことが見えなくなった…。

『今井亮一の裁判傍聴バカ一代』 より一部抜粋
著者/今井亮一
交通違反専門のジャーナリストとして雑誌、書籍、新聞、ラジオ、テレビ等にコメント&執筆。ほぼ毎日裁判所へ通い、空いた時間に警察庁、警視庁、東京地検などで行政文書の開示請求。週に4回届く詳細な裁判傍聴記は、「もしも」の時に役立つこと請け合いです。しかも月額108円!
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